高低差のある土地は相続税評価額を減額できる?具体的な評価方法も解説
土地を相続すれば、基礎控除を超える場合は相続税が申告義務が発生します。
では、高低差のある土地やがけ地など、通常よりも利用価値が低い土地を相続したときはどうでしょう?
仮に、平地と同じ評価方法で相続税が算出されるとなると、何だか過剰に納税させられている気分になりますよね。
そこで今回は、高低差のある土地やがけ地等を有する宅地に、どこまで相続税減額の余地があるのかを解説します。
具体的な補正計算の流れも紹介していくので、土地相続を控えている方はぜひ参考にしてみてください。
1.高低差のある土地やがけ地等を有する宅地は相続税評価額を下げられる
相続税を求めるには、まず相続税評価額(=相続する財産の金銭的価値)を算出する必要があります。
土地を相続する場合の評価額は、土地に隣接する路線の価値、いわゆる路線価を基準に求めるのが一般的です。(各地域の路線価は国税庁HPで確認可能)
しかし、高低差のある土地やがけ地等を有する宅地の場合はそうもいきません。
平地に比べて利用価値が低い関係上、路線価基準で算出した理論上の価額に比べ、実際の取引価格が安くなる可能性が高いからです。
そこで国税庁は、高低差などによって利用価値の著しい低下が認められる土地に対し、評価額計算における一定の控除補正を認めています。
2.高低差のある土地
路面と高低差があり、かつその傾向が周辺宅地と比べても顕著な場合は、従来の方式で算出した相続税評価額を10%減額できます。
ただし、二方向以上の路線に隣接している場合は若干計算が複雑になるほか、高低差による減価分があらかじめ路線価に反映されている可能性も考えなければいけません。
以下で詳しく見ていきましょう。
2-1.高低差のある土地とは
高低差のある土地とは、路面との垂直距離が大きく、かつ周辺宅地との高低差も著しい土地を指します。
とはいっても、路面との垂直距離について、メートル単位での明確な基準はありません。
国税不服審判所における過去の判例では、平均高低差1.2メートルで認められたケースもあれば、平均高低差3メートル以上で認められなかったケースもあります。
どちらかといえば周辺、具体的には同一路線価区域内の他土地との高低差が重要になってくるでしょう。(こちらも明確な基準はなし)
また、高低差のある土地として相続税の減額を受けるには、何よりもその高低差が、土地の利用価値低下につながっていなければなりません。
そのため、通気性や眺望を良くするための盛土など、利用価値を高める目的で人為的に高低差を設けたと認められる場合も、やはり減額の対象からは外れます。
このように、土地の審査には曖昧な要素が多いですから、土地相続の際は早いうちに相続専門の税理士事務所を頼るよう心がけてください。
2-2.路線価に反映されている可能性がある場合に注意!
一般的な土地の相続税評価額は、路線価に土地面積を乗ずることで求められます。
路線価とは、道路に面した土地の標準的な価額を、㎡単位で定めたものです。
宅地の多くに路面との高低差が見られる場合、その地域の路線価には、あらかじめ減額補正が掛けられている可能性があります。
路線価がすでに補正されている場合、本記事で紹介している個別の控除は受けられません。
税務署は路線価の設定方法を一切公表していないため、補正の有無は周辺住宅の立地などから推測する必要があります。
不動産の知識に明るくない方は、土地評価に対応した税理士事務所を選んでおくと安心でしょう。
2-3.高低差がある場合の補正率
相続する土地のうち、補正対象と認められる区間に対しては、原則10%の補正率が適用されます。
補正の流れとしては、まず高低差を考慮しない単純な路線価方式で、仮の相続税評価額Aを求めましょう。
次に、対象区間の相続税評価額Aに補正率10%を乗算し、その値をAから引いてください。
<例:路線価15万円、土地面積200㎡、うち60%が補正対象区間の場合>
相続税評価額=(15×200)-{(15×200×0.6)×0.1}=2,820万円
なお、路線価にあらかじめ補正がかかっていると思われる場合でも、評価額を減額できる可能性はあります。
その方法は、不動産鑑定士などの専門家に、鑑定評価書を作ってもらうというものです。
斜面に位置する宅地は、利用価値が低いことに加え、擁壁を造成する手間もかかります。
ゆえに、土地の取引価格が、補正済みの路線価以上に安くなっているケースも少なくありません。
そういう場合は路線価ではなく、実際の取引価格に基づく評価額計算を認められる可能性があります。
2-4.二方向以上の道路に接している場合
交差点の角など、二方向以上の道路に接している土地の場合、「正面路線」を定めたうえで相続税評価額を計算する必要があります。
正面路線とは、その土地に隣接する全ての道路のうち、路線価に奥行価格補正率を掛けた金額が最も高い路線です。
また、二方向以上の道路に接する土地の相続税評価額は、正面以外の路線も加味したうえで求める必要があります。
具体的には以下の通りです。
相続税評価額={(正面路線価×正面から見た奥行価格補正率)+(側方・二方路線価×他方から見た奥行価格補正率×路線影響加算率)}×土地面積
普通住宅地区における路線影響加算率は、一本道の屈折部(準角地)で0.02、それ以外の路線で0.03となっています。
率で見ると大した数字ではないものの、土地の評価額が基本1,000万円単位であることを考えれば、それなりの負担増は覚悟しなければいけません。
しかし、二方向以上の道路のいずれかで、土地との高低差が認められる場合は話が変わります。
2-4.1. 正面路線と土地との間に高低差がある場合
正面路線と土地との間に高低差がある場合、その正面路線は、土地に隣接する道路として扱われない可能性が出てきます。
代わりに、もう一方の道路を正面路線と定義し、かつ路線影響加算率を無視した上で評価額計算が行われます。
<例:正面路線価50万円、側面路線価20万円、地積150㎡の普通住宅用角地>
高低差なし:{50万円+(20万円×0.03)}×150=7,590万円
高低差あり:20万円×150=3,000万円
正面路線に高低差がある場合、より安い方の路線価を採用できるため、上記のように評価額が1,000万円単位で減額されることも珍しくありません。
2-4.2. 正面路線以外と土地との間に高低差がある場合
正面以外の路線と土地の間に高低差がある場合は、単純に正面路線のみを基準とした評価額計算を行う可能性が出てきます。
先ほどの例に当てはめると、相続税評価額は50万円×150=7,500万円となり、高低差がない場合に比べて100万円弱しか減額されません。
このように、土地に面する道路のうち、どこが正面路線に該当するかで、相続税評価額は大きく変わってきます。
正面路線を正確に判断するためにも、土地相続の際は実績豊富な税理士事務所に相談しておきましょう。
3.がけ地等を有する宅地
がけ下や坂道など、傾斜上に広がる土地は、「がけ地等を有する宅地」として相続税評価額の減額対象になる可能性があります。
しかし、単純な高低差に比べて、適用条件や補正の流れが複雑な点に注意が必要です。
以下で詳しく見ていきましょう。
3-1.がけ地等を有する宅地とは
がけ地等を有する宅地とは、厳密には30度以上の傾斜がある土地のことです。
斜面上の土地に住宅を建てる場合、ブロックの積み上げをはじめとした造成作業に余分な費用がかかるため、土地自体の価値は平地よりも低く見積もられます。
ゆえに、がけ地等を有する宅地では、「がけ地補正」の適用による相続税評価額の減額が可能となっているのです。
ただ、肝心の補正率に関しては、がけ地の割合や斜面の方位によって細かく分かれています。
詳細は以下より紹介していきますが、実際にがけ地を相続する際は決して自己計算せず、不動産鑑定のプロを頼るよう心がけてください。
3-2.がけ地補正率
がけ地等を有する宅地の相続税評価額は、路線価×土地面積×がけ地補正率で求められます。
がけ地補正率の基準となるのは、土地面積に対するがけ地の割合、および傾斜部の方角です。
方角に関しては日当たりが基準で、補正率が最も高いのは南、低いのは北となっています。
例えばがけ地の割合が20%で、斜面全てが西を向いている場合、がけ地補正率は0.90です。
つまりは、単純な路線価方式で求めるのに比べ、評価額を10%減額できます。
複数の方角に斜面がある場合は、斜面ごとにがけ地補正率を当てはめたのち、加重平均計算にて最終的な補正率を求めましょう。
<例:総面積200㎡、南方がけ地50㎡、西方がけ地30㎡の場合>
がけ地割合=(50+30)÷200=0.40
南方がけ地補正率=0.85
西方がけ地補正率=0.82
平均がけ地補正率=(0.85×50+0.82×30)÷80=約0.84
3-3.がけ地の割合と方位
がけ地の割合、および方位を基準とした、具体的ながけ地補正率の分類は以下の通りです。
がけ地割合 | 南 | 東 | 西 | 北 |
---|---|---|---|---|
0.10以上 | 0.96 | 0.95 | 0.94 | 0.93 |
0.20以上 | 0.92 | 0.91 | 0.90 | 0.88 |
0.30以上 | 0.88 | 0.87 | 0.86 | 0.83 |
0.40以上 | 0.85 | 0.84 | 0.82 | 0.78 |
0.50以上 | 0.82 | 0.81 | 0.78 | 0.73 |
0.60以上 | 0.79 | 0.77 | 0.74 | 0.68 |
0.70以上 | 0.76 | 0.74 | 0.70 | 0.63 |
0.80以上 | 0.73 | 0.70 | 0.66 | 0.58 |
0.90以上 | 0.70 | 0.65 | 0.60 | 0.53 |
なお中間方位、例えば南東の場合は、南方と東方それぞれの補正率の平均値が採用されます。
3-4.山林や雑種地や農地の場合
がけ地等を有する宅地の特例はあくまでも宅地が対象であり、山林や農地、雑種地(資材置場等)などには適用されません。
これらの土地には、宅地比準方式という独自の評価方法が用いられます。
まずは、宅地と仮定した場合の路線価を求めたのち、同仮定に基づく宅地造成費を財産評価基準書より確認しましょう。
以上を元にした、宅地比準方式における相続税評価額の計算式は以下の通りです。
相続税評価額=(仮定路線価-宅地造成費)×土地面積
以上より山林や雑種地などは、宅地造成費を差し引ける分、宅地よりも評価額を抑えられることが分かります。
傾斜に関しても、3度超で宅地造成費に反映されるため、宅地の特例よりも適用しやすくなっています。
4.実際の取引価格と乖離している場合は
高低差に基づく宅地の評価では、最大10%までしか補正が適用されません。
しかし実際には、高低差による価値の下落が10%で済まない土地も数多く存在します。
がけ地の場合は最大で50%近く補正できるものの、そこまでがけ地の割合が多いと今度は宅地造成費が凄まじいことになるため、やはり市場価値は補正分以下まで下がり得ます。
適正な土地評価を行うには、路線価等に基づく理論上の評価額だけでなく、周辺宅地の実際の取引価格も調べることが重要といえるでしょう。
実際の取引価格を相続税評価額に反映するには、専門家の作成した鑑定評価書が必要不可欠ですから、高低差や傾斜のある土地を相続する際はぜひとも税理士事務所を頼ってください。
5.まとめ
以上、高低差のある土地やがけ地等を有する土地について、相続税評価における概要を紹介しました。
本記事をご覧の方の中には、既に土地の相続税申告を終え、その際特に補正を利用しなかったという方もいることでしょう。
しかし、相続税の申告内容は、被相続人が亡くなった日から5年10ヶ月以内であれば修正可能です。
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