相続人の範囲はどこからどこ?様々な相続パターンも紹介!

相続が発生したとき、誰が相続人になるのかお調べですね。
相続人の範囲については、法律で決められています。
正しく相続人の範囲を知っておかなければ、財産をどのように分けるのか決めにくくトラブルになるかもしれません。
今回は、相続人になれる人は誰なのか等、様々な相続のパターンをご紹介します。
相続人の範囲について理解し、円満な相続を実現しましょう。

1.相続人とは

相続人とは、相続が起きたときに亡くなった被相続人の財産を相続する権利を持っている人のことです。相続人の範囲がどうなるのかについては、法律で定められています。したがって、原則として相続人として法律で認められている人でなければ、相続の際に財産を引き継ぐことができません。

相続は急に起きることも多く、トラブルになりやすいとされています。親族内で揉めることを避けるためには、相続人の範囲について理解しておくことが重要です。また、実際の相続手続きの際には、亡くなった人の戸籍謄本が必要です。生まれてから亡くなるまでの連続しているものを見て相続人になる人を確認してください。

相続人には優先順位があり、第一順位から第三順位まであります。順位が高いほど、法定の相続割合も多いです。また、配偶者は必ず相続人になります。

ここからは、具体的に誰が相続人となるのかについて詳しく見ていきましょう。

1-1.配偶者

配偶者は、必ず相続人になることができます。亡くなった被相続人の配偶者、つまり妻か夫は相続人ということです。配偶者の相続については、民法890条で定められています。

ただ、配偶者が相続人になるには、法律上婚姻していなければなりません。内縁関係の場合や、事実婚の場合には法定相続人ではないので注意が必要です。

一方で、相続が発生した段階で配偶者が被相続人と別居している場合でも、婚姻関係が続いているのであれば相続人となります。相続の発生したタイミングで戸籍に入っているかどうかを確認することが大切です。

配偶者は、他の法定相続人がある場合、単独では相続を行いません。ここから紹介していく第一順位から第三順位までの相続人のうち、最も順位が高い区分の相続人と一緒に相続を行うのが原則となっています。ここからは、配偶者以外の相続人を高い順位の人から見ていきましょう。

1-2.第一順位 直系卑属

配偶者以外で、最も順位が高く第一順位となっているのが直系卑属です。直系卑属とは、子や孫を指します。直系卑属の相続について定めているのは、民法886条や887条です。胎児や認知している非嫡出子、養子縁組を行った養子も相続人となります。

第一順位の相続人がいる場合、このあとの第二順位、第三順位の人には相続の権利は発生しません。また、子が複数人いるときには、全員が同じ割合で分けて相続権を手に入れます。もしも子が3人いるなら、3等分です。

孫が相続人になれるのは、子が被相続人より先に死亡していて相続の権利を得ることができない場合です。死亡している子に子がいるときには、孫として相続を行います。このことを、代襲相続と呼んでおり、孫は子が生きていた場合と同様に第一順位です。子と孫の両方が生きている場合、孫は相続人にはならないことは覚えておいてください。

1-3.第二順位 直系尊属

第二順位には、直系尊属が定められています。直系尊属とは、被相続人の父母や祖父母のことです。直系尊属の相続については、民法889条で定められています。

第二順位の人が相続の権利を手に入れられるのは、第一順位の相続人が誰もいない場合です。また、父母と祖父母の両方がいるときには、父母だけが相続人になります。つまり、父母がいると祖父母は相続人になれません。祖父母が相続人となるのは、父母の両方がいない場合です。

1-4.第三順位 被相続人の兄弟姉妹

第三順位には、被相続人の兄弟姉妹が定められています。兄弟姉妹の相続について定めているのは、民法889条です。

被相続人の兄弟姉妹は、第一順位と第二順位の範囲に相続人が誰もいない場合にのみ相続の権利を手に入れます。ただし、異母・異父の兄弟姉妹の場合には相続割合は少なく決められています。また、被相続人の配偶者側の兄弟姉妹に対しては原則として相続の権利は与えられないと決まっているので注意しなければなりません。

兄弟姉妹については、直近の1代分だけ代襲相続が認められています。したがって、被相続人から見て甥や姪までは相続権を得る可能性があるのです。

たとえ甥や姪が相続発生前に亡くなっていて甥姪に子がいても、その子は相続人にはなれないので気をつけてください。

ここまでで、相続人の範囲について説明しました。法定相続の場合、相続人にはそれぞれ相続する割合が法定相続分として以下の表のように定められています。
 

相続人 配偶者 兄弟姉妹
配偶者・子 1/2 1/2 - -
配偶者・親 2/3 - 1/3 -
配偶者・兄弟姉妹 3/4 - - 1/4
配偶者のみ 1 - - -
子のみ - 1 - -
親のみ - - 1 -
兄弟姉妹のみ - - - 1

たとえば、配偶者と子が相続人になる場合の財産の分け方を考えてみましょう。配偶者の割合は1/2、子の割合も1/2です。子が複数人いるなら、同じ割合に分割します。つまり、5,000万円の財産を配偶者と子2人で分けるなら、配偶者が2,500万円、子が1,250万円ずつです。

また、配偶者と父母の3人が相続人になる場合の財産の分け方を考えてみましょう。配偶者・親の組み合わせの場合、配偶者の割合は2/3です。そして、父母の割合は1/3となります。したがって、3,000万円の財産を3人で分けるなら、配偶者が2,000万円、父母が500万円ずつです。

このように、同じ配偶者という立場だとしても、状況によって相続する割合が異なる点には注意しなければなりません。財産の分け方を考える際には、相続人を明確にしてから考えるようにしてください。「常に配偶者は1/2」というように間違って覚えていると、他の相続人と揉めてしまうおそれがあるのです。

ちなみに、法定相続分以外には、協議して相続割合を決める分割協議があります。分割協議を行って相続人全員が分け方に納得した場合には、法定相続の割合とは違う分け方で財産を分けることが可能です。分割協議を行う場合でも、トラブル防止のために法定相続での相続割合を参考にするのが良いでしょう。ただし、被相続人が遺言で遺産分割協議を禁じているときは、定められた期間内は分割協議で財産を分けることはできないので注意が必要です。

2.様々な相続のパターン 

ここからは、様々な相続のパターンを見ながら、相続人の範囲について考えていきましょう。以下の4つのパターンを順番に確認していきます。

  1. 相続放棄を行う場合
  2. 相続人に非嫡出子がいた場合
  3. 代襲相続を行う場合
  4. 相続人に行方不明者がいる場合

これらの状況に当てはまる可能性がある方は、確認しておくことをおすすめします。それでは、順番に見ていきましょう。

2-1.相続放棄を行う場合

1つ目のパターンは、相続放棄を行う人がいる場合です。相続人が相続放棄をしたときには、初めの段階から相続人ではなかったものとして取り扱われます。

たとえば、配偶者が相続放棄したなら、子がいる場合には子が全てを相続するということです。配偶者がもともといないように計算すれば良いので、押さえておきましょう。

もしも子が相続放棄したなら、さらに場合分けして考えます。最初のケースは被相続人に孫がいて、子が1人の場合です。子が相続放棄をすると、もともと相続人ではないものとして扱われるので、孫への代襲相続は発生しません。つまり、第二順位や第三順位の相続人が財産を引き継ぐことになります。

2つ目のケースは、子が2人の場合です。片方の子が相続放棄しても、もう片方の子が相続人となります。そのため、本来2人分の財産を1人で相続することになるでしょう。

2-2.相続人に非嫡出子がいた場合

2つ目のパターンは、相続人に非嫡出子がいた場合です。平成25年に民法の一部が改正されたので、非嫡出子の相続割合が嫡出子と同じになりました。したがって、嫡出子と同様に相続については考えれば良いでしょう。

たとえば、配偶者と嫡出子、非嫡出子の3人が相続人となる場合を考えます。配偶者の法定相続分は1/2で、子2人で1/2を分け合うので1/4ずつです。

2-3.代襲相続を行う場合

3つ目のパターンは、代襲相続を行う場合です。代襲相続では、本来の法定相続人が亡くなっているときに、その人の子が代わりに相続を行います。たとえば、被相続人の子が死亡しているとき、孫が代襲相続人となるのです。

代襲相続人になれる範囲は、決まっています。代襲相続できるのは、直系卑属の孫・ひ孫と傍系卑属の甥姪です。傍系というのは、同じ祖先から分かれた別系統を指します。代襲相続人になれる範囲から外れているなら、代襲相続はできません。

また、孫が代襲相続するときには、被相続人の子が養子かどうか注意する必要があります。なぜなら、被相続人の子が養子である場合には、代襲相続ができないかもしれないためです。孫が養子縁組の前に生まれている場合は、代襲相続が認められていません。一方で、養子縁組をしてから孫が生まれている場合には、代襲相続ができます。

ちなみに、相続人だけではなく代襲相続人も亡くなっているケースもゼロではありません。その場合、さらに次の世代に再代襲相続が認められることがあります。再代襲相続が認められているのは、直系卑属のひ孫・玄孫だけです。甥姪の子は傍系卑属となるので、再代襲相続はできません。

2-4.相続人に行方不明者がいる場合

4つ目のパターンは、相続人に行方不明者がいる場合です。被相続人の財産を分ける際には、相続人全員での話し合いが必要となっています。したがって、相続人に行方不明者がいるケースでは、相続財産を分けることができません。

相続人に行方不明者がいて話し合いができないとき、相続財産は未分割の状態で残りの相続人は法定相続分で相続税の申告手続きをしなければなりません。この場合、トラブルになりやすいです。たとえば、相続財産に不動産があったなら、相続登記ができずに売れないままとなってしまいます。

相続人が行方不明のままの場合、失踪宣告や不在者の財産管理人の制度を利用することが多いです。状況に応じた制度を利用し、遺産分割について協議を進めていきましょう。

失踪宣告とは、行方不明になっている人の生死が7年間以上不明なときに利用できる制度です。利害関係のある人が家庭裁判所に申し立てることによって、条件を満たせば行方不明な人を死亡したものとしてみなすことができます。それによって、遺産分割協議に参加してもらう必要がなくなるのです。

失踪宣告を利用するには7年間という長い時間が必要となります。そのため、財産管理人の制度が使われることが多いです。行方不明になって7年未満なら、利害関係のある相続人などが財産管理人の選任を請求できます。財産管理人に選ばれた人は、家庭裁判所に認められれば遺産分割協議に参加できるのです。

3.まとめ

相続人の範囲については、法律で第一順位から第三順位まで決められています。
そして、配偶者は必ず相続人です。
また、相続放棄を行う人がいる場合や、非嫡出子がいた場合、代襲相続を行う場合、行方不明の人がいる場合といった4つのパターンをご紹介しました。
様々な相続のパターンを理解しておくことで、相続が発生したときのトラブルを予防できます。
ご自身の置かれている状況ならどのような相続になるのか、一度考えてみてください。

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