1.書面添付制度とは
誰しも税務調査は避けたいものだと思います。税務調査というのはどういうものかというと、納税者から提出された申告書の内容が正しいものかどうかを確認するために行う税務署による調査のことです。
法人税、所得税、消費税、相続税は納税者が自ら税金の額を申告して、納税する申告納税制度をとっています。申告納税制度は納税者全員が正しく税金の申告と納税をしてくれれば問題ないのですが、申告内容に誤りがあったり、虚偽の申告が行われたりというケースも少なくありません。そのような誤った申告を正すために、税務調査は行われています。
税務調査によって指摘を受けて申告内容を修正する場合には、修正申告書という書類を作成し、税務署に提出しなければなりません。そして不足していた税額や納税が遅れた分の延滞税、過小に申告していた分の加算税などを納税しなければならなくなります。また、悪質な脱税だとみなされると、重加算税が課されることもあるので要注意です。
真面目に申告したとしても、うっかりミスによって税務調査が行われることはあり得ます。ですので、申告後にも税金についてストレスを抱えている人は少なくありません。そんな税務調査を100%なくす方法はありませんが、税務調査に入られる確率を下げることは可能です。どのようにすれば良いのかというと、申告の際に税理士に依頼して書面添付制度を利用することです。
国税庁の公開している制度の説明としては、税理士が作成した申告書について、計算事項のような細かな内容を記載した書面の添付や事前通知前の意見聴取を通じて、税務の専門家の立場からどのように申告書を制作したのかをハッキリさせることによって、正確な申告書作りや申告に資するという税理士の権利のひとつです。書面添付制度を使うことによって、税務署が税務調査の実施を納税者に伝える前に、担当した税理士が意見を述べる意見聴取の機会を与えなければならなくなります。それによって急に税務調査に入られて慌てるおそれがなくなるでしょう。さらに、税務署は税理士に対して意見聴取を行うことによって申告内容に問題がないとわかれば、税務調査を行わなくなります。ご自身で申告していた場合にはすぐに税務調査に入られてしまうので、その点は大きな違いです。
税理士に依頼して申告書作成を行おうとしている人のなかには、「そもそも税理士の署名付きの申告書を提出しているから書面を添付する必要はないのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、理由は後述しますが、書面添付制度を利用することで、実際に税務調査が行われる可能性はグッと下がります。
相続税申告における書面添付制度の適用割合は、年々増えています。平成29年度の書面添付制度の利用率が18.2%であったのに対して、令和3年度の書面添付制度の利用率は23.1%でした。このように、利用率が増えている制度です。気になる方はこの記事を参考に、ぜひ利用を検討してみてください。
税理士法第33条の2に規定する書面の添付割合(所得税・相続税・法人税)
年度 |
平成29年度 |
30年度 |
令和元年度 |
2年度 |
3年度 |
---|---|---|---|---|---|
相続税申告 |
18.2% |
20.1% |
21.5% |
22.2% |
23.1% |
国税庁『令和3事務年度国税庁実績評価書』より
ちなみに、税務調査の実施前の税理士の意見聴取については、申告者は参加しなくても良いです。したがって、税理士に任せっきりにすることもできます。意見聴取は、税理士が税務署に訪問し、1時間〜2時間程度かけて行われます。主に書面に記載されているような事柄について聞かれるので、書面の作成時からしっかりと濃い内容を記載しておいてもらうことが重要となります。
2.書面に記載する内容
書面添付制度で添付する書面には、さまざまな内容を記載します。添付する書面の様式は国税庁のサイトで確認することができるので、見てみてください。国税庁のサイトからダウンロードして使うこともできます。
どのような内容を記載するのかというと、たとえば以下のようなさまざまな事項です。
- 申告書を作成した税理士の氏名
- 申告書を作成した税理士事務所の所在地
- 税理士に依頼した相続人の情報
- 財産の種類ごとの税金の計算方法
- 調査・整理した事項
場合によっては、税務項目への法的な解釈や過去の判例などに基づいた意見を表明することもあります。このような書類を添付することによって、税務署は申告者の申告書についてより理解でき、正確性も確認することが可能です。
実力のある税理士なら、税務調査を避けるために幅広い観点から書類に所見を記載してくれることでしょう。
3.書面添付のメリット
書面添付制度を利用するメリットはいくつかあります。代表的なものは、以下の2つです。
- 税務調査の確率が下がる
- 税務調査に移行しなかった場合、加算税がかからない
これらのメリットがあるので、書面添付制度を利用しようと検討する人は少なくありません。それぞれのメリットについて、順番に詳しく見ていきましょう。
3−1.税務調査の確率が下がる
書面添付制度を利用することによって、税務調査の確率を下げることができます。書面添付を行っておけば税務署に必要な情報を調査前に提供できるので、実際に税務調査に入られる確率が下がります。
税務調査が行われる確率としては、相続税申告のケースで16%程度ですが、書面添付制度を利用している場合には5%前後だとする話もあります。これは、税務調査の前の意見聴取により税務署側の疑義が解消されれば税務調査に移行しないからです。
また、書面添付制度はどんな税理士にも安心してお願いできるわけではありません。書面添付制度を利用する際の書面には税理士が細かな事柄を書かなければならないので、書面添付制度をお願いできる税理士は実力があるプロフェッショナルだと考えられます。そのような申告書の制作能力がある税理士に申告を依頼することによって、より税務調査の確率を下げることができているといえるでしょう。
ちなみに、税理士に依頼せずに自分で申告書を作成した場合には、税務署から申告者本人に直接連絡が行き、税務調査に進みます。税務調査では納税者はさまざまな質問をされ、負担が非常に大きいです。したがって、税務調査の確率が下がることによって、精神的なストレスも減ってくるでしょう。
3−2. 税務調査に移行しなかった場合、加算税がかからない
税務調査に移行しなかった場合には、加算税がかからないというのも嬉しいメリットです。これによって、税負担を軽減する助けになるでしょう。
本来、税務調査によって申告漏れが見つかったのであれば、未申告部分の納税だけではなく、加算税や延滞税なども支払わなければならなくなります。税務調査によって追加で納税となった際には、もともとの本税とは別に過少申告加算税が10%または15%課されることになるのです。悪質な場合には、重加算税が35%または40%課されるので、非常に大きな納税負担が発生します。
一方で書面添付制度を使っている際に行われる税理士への意見聴取のときに申告漏れが見つかったのであれば、修正申告が自主申告だとみなされ、加算税がかからなくなります。未申告部分の本税や延滞税は収める必要がありますが、加算税が発生しないだけでも節税につながります。ちなみに、延滞税の税率は、年2.4%です。加算税は少なくとも10%からなので、延滞税だけであれば納税金額が大幅に減ります。
4.税理士が書面添付制度を避ける理由
「書面添付制度は良さそうな制度だし、ぜひ使ってみよう」とお考えの方もいらっしゃると思います。しかし、実は税理士によっては書面添付制度の利用を避けたがることもあるので注意が必要です。
税理士がなぜ書面添付制度を避けるのかというと、最初に理由として挙げられるのが書面作成にかかる時間や費用です。次に理由として挙げられるのが、税務署の担当者と話し合う必要が発生することです。また、先ほども少し述べましたが、そもそも税理士の力量不足で書面添付制度を行いたがらないケースもあります。
また、税理士は書面添付制度に用いる書類に虚偽の内容を書いた場合には、最長で2年もの業務停止にさせられてしまいます。2年も業務ができないとなるのは税理士側としても困るので、税理士側からはリスクのある制度でもあります。申告に自信がある税理士でなければ、書面添付制度を避けたがるのも当然だといえるでしょう。
5.書面添付をしているかどうかは税理士選びの判断のひとつ
税理士を選ぶ基準はいろいろありますが、書面添付制度に積極的な対応をしているかどうかも良い判断基準となるでしょう。書面添付制度に積極的であれば、専門知識や申告経験が豊富なことが考えられます。
一方で、書面添付制度を使う際には注意が必要です。書面添付制度を使ったとしても、書面の内容が薄い場合には効果が発揮されません。むしろ、税務署に要注意な申告書だとしてマークされてしまうおそれもあります。せっかく書面添付制度を行っても、税務調査の確率が上がってしまう可能性がありますので、書面添付制度に消極的な税理士に無理やり依頼するのは避けたほうが良いです。
また、書面添付制度を利用する際の税理士選びの際には、書面添付制度について有料オプションなのかどうかも確認することが必要となります。税理士事務所によって、申告サービスの中に書面添付制度が含まれている場合もあれば、有料の追加オプションとして準備されている場合もあります。できるだけ費用を抑えたいのであれば申告サービス内で書面添付制度を使ってくれる税理士事務所に依頼すべきですが、その税理士の実力や経験も踏まえて冷静に判断しましょう。
そして、書面添付制度を利用した場合に申告書の作成にかかる時間は税理士事務所によって異なります。丁寧に書面を作成する場合には、一般的な申告書作成よりも多くの時間が必要となるので、申告期限を意識して余裕を持って依頼することが重要です。税理士に依頼する際には、そういった点も質問してみてください。
以上のように、書面添付制度はメリットも注意点もある制度ではありますが、税務調査のリスク低下や、加算税の節税につながるので、できるだけ使いたい制度です。少しでも気になるようであれば、まずは税理士に相談してみてください。
まとめ
今回は、書面添付制度の概要や利用のメリットなどについて解説しました。そして、税理士を選ぶ際には書面添付制度の利用に積極的な税理士を選ぶと安心しやすいこともお伝えしました。
書面添付制度を利用することによって、さまざまなメリットがあります。代表的なメリットとしては、税務調査の確率が下がることと、税務調査に移行しなかった場合に加算税がかからないことです。税務調査の確率が下がるということで、申告後の精神的な安心感を得ることもできます。これは、ご自身で申告を行った場合には得られないメリットです。
とはいえ、この制度は、その資料の作成に事務的な負担がかかったり、万が一虚偽の記載があった場合には、税理士が重い処罰を受けたりすることとなるため、導入している税理士事務所はごく少数しかないのが現状です。
当法人では、申告のお手伝いをさせていただく方の大半(累計実績99%)の方に対して、書面添付制度を使って申告をさせていただいております。
当法人の担当者×税理士×国税OBという品質に加えて、当法人の徹底した調査と確認を前提として「この申請に間違いありません」と添付する事で、税務調査は実に1%未満となっております。これは全国平均の約16%と比較すると圧倒的な実績となります。
さらに、書面添付制度を用いる事で、税務調査に移行する前の意見聴取の段階で追加の財産が出てきた場合にも、過少申告加算税10~15%相当額が課税されないというメリットがあります。
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