令和7年度税制改正大綱
令和6年12月20日、自民・公明両党より「令和7年度税制改正大綱」が公表されました。
【相続税・贈与税】
1.事業承継税制の見直し
- (1)個人の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度における事業従事要件について、贈与の直前において(現行:贈与の日まで引き続き3年以上)特定事業用資産に係る事業に従事していたこととする。
- (2)非上場株式等に係る贈与税の納税猶予の特例制度における役員就任要件について、贈与の直前において(現行:贈与の日まで引き続き3年以上)特例認定贈与承継会社の役員等であることとする。
(注)上記(1)及び(2)の改正は、令和7年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用する。
2.相続税の物納制度の見直し
相続税の物納制度における物納許可限度額等について、物納許可限度額の計算の基礎となる延納年数は納期限等における申請者の平均余命の年数を上限とする等の見直しを行う。
3.直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、令和5年度税制改正大綱で「制度の廃止も含め、改めて検討する」とされた後も、利用件数が低迷する等の状況にあり、関係省庁において、子育てを巡る給付と負担のあり方や真に必要な対応策について改めて検討すべきである。他方、現在、「こども未来戦略」の集中取組期間(令和8年度まで)の最中にあり、こども・子育て政策を総動員する時期にある。このため、本措置は、特に集中取組期間であることを勘案し、適用期限を2年延長する。
【個人所得課税】
1.住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除
住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、次の措置を講ずる。
- ①特例対象個人が、認定住宅等の新築若しくは認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得又は買取再販認定住宅等の取得(以下「認定住宅等の新築等」という。)をして令和7年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)を次のとおりとして本特例の適用ができることとする。
住宅の区分 | 借入限度額 |
---|---|
認定住宅 | 5,000万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 |
- ②認定住宅等の新築又は認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得に係る床面積要件の緩和措置について、令和7年12月31日以前に建築確認を受けた家屋について適用できることとする。
(注1)「特例対象個人」とは、個人で、年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者をいう。以下同じ。
(注2)「認定住宅等」とは、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅及び省エネ基準適合住宅をいい、「認定住宅」とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。以下同じ。
(注3)「買取再販認定住宅等」とは、認定住宅等である既存住宅のうち宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われたものをいう。
(注4)上記について、その他の要件等は、現行の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と同様とする。
2.所得税の基礎控除・給与所得控除等
(国税)
(1)基礎控除
- ①基礎控除について、合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額を10万円引き上げる。
- ②上記①の見直しの結果、基礎控除の額は次のとおりとなる。
イ合計所得金額が2,350万円以下である個人58万円
ロ合計所得金額が2,350万円を超え2,400万円以下である個人48万円
ハ合計所得金額が2,400万円を超え2,450万円以下である個人32万円
ニ合計所得金額が2,450万円を超え2,500万円以下である個人16万円 - ③上記①の見直しに伴い、公的年金等に係る源泉徴収税額の見直し等の所要の措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。なお、給与等及び公的年金等の源泉徴収については、令和8年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について適用する。
(注2)上記の改正に伴い生ずる公的年金等につき源泉徴収された所得税の額に係る超過額について、当該公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除く。)の支払者から還付等をするための措置を講ずる。
(2)給与所得控除
- ①給与所得控除について、55万円の最低保障額を65万円に引き上げる。
- ②上記①の見直しに伴い、給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表、年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表等について所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。なお、上記②の給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)及び賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の改正については、令和8年1月1日以後に支払うべき給-20-与等について適用する。
(3)特定親族特別控除(仮称)
- ①居住者が生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等(その居住者の配偶者及び青色事業専従者等を除くものとし、合計所得金額が123万円以下であるものに限る。)で控除対象扶養親族に該当しないものを有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額等から次のとおりの控除額を控除する。
親族等の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
58万円超85万円以下 | 63万円 |
85万円超90万円以下 | 61万円 |
90万円超95万円以下 | 51万円 |
95万円超100万円以下 | 41万円 |
100万円超105万円以下 | 31万円 |
105万円超110万円以下 | 21万円 |
110万円超115万円以下 | 11万円 |
115万円超120万円以下 | 6万円 |
120万円超123万円以下 | 3万円 |
- ②上記①の控除については、控除額が一定額以上の場合には、給与等及び公的年金等の源泉徴収の際に適用できることとする。
- ③その他所要の措置を講ずる。
(注)上記①の改正は令和7年分以後の所得税について、上記②の改正は令和8年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について、それぞれ適用する。なお、給与所得者については令和7年分の年末調整において適用できることとするほか、所要の経過措置を講ずる。
(4)上記(1)から(3)までの見直しに伴う所要の措置
- ①同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を58万円以下(現行:48万円以下)に引き上げる。
- ②ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件を58万円以下(現行:48万円以下)に引き上げる。
- ③勤労学生の合計所得金額要件を85万円以下(現行:75万円以下)に引き上げる。
- ④家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額を65万円(現行:55万円)に引き上げる。
- ⑤その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。
(地方税)
(1)給与所得控除給与所得控除について、55万円の最低保障額を65万円に引き上げる。
(2)特定親族特別控除(仮称)
- ①所得割の納税義務者が生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等(その納税義務者の配偶者及び青色事業専従者等を除くものとし、前年の合計所得金額が123万円以下であるものに限る。)で控除対象扶養親族に該当しないものを有する場合には、その納税義務者の前年の総所得金額等から次のとおりの控除額を控除する。
親族等の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
58万円超95万円以下 | 45万円 |
95万円超100万円以下 | 41万円 |
100万円超105万円以下 | 31万円 |
105万円超110万円以下 | 21万円 |
110万円超115万円以下 | 11万円 |
115万円超120万円以下 | 6万円 |
120万円超123万円以下 | 3万円 |
- ②その他所要の措置を講ずる。
(3)所得税における(2)から(4)までの見直しに伴う所要の措置
- ①同一生計配偶者及び扶養親族の前年の合計所得金額要件を58万円以下(現行:48万円以下)に引き上げる。
- ②ひとり親の生計を一にする子の前年の総所得金額等の合計額の要件を58万円以下(現行:48万円以下)に引き上げる。
- ③勤労学生の前年の合計所得金額要件を85万円以下(現行:75万円以下)に引き上げる。
- ④その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和8年度分以後の個人住民税について適用する。
【法人課税】
中小企業者等の法人税の軽減税率の特例(税率15%)
(1)中小企業者等の法人税の軽減税率の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
- ①所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率を17%(現行:15%)に引き上げる。
- ②適用対象法人の範囲から通算法人を除外する。
(2)中小企業投資促進税制について、関係法令の改正を前提にみなし大企業の判定における大規模法人の有する株式又は出資から、その判定対象である法人が農地法に規定する農地所有適格法人である場合で、かつ、一定の承認会社がその農地所有適格法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合におけるその株式又は出資を除外した上、その適用期限を2年延長する(適用期限の延長は、所得税についても同様とする。)。
(注)上記の「一定の承認会社」とは、農林漁業法人等に対する投資の円滑化に関する特別措置法に規定する承認会社のうち地方公共団体、農業協同組合、農業協同組合連合会、農林中央金庫又は株式会社日本政策金融公庫がその総株主の議決権の過半数を有しているものをいう。
2.防衛特別法人税(仮称)の創設
(1)納税義務者各事業年度の所得に対する法人税を課される法人は、防衛特別法人税を納める義務がある。
(注)法人には、人格のない社団等及び法人課税信託の引受けを行う個人を含む。
(2)課税の範囲法人の各課税事業年度の基準法人税額について、当分の間、防衛特別法人税を課する。
(3)税額の計算
- ①防衛特別法人税の額は、各課税事業年度の課税標準法人税額(課税標準)に4%の税率を乗じて計算した金額とする。
- ②課税標準法人税額は、基準法人税額から基礎控除額を控除した金額とする。
- ③基準法人税額は、次の制度を適用しないで計算した各事業年度の所得に対する法人税の額とする。ただし、附帯税の額を除く。
イ所得税額の控除
ロ外国税額の控除
ハ分配時調整外国税相当額の控除
ニ仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除
ホ戦略分野国内生産促進税制のうち特定産業競争力基盤強化商品に係る措置の税額控除及び同措置に係る通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額の加算
ヘ控除対象所得税額等相当額の控除 - ④基礎控除額は、年500万円とする。なお、通算法人の基礎控除額は、年500万円を各通算法人の基準法人税額の比で配分した金額とする。
(注)上記の配分は、通算法人の基準法人税額が期限内申告における基準法人税額と異なる場合には、原則として期限内申告における基準法人税額により配分する。 - ⑤次の税額控除を行うこととする。
イ外国税額の控除
ロ分配時調整外国税相当額の控除
ハ控除対象所得税額等相当額の控除
ニ仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除
(4)申告及び納付等
- ①各事業年度の所得に対する法人税の中間申告書を提出すべき法人は、防衛特別法人税の中間申告書を提出しなければならない。
(注)上記の防衛特別法人税の中間申告書の提出は、令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度から適用する。 - ②防衛特別法人税の申告期限及びその申告に係る防衛特別法人税の納期限は、各事業年度の所得に対する法人税の申告期限及び納期限と同一とする。
- ③電子申告の特例については、各事業年度の所得に対する法人税と同様とする。
- ④防衛特別法人税中間申告書を提出した法人からその防衛特別法人税中間申告書に係る課税事業年度の防衛特別法人税確定申告書の提出があった場合において、その防衛特別法人税確定申告書に中間納付額で防衛特別法人税の額の計算上控除しきれなかった金額の記載があるときは、その金額に相当する中間納付額を還付する。
- ⑤各事業年度の所得に対する法人税につき欠損金の繰戻しによる法人税の還付の請求書を提出した法人に対して還付所得事業年度に該当する課税事業年度に係る法人税を還付する場合には、その課税事業年度の防衛特別法人税の額でその還付の時に確定しているもののうち、法人税の還付金の額に4%を乗じて計算した金額にその課税事業年度の課税標準法人税額を乗じてこれをその課税事業年度の基準法人税額で除して計算した金額に相当する金額を併せて還付する。
(5)その他質問検査、罰則等については、各事業年度の所得に対する法人税と同様とし、その他所要の措置を講ずる。
(6)適用関係防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
※本記事は2024年12月20日時点の法令・情報に基づき作成されたものです。
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