事業承継による相続税の納税猶予
事業承継税制について
事業承継税制は中小企業の円滑な事業承継及び雇用確保、地域経済活性化の制度のための特例で、「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」というのが正式な名称です。
この納税猶予制度は後継人の取得した非上場株式等に係る相続税又は贈与税の負担を減らすことを入口として、最終的には地域の活性化を促そうというものです。
●事業承継税制のイメージ
後継者の税負担の減少⇒後継者へ議決権を集中⇒安定的、計画的な事業承継⇒経営の安定⇒雇用の確保⇒地域経済活性化
事業承継税制の限度
要件の一つに、議決権の保有要件があります。
基本的には後継者及び後継者と特別の関係がある者(親族等)で総議決権数の50%超の議決権数を保有することが要件となっていますが、これは株主総会の普通決議を単独で成立させられる要件とも重なります。
つまり、安定的な事業承継のために後継者とその周辺の人が一定以上の議決権を保有しなければならないということになります。
ただし、仮に代表者だった人から会社の議決権の100%を取得したとしても、この制度は、取得した非上場株式の全てについて納税猶予できるものではありません。具体的には、議決権株式等の2/3に達するまでの部分がこの特例の限度になります(計算上、納税猶予額は2/3の80%となります)。
議決権2/3以上という数字は株主総会の特別決議を単独で成立させることができるという権限に値します。会社の支配権を有することとなる2/3以上の議決権を取得する場合、事業承継税制では、2/3に達するまでの部分を超える議決権については、安定的な事業承継に影響を与えないことから納税猶予の適用外としていると考えられます。
どうせなら全ての非上場株式等に対して、納税猶予を適用してもらえれば良いのですが、そこまでは甘くないようですね。
事業承継税制のデメリット
この制度は適用する場合、様々な要件をクリアしなければなりません(要件については他の記事を参照下さい)。
さらに要件をクリアした後も引き続き一定の要件を満たし続けなければなりません。適用後の要件の一つに、雇用の要件があります。この税制では地域活性化のために雇用を確保するという目的がありました。
具体的には申告期限後5年間平均して、相続時の雇用の8割維持しなければなりません。これは地域にとっては嬉しい制度かもしれませんが、後継者にとってはプレッシャーを感じる要件ではないでしょうか。
他の納税猶予同様、様々な要件が付されています。一つ一つの要件は細かいですが、制度の趣旨を捉えると要件には意味があるのだとうなずけます。
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