相続税における倍率地域の土地評価
相続財産の一つである土地の評価方法には、その土地の面している道路に付されている路線価に地積を掛けて求める「路線価方式」と、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて求める「倍率方式」があります。
ここでは、倍率方式についてご説明いたします。
倍率地域の土地評価の計算
倍率方式は、路線価が定められていない地域にある土地を評価する際に使います。この土地のことを倍率地域と呼びます。
どちらの方式で計算すればいいのかわからない場合は、まず初めに国税庁のHPでその土地に路線価が付いているかを調べてみましょう。路線価方式は主に市街化区域内の土地で使いますから、都市部=路線価、都市部以外=倍率という大まかなイメージを持っておいても良いでしょう。
倍率地域の評価を実際に計算する前に、準備するものがあります。
4月中旬から5月初旬に送られてくる固定資産税・都市計画税納税通知書で固定資産税評価額を確認することができます。
- 固定資産税の納税通知書
4月中旬から5月初旬に送られてくる固定資産税・都市計画税納税通知書で固定資産税評価額を確認することができます。 - 倍率表
国税庁のHPに載っていますので、誰でも確認することができます。
ここで注意しなければいけないのが、相続の土地評価で使う固定資産税評価額は、基準年度のものを使用するということです。固定資産税評価額は、全国共通のルールで、基準年度で定めた金額を3年間据え置くこととなっています。ただし、自治体によっては、その自治体の状況により据え置きの3年間の間に固定資産税評価額を増減している場合があります。
そのため、被相続人が「亡くなった日」の属する基準年度の固定資産税の納税通知書を確認する必要があります。
なお、倍率表は被相続人が「亡くなった日」の属する年のものを使用しましょう。
倍率表の見方と注意点
倍率表は、大きく分けて4つのパートに分かれています。
- 市区町村の区分
- 市街化区域・市街化調整区域等の適用地域名
- 倍率割合
- 地目(宅地・田・畑・山林等)ごとの区分
以上の項目が表になっていますので、評価したい土地が該当する倍率を確認していきます。
ここでも、いくつか注意しなければいけないポイントがあります。相続税の土地の評価をするときには、登記簿に記録されている情報ではなく現況に沿って評価額を計算していきます。
どの地目に該当するかを判断する際には、登記簿謄本に記載されている地目に関係なく相続開始日の土地の状態を見て判断してください。
土地の面積についても、登記簿に記載されているものと実際の面積が異なる場合があります。登記簿に記載されている面積よりも実際の面積のほうが大きい場合は「縄伸び」、小さい場合は「縄縮み」といいます。
縄伸びの場合には、本来は登記簿に載っているよりも大きな土地を持っているわけですから、登記簿上で評価してしまったら過少申告となってしまいます。
反対に、縄縮みの場合には無駄に多く税金を払ってしまうことになります。
では、実際の土地の面積を測るために測量は必ずしなければいけないのでしょうか。
測量は費用がかかりますし、税務署もそこまで細かくは見ていません。
明らかに登記簿に載っている面積と実際の面積が違いそうな場合や、縄縮みがある場合には簡易的な測量を行うことをお勧めします。
雑種地の評価
ここまでお話したように、倍率地域の計算に用いる「倍率方式」は固定資産税評価額に倍率を掛ければ評価できますので、路線価方式のように複雑な計算が必要ありません。
ただし、雑種地の評価については他の土地の評価方法と違う点があります。雑種地とは、田・畑・宅地・山林・原野・牧場・池沼・鉱泉地のどれにも当てはまらない土地のことです。
具体的に身の回りにあるものとして、駐車場や資材置き場、ゴルフ場等が挙げられます。
雑種地に倍率が定められている場合には上記の「倍率方式」を使いますが、雑種地は原則として近傍地比準価額方式を使って評価します。
近傍地比準価額方式とは、評価する雑種地と状況が類似する付近の土地について評価した1㎡当たりの価額を基にして評価します。
特に、市街化調整区域にある雑種地を評価する場合には、周囲の状況を加味して地目を判定する必要があります。
また、しんしゃく割合という土地の開発の可否や建築制限による、土地評価の均衡をとるための数字が適用できるかどうかの判断も必要になってきます。
こういった判断は、専門家の間でも意見がわかれるところですから、相続の土地評価に強い税理士に相談してみましょう。
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