がけ地や高低差のある土地は、相続税評価額の減額対象!減額されるルールについて詳しく解説
土地の評価額がいくらになるかは、相続などの際に非常に重要です。ただ、土地の形は千差万別で、評価方法には多くの補正が設けられています。基本的には「利用しやすい土地かどうか」が基準になっているのですが、利用しにくい土地として「傾斜のある土地」でも評価額を減らす補正が可能です。
今回は、傾斜のある土地の評価方法について詳しく解説します。
1.高低差のある土地やがけ地等を有する宅地は相続税評価額を下げられる
周囲の土地と比べて高低差がある土地は、傾斜がない平坦な土地と比較すると価値が低く、実際に取引される価格も安くなります。そのままでは有効利用するのが難しく、利用できるように造成するのに追加で費用がかかるなどの影響があるためです。
こういった土地を宅地として評価する場合、相続税評価額を減額できる特例が設けられています。
傾斜のある土地は、「高低差のある土地」と「がけ地を有する宅地」の2種類に分けられており、それぞれで補正のルールが異なり、減額される割合も異なります。
2.高低差のある土地
高低差のある土地は、利用価値が著しく低下している宅地として、評価額の減額補正ができます。ただし、路線価が設定されている場合や二方向以上に面している場合は、少し複雑です。
2-1.高低差のある土地とは
国税庁では、「道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近にある宅地と比べて著しく高低差のあるもの」を、利用価値が著しく低下している宅地と認め、評価額の減額補正ができるようにしています。
周辺の土地よりも高低差がある宅地が対象となるのですが、高低差についての明確な基準は設けられていません。過去に1.2メートル程度の高低差があったケースで納税者の主張が認められた判例があることから、1~2メートル程度の高低差があれば、減額が受けられる可能性があると推測できます。
しかし、高低差がなく出入口として利用できるような場所があるような場合は、評価減が認められません。高低差が3メートルほどある土地で減額が認められなかったケースもあるため、土地の個別の状況によって判断が変わってくる点に注意しましょう。
2-2.路線価に反映されている可能性がある場合に注意!
一部の土地には「路線価」が定められています。路線価とは「市街地を形成する地域の路線(不特定多数が通行する道路)に面している宅地の1㎡あたりの評価額」で、路線価のある路線に面する土地の評価は、路線価を基準として求めることとされています。
この路線価の中には、高低差の補正がすでに含まれている場合があります。その場合はもちろん減額補正をすることはできず、そのまま路線価で評価することになります。
路線価に高低差の補正が反映されているかどうかは、周辺の土地にも高低差があるか、周囲の高低差がない場所の路線価と比較して差があるかなどの情報をもとに判断することができます。
2-3.高低差がある場合の補正率
高低差により著しい価値の低下が認められる場合、評価額を10%減らすことができます。 10%減が適用できるケースには、高低差がある場合以外に、「地盤に甚だしい凹凸がある宅地」や「振動の甚だしい宅地」なども挙げられています。こういった要因が複数存在する場合には、20%の評価減を行うことができます。
2-4.二方向以上の道路に接している場合
二方向以上の道路に接している土地とは、いわゆる「角地」などが挙げられます。二方向以上の道路に接している土地は、利用価値が高い土地として評価されます。
評価にあたっては、どの道路を土地の正面とするか判断し、その正面路線の路線価をもとにして相続税評価額を計算します。正面路線は路線価が高い方となり、玄関など「家の正面」として利用している側の道路が正面路線とされるわけではありません。
これに、利用価値が高くなっている分の加算として、二方路線影響加算または側方路線影響加算が適用されます。
二方向以上の道路に接している土地に高低差がある場合、正面路線とそれ以外の道路のどちらに高低差があるのかで評価方法が異なります。
2-4-1.路線価が高い方の路線と土地との間に高低差がある場合
路線価が高い方の正面路線と土地の間に高低差がある場合は、それを正面路線とせず、他の路線を正面路線として評価します。また、二方路線影響加算などは適用されません。
【土地の路線価と面積】
- 路線Aの路線価:200千円/㎡(高低差あり)
- 路線Bの路線価:150千円/㎡(高低差なし)
- 土地の面積:200㎡
路線Bを正面路線として計算する
土地の相続税評価額:150千円/㎡×200㎡=3,000万円(二方路線影響加算等の適用なし)
2-4-2.路線価が高い方の路線以外と土地との間に高低差がある場合
土地との間に高低差があるのが路線価の高い方の路線でない場合は、路線価が高い方の路線を正面路線とします。ただし、高低差がある側の利用価値が低いため、二方向以上の道路に接しているメリットがないと判断され、二方路線影響加算や側方路線影響加算の適用はありません。
【土地の路線価と面積】
- 路線Aの路線価:200千円/㎡(高低差なし)
- 路線Bの路線価:150千円/㎡(高低差あり)
- 土地の面積:200㎡
路線Aを正面路線として計算する
土地の相続税評価額:200千円/㎡×200㎡=4,000万円(二方路線影響加算等の適用なし)
3.がけ地等を有する宅地
傾斜のある土地の中でも非常に急な斜面がある宅地の場合は、「がけ地」として、高低差のある土地とは異なる評価がなされます。がけ地の評価は、宅地に含まれるがけ地の「割合」やがけ地のある「方角」によって異なります。
3-1.がけ地等を有する宅地とは
がけ地と聞くと直角に近い断崖絶壁を思い浮かべてしまいがちですが、土地の評価におけるがけ地は、「30度以上の角度の斜面がある宅地」が対象となります。
30度もの角度がある土地をそのまま宅地として利用することはできません。利用する場合には、平坦にするために造成したり、擁壁や階段を作る工事などが必要となります。そういった点を考慮して、評価額の減額が行われます。なお、がけの高さについての規定はありません。
3-2.がけ地補正率
がけ地等を有する宅地の評価は、相続税評価額に「がけ地補正率」をかけて計算することができます。しかし、がけ地が土地全体に占める割合やがけ地のある方角によって、宅地としての利用価値が少しずつ変わってきます。その点を考慮して、がけ地の割合や方位に応じて、がけ地補正率は0.53から0.96の範囲(47%~4%の減額率)で細かく定められています。
3-3.がけ地の割合と方位
がけ地補正率を確認するためには、次の2つの手順を行います。
①がけ地の割合を計算する
「がけ地の面積÷土地の総面積」で、がけ地の割合を計算します。
【総面積が300㎡で、がけ地にあたる部分の面積が60㎡の場合】
60㎡÷300㎡=0.2
②がけ地の方位を確認する
がけ地の方角によって補正率が変わるため、がけ地の方位を確認します。
南、東、西、北の順で、補正率が高くなっています。
③がけ地の割合と方位をもとに、がけ地補正率を調べる
がけ地補正率は、下記の表のように定められています。
がけ地の割合 | 南 | 東 | 西 | 北 |
---|---|---|---|---|
0.1以上 | 0.96 | 0.95 | 0.94 | 0.93 |
0.2以上 | 0.92 | 0.91 | 0.90 | 0.88 |
0.3以上 | 0.88 | 0.87 | 0.86 | 0.83 |
0.4以上 | 0.85 | 0.84 | 0.82 | 0.78 |
0.5以上 | 0.82 | 0.81 | 0.78 | 0.73 |
0.6以上 | 0.79 | 0.77 | 0.74 | 0.68 |
0.7以上 | 0.76 | 0.74 | 0.70 | 0.63 |
0.8以上 | 0.73 | 0.70 | 0.66 | 0.58 |
0.9以上 | 0.70 | 0.65 | 0.60 | 0.53 |
【土地の概要】
路線価:200千円/㎡
総面積:300㎡
がけ地にあたる部分の面積60㎡(がけ地の割合は0.2)
がけ地のある方位:北
がけ地補正率は0.88となる
土地の相続税評価額:200千円/㎡×300㎡×0.88=5,280万円
がけ地補正がない場合と比較して、相続税評価額が720万円低くなる
3-4.山林、雑種地、農地の場合
がけ地での相続税評価額の減額が適用されるのは宅地のみです。あくまで居住のための土地として活用しにくいことを考慮した措置だと言えます。
山林、雑種地、農地などでは急斜面があるのは珍しくありませんが、それらの相続税評価額を計算する際、減額の対象とはなりません。市街地にある山林や畑などの場合は、宅地に転用した場合の造成費用を減額して評価することはできますが、これとがけ地補正率による減額を重複適用することはできません。
また、一般的に山林、雑種地、農地は、宅地と比較して、土地としての評価が低くなっています。宅地としてではなくそのまま評価した方が、相続税評価額が低くなることが多いでしょう。
4.実際の取引価格と乖離している場合は
高低差のある土地の減額補正やがけ地補正を適用して評価したとしても、実際に取引される金額と比較して、相続税評価額が高くなってしまうケースも少なくありません。補正割合は、さまざまなケースをもとにして作られた基準にすぎないため、その基準よりも減額しなければ適正な評価額にならない土地もたくさんあるのです。
そういった場合には、路線価方式や倍率方式によらない方法で評価額を算定することも認められています。
しかし、自分が路線価等による評価が不適当だと感じただけで、他の方法での算定が許されるわけではありません。それが不適当である客観的な根拠を示さなければなりません。例えば、周囲の実際の取引価格や、不動産鑑定士に土地評価を鑑定してもらった鑑定書を提出するなどして、路線価等によらない評価をしても問題ないことを証明しなければなりません。
ただ、原則とは異なる申告は、不正な申告が発生しやすいこともあり、調査対象になりやすいのも事実です。路線価等によらない評価で相続等の申告を行う場合は、否認される可能性や、税務調査を受ける可能性が高くなってしまうので、相続や不動産に強い税理士などの専門家のサポートを受けながら進めるのが望ましいでしょう。
5.まとめ
宅地の中でも「高低差のある土地」や「がけ地が含まれている宅地」の場合は、有効利用するのが難しい土地として、相続税評価額の減額補正を受けることができます。減額されるのは、高低差のある土地で10%、がけ地が含まれている宅地では最大47%です。
相続財産の中でも不動産は大きな割合を占めることが多いため、少しの減額でも相続税額が大きく変わってきます。だからこそ、土地を正確かつ適正に評価して、無駄な税金を支払ってしまわないようにしておきたいところです。
しかし、ここまで説明してきたとおり、高低差のある土地やがけ地が含まれている宅地の評価方法は複雑で、誰でも簡単に計算できるものではありません。さらに、実勢価格と大きく介した評価額の場合に路線価方式などを適用しない申告をする場合は、税務調査が入りやすいこともあるため、より細心の注意が必要です。
そのため、傾斜のある土地を保有している場合は、相続や不動産に詳しい税理士などの専門家の力を借りて、適切な評価額で正しい申告ができるようにすることをおすすめします。
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