小規模宅地の特例と代償分割
ここでは、代償分割を行う際に小規模宅地の特例を利用した場合についてご説明します。
代償分割とは、例えば1人の相続人が土地や家屋等の財産をすべて相続する代わりに、他の相続人に現金などで支払う方法のことです。
相続する財産が土地や家屋など分けにくいものである場合、代償分割はスムーズに遺産分割をすすめるためにとても有効な手続きです。
そして、土地の相続で代償分割をする場合、小規模宅地の特例を合わせて利用することで節税につなげることができます。
ここで、簡単な例をあげて確認してみましょう。
仮に相続税評価額が2億円、面積が300㎡の土地を、相続人である息子さんと娘さんが受け継ぐことになったとします。
息子さんは被相続人であるお父様と同居していましたが、娘さんは同居せず別の家に住んでいます。
今回の例は、居住用宅地であり、被相続人が住んでいた宅地です。この宅地に小規模宅地の特例は適用されるのでしょうか?
小規模宅地の特例
【居住用宅地で被相続人が住んでいた宅地の場合】
- 被相続人の配偶者
→要件はありません - 被相続人と同居していた親族
→相続税の申告期限までその家屋に引き続き居住すること
相続税の申告期限までその宅地等を所有していること - 被相続人と同居していない親族
→被相続人に配偶者や同居していた親族がいないこと
相続開始前3年以内にその人またはその人の配偶者が所有する家屋に居住していないこと相続税の申告期限までその宅地等を所有していること
以上の場合で、小規模宅地の特例が適用されます。
上記に示したことから、小規模宅地の特例は被相続人と同居していた息子さんにしか適用されないことが分かります。
- 息子さんの相続税対象額
1億円(土地の半分)-8,000万円(特例控除)=2,000万 ※小規模宅地の特例の適用によって80%の減額 |
- 娘さんの相続税対象額
1億円(土地の半分) |
課税対象の価格は相続人2人合わせて1億2,000万円となります。ここから基礎控除などを引いて最終的な相続税の金額を計算してみます。
基礎控除額:3,000万円+(相続人の人数×600万円)→今回のケースでは4,200万円 1億2,000万円-4,200万円=7,800万円 |
これを相続人2人分に分割すると3,900万円(7,800万円÷2)なので1人当たり3,900万円となります。
そして、この3,900万円に対する相続税の税額を計算すると…
【相続税の速算表】
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
◎相続税の計算:法定相続分に応ずる取得金額×税率-控除額
上記の表より、
3,900万円(法定相続分に応ずる取得金額)×20%(税率)-200万円(控除額)=580万円 |
以上より相続税の金額は息子さんと娘さん合わせて1,160万円(580万円×2)となります。
では、このケースで代償分割を行うとどうなるでしょうか。
代償分割として評価額2億円、面積が300㎡の土地は息子さんがすべて受け継ぎ、その代わりに娘さんに対して息子さんが1億円を支払ったとします。
- 息子さんの相続税対象額
2億円(土地すべて)-1億6,000万円(特例控除)-1億円(代償分)=-6,000万円 |
↓
0円(※)
(※計算上マイナスの金額になりますが、実際に税額を計算する際はマイナスの金額のものは0円とみなします。)
- 娘さんの相続税対象額
1億円(代償分) |
課税対象の価格は相続人2人合わせて1億円となります。ここから、基礎控除などを引いて最終的な相続税の金額を計算してみます。
基礎控除額:4,200万円 |
これを相続人2人分に分割すると2,900万円(5,800万円÷2)なので1人当たり2,900万円の課税となります。
そして、この2,900万円に対する相続税の税額を計算すると…
2,900万円(法定相続分に応ずる取得金額)×15%(税率)-50万円(控除額)=385万円 |
以上より相続税の金額は息子さんと娘さん合わせて770万円(385万円×2)となります。
よって、今回のケースでは、代償分割と小規模宅地の特例を合わせて利用することで、本来かかるはずの1,160万円から770万円に相続税を減額することができ、390万円の節税につなげることができました。
このように、内容によっては、代償分割と小規模宅地の特例を合わせて利用することで節税することができます。
しかし、使い方次第で相続税の負担を減らすことができますが、小規模宅地の特例には様々な要件がありますし、代償分割も手続きなどの注意点がありますので、専門家に相談しながら検討することをお勧めします!
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