タンス預金のメリットは5つ!相続税対策には使えないため注意が必要

「タンス預金する人が増えていると聞くけれど、銀行に預けても低金利だし、もしメリットがあるのなら自分もやってみようか……」

 

あなた今、このようなことを考えていませんか?

昨今は低金利の時代ですので、もしタンス預金に多くのメリットがあるのであればしておきたいですよね。

タンス預金のメリットは複数ありますが、一番のメリットは「非常時に現金が必要な時に困らないですむ」ことです。

ただし、必要以上のタンス預金はリスクが多く、相続時に申告しないと追加で課税されるなど、不利益を被ることにもなりかねませんので、やめておいたほうがいいでしょう。

この記事では、タンス預金のメリットだけでなくデメリットも共にお伝えし、タンス預金をしたほうが良いのか・悪いのか、またそれぞれの理由にまで踏み込んで解説していきます。

1.タンス預金をするメリット5点

まとまった額の現金を金融機関に預けるのではなく家に保管するタンス預金は、どのようなメリットがあるのでしょうか?
以下、順に見ていきましょう。

1-1.いつでも好きな時にお金が使える

自宅に現金を保管しておけば、いつでも必要に応じて使うことができますし、営業時間を気にしながら銀行やATMに出向く必要もなければ、ATM利用手数料がかからないなどのメリットがあります。

特に、家族がケガや病気をした場合、簡単に預金を下ろしに出向くことができないとき、手元にまとまった額の現金があれば、手術代・入院費用など当面の支払いが安心してできます。

1-2.銀行の破綻などから資産を守ることができる

タンス預金は、銀行の破綻などからご自分の資産を守ることができます。

銀行にはペイオフという制度があるのですが、その制度では1,000万円を超えるお金を預けている銀行が破綻した場合、1,000万円を超えた分の預金は保証の対象にはならない可能性があります。

よって現金資産が1,000万円を超える場合は、1,000万円を超えた分についてはタンス預金にしておけば、銀行に預けてそこが破綻することで失うかもしれないあなたの資産を守ることができます。

ただし、仮に1億円の資産がある場合、10の銀行に1,000万円ずつ分散して預金すれば合計で「1億円+利息」が保護される計算になりますので、タンス預金にしなくても資産を守ることは可能です。

ペイオフとは
破綻した金融機関に口座を持つ預金者一人につき1,000万円までの元本と利息は保証するが、それを超える分については、破綻した金融機関の財務状況に応じて弁済金・配当金を支払う制度。

1-3.相続発生時に口座が凍結されても困らないですむ

被相続人が亡くなって相続が始まると、遺産分割協議が終わるまで故人の預金口座が凍結されてしまい、お金を引き出すことができなくなります。家族が亡くなった直後は葬儀費用などで何かとお金が必要になるので、手元にまとまった額の現金があると困らないですみます。

1-4.国に個人の資産を把握されない

2018年から預金口座にマイナンバーを登録できるようになりました。現在のところ登録は任意ですが、2021年をめどに義務化が検討されています。登録が義務化されれば、国は金融機関に預金している個人の資産保有額を容易に把握することが可能になります。

しかし、タンス預金はマイナンバーに紐づけられないので、国に個人の資産というプライバシーを知られたくない方にとっては、メリットといえるでしょう。

1-5.家族に知られずに貯蓄ができる

タンス預金は秘匿性が高い貯蓄方法です。

銀行に預金したり、有価証券に投資をしたりすると、調べればすぐに資産総額を割り出されてしまいます。

しかし、一部がタンス預金であれば、資産総額を把握するのはむずかしくなります。

「へそくり」はタンス預金の一種ですが、これは家族にも知られないような場所に隠すという意味で、タンス預金よりも秘匿性が高い方法であるといえます。

家族にすら知られることなく、自分の好きなように使える自己資金を確保できる点はメリットといえるでしょう。

2.タンス預金をするデメリット4点

ここからはタンス預金のリスクデメリットをご紹介します。

2-1.災害等で消失するリスクがある

タンス預金の場合、現金が、火災や地震、洪水などの災害で消失するリスクがあります。

火災保険や地震保険では、現金は保障の対象外なため、燃えてしまったり洪水に流されてしまったりしたら、それでおしまいです。

一方、銀行に預けておけば、仮に災害の被害にあったとしても、あなたの預金は守られますし、通帳が燃えたとしても再発行してもらうことが可能です。

2-2.盗難にあうリスクがある

空き巣や強盗などによる盗難というリスクもあります。

その上、犯人に遭遇して襲われてケガなどする危険性もあります。

それでもタンス預金をしたいという方は、盗難防止のために、盗もうとしてもなかなか運び出せないような重量の金庫を用意する必要があります。簡単に壊せず、運び出せない金庫に現金を保管することで、タンス預金が盗難にあう可能性を低くすることができます。

2-3.紛失するリスクがある

日頃から現金の置き場所を確認している場合は忘れにくいものですが、タンス預金を始めてから長時間たってしまうと、置いた(又は始めた)本人も現金を置いた場所を忘れてしまい、自分でも気づかないうちに現金を捨ててしまったりすることがあります。

また、タンス預金を家族にも隠している場合、本人が死亡した時に、遺族がそれを知らずに隠し場所ごと処分してしまうというリスクもあります。

タンス預金の多くは秘密にしているケースが多いため、見つけられずに捨てられてしまい、せっかく貯めたお金が消えてしまうというリスクは常に伴うことになります。

2-4.遺産相続トラブルの火種になる

タンス預金が遺産相続のトラブルを招くケースがあります。

タンス預金はその存在を証明する証拠がないことが多く、故人の近親者などが無断で持ち去ったとしても、「元々そんなものはなかった」と主張されてしまえば、それで他の相続人は引き下がらざるを得ません。そのため、相続開始後は故人の身の回りの現金等が持ち去られないように十分注意する必要があります。

もし故人が残したタンス預金が何者かによって持ち去られた場合、通常タンス預金の存在は、故人の家族など限られた近親者しか知らないことが多いため、遺族はそのありかをめぐって疑心暗鬼になり、遺産分割協議がうまく進まないという事態に発展するケースもあります。

また、遺産相続手続きが終わった後にタンス預金が発見されるケースもあります。遺産分割協議と相続税の申告も終わったころ、まだ手つかずだった遺品整理をしていたら、押し入れの奥から大量の現金の束が見つかったという場合などがそうです。そうなると、遺産分割はやり直し、相続税も修正申告が必要になったりと、大きな手間がかかってきます。

3.タンス預金は相続税対策に使うべきではない

タンス預金は本来、相続税の課税対象となるため申告しなくてはなりません。

相続税対策としてタンス預金の存在を税務署に隠しても、それは税務調査によってばれる可能性が高いので、やめておいたほうがいいでしょう。

ばれた場合は、重加算税や延滞税など多額の税金が課税される可能性があります。

税務署によるタンス預金の把握方法は以下のとおりです。

3-1.被相続人だけでなくその家族の口座も確認

税務署は銀行や証券会社へ照会をかけ、残高証明や口座の出入金をチェックして金融資産を調べます。その際、被相続人の口座だけでなく、家族の口座もチェックされます。

したがって、被相続人が生前に隠していたタンス預金への相続税課税を避けることを目的に、家族の預金口座に預け替えたとしても、調査によってばれてしまいます。

3-2.口座の過去の出金記録をさかのぼって調査

税務署は過去何年もさかのぼって口座の出金記録を調査します。

そのため、仮に被相続人が何十年も前に引き出した記録がある場合、それがいかに遠い過去のことであっても、その使用目的を証明することができなければ、隠し財産という疑いをかけられることになります。

タンス預金の疑いがかかるのは100万円以上
タンス預金の疑いがかけられる出金額は100万円以上です。
引き出したお金の使い道をしっかりと説明することができれば問題ないのですが、それができずにタンス預金をしているという疑いをかけられた場合は、税務署が実地調査(家宅捜索)を行うことになります。
この実地調査によってタンス預金の存在が明るみに出るケースが多いようです。

4.タンス預金をするのであれば数十万円程度にしておきましょう

被相続人が亡くなって預金口座が凍結されたり、自然災害が発生した時などといった非常時には、現金が手元にあるとやはり役に立つものです。

そのため、緊急時に備えて数十万円程度の現金を金庫に保管しておくことは良いことかもしれません。

しかし、いままで見てきたように、手元に多額の現金を置いておくことはリスクが多いこともまた事実です。

また、相続時にタンス預金の存在を隠しても、それが高額であるほど税務調査でばれる可能性は高いので、必要以上の現金は自宅に保管せず、金融機関に預け、相続人の方は相続時にはタンス預金も申告するようにしましょう。

5. まとめ

最後に、タンス預金のメリットとデメリットを振り返っておきましょう。

~タンス預金をするメリット~5点

① いつでも好きな時にお金が引き出せる
② 銀行の破産などから資産を守ることができる
③ 相続発生時に口座が凍結されても困らないですむ
④ 国に個人の資産を把握されない
⑤ 家族に知られずに貯蓄ができる

~タンス預金をするデメリット~4点

① 災害等で消失するリスクがある
② 盗難にあうリスクがある
③ 紛失するリスクがある
④ 遺産相続トラブルの火種になる

結論的にいえば、タンス預金のメリットは「ある程度の現金を自宅に保管しておけば非常時に困らないですむ」ということになります。

ただし、必要以上のタンス預金はリスクが多く、また相続時に申告しないと追加で課税されるなど、不利益を被ることにもなりかねませんので、やめておいたほうがいいでしょう。

総合的に見ればメリットよりもデメリットのほうが大きいタンス預金。 大切なお金は、適切な方法で管理したほうが精神衛生上もいいのではないでしょうか。

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