相続税の納税猶予
相続税の納税猶予について
相続税の納税猶予と聞くと「農地」を思い浮かべる方が多いかもしれません。確かに国税庁が発表している統計情報によると平成27年度の相続税において、納税の猶予を受けた税額は総額で60,012百万円。そのうち農地等納税猶予額は43,969百万円を占め、全体の約73%を占めています。
相続税の納税猶予には、実はこの農地等納税猶予の他いくつか種類があり、以下その種類と概要をご案内いたします。
山林を相続した場合の納税猶予の特例
【制度の趣旨】
日本の森林・林業の再生を目的とした政策を支援する観点から、平成24年度税制改正において森林法による森林経営計画に基づく施業の継続を条件とし、施業の集約化及び路網の整備を行う山林について相続税の納税を猶予する特例が創設されました。
【特例の概要】
森林法に基づく森林経営計画の認定を受け、その計画に従って山林経営を行ってきた被相続人の所有する山林の全てを相続人のうちの一人(以下「後継者」という。)が相続又は遺贈により取得し、引き続きその計画に従って山林経営を行う場合には、一定の要件の下に、その後継者が納付すべき相続税のうち、その山林の価額の80%に対応する相続税の納税を猶予する(措法70の6の4)。
ちなみに国税庁が発表している統計情報によると平成27年度においてこの特例を適用し猶予された税額は0円だったようです。
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医療継続に係る納税猶予の特例
【制度の趣旨】
この特例は、地域において必要とされる医療を確保するため、経過措置医療法人(持分の定めのある医療法人)の新医療法人(持分の定めのない医療法人)への移行が促進されるよう、平成26年に設けられたものです。
【特例の概要】
個人(相続人等)が経過措置医療法人の持分を有していた他の個人(被相続人)から相続又は遺贈によりその持分を取得した場合において、その経過措置医療法人が認定医療法人であるときは、相続人等が納付すべき相続税の額うち、その持分の価額に対応する相続税について、認定移行計画に記載された移行期限(厚生労働大臣の認定の日から3年以内)まで、その納税を猶予する(措法70条の7の8①)。
ここで、「認定医療法人」とは、平成26年10月1日から起算して3年を経過する日までの間に、持分の定めのない医療法人に移行する計画を作成し、その計画について厚生労働大臣の認定を受けた医療法人をいいます。
この特例は平成26年創設とまだ日が浅く、これから適用の案件が増えるのではないでしょうか。
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農地等に対する相続税の納税猶予の特例
【制度の趣旨】
この特例は、昭和50年に、宅地化期待益の影響を受けた農地の価額に基づく相続税の課税による農地の細分化の防止を税制面から支援する観点から設けられたものです。相続財産に含まれる農地の価額(時価)が、宅地化の進展により、将来宅地として売却すれば高く売れるという潜在的な期待益部分を含んだ価額となっており、多額の相続税課税が行われた場合は、農地を処分して納税せざるを得ない状況も考えられることから、農地を相続し、農業を継続する相続人について、農地の価額のうち宅地化期待益部分に対応する相続税額について納税を猶予する制度となっています。
【制度の概要】
農業を営んでいた被相続人から相続又は遺贈により、一定の農地、採草放牧地及び準農地を取得した相続人が、これらの農地等を引き続き農業の用に供していく場合には、これらの農地等の価額のうち農業投資価額を超える部分に対応する相続税について、一定要件の下に、納税を猶予する(措法70の6①、措令40の7)。
冒頭に記載の通り、相続税の納税猶予と言えば、という特例です。内容も別ページにて深く掘り下げているのでご参照ください。
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非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例
【制度の趣旨】
この特例は、中小企業の事業承継の円滑化を通じた雇用の確保や地域経済活力の維持を図る観点から、平成21年に設けられたものです。
この記事では相続税の納税猶予の特例の話なので余談にはなってしまいますが、非上場株式等については贈与税の納税猶予の特例との関係が重要です。
日本の中小企業は経営者とその同族関係者で株式の大半を所有している会社が多数を占めているのが実態であり、こうした中小企業については経営者の死亡に伴う事業の承継に際しては、経営資源としての議決権株式の分散を防止し、安定的な経営の承継が重要となります。
しかし昨今は、相続時ではなく、相続開始以前に事業承継に取り組むことが重要視されてきており、この贈与税の納税猶予の特例も経営の完全な承継について特例措置を講じたものという位置づけとなっています。
さらにこの二つの特例の関係も、贈与税の納税猶予の適用を受けた非上場株式等は、贈与者の死亡の日まで適用を受けていたものについてはその贈与税額が免除され、さらに相続税の納税猶予の特例を受けることができるという仕組みとなっており、両方を適用することにより相続開始前に「経営権の承継」を円滑に行い、また次の世代へと承継していくことが可能になります。
【制度の概要】
後継者である相続人等が、被相続人(先代経営者)からの相続又は遺贈により、都道府県知事の認定を受ける非上場会社の株式等を取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税のうち、その株式等(一定の部分に限る。)に係る課税価格の80%に対応する相続税について、後継者である相続人等の死亡の日まで、納税を猶予する(措法70条の7の2①)。
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相続税の納税猶予といっても上にあるようにひとつではありません。
どれも日本の事業を守っていくために創設され、利用されていることが伝わったかと思います。
これらの特例については他ページでさらに詳しくご紹介もしております。また特例の適用については当法人へお気軽にお問い合わせください。
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