株式を相続したら税金はいくらかかる?評価方式や計算方法を徹底解説

遺産を相続した際は、財産の種類に応じた様々な計算方法で相続税を求め、税務署に申告しなければいけません。 中でも多くの相続人を悩ませるのが、株式に関する申告です。
株式の相続税評価額は、上場の有無によって計算方法が異なるほか、非上場の場合はさらに3種類の評価方式に分かれます。
それに加え、相続前後に株式の売却が行われる場合、相続税とはまた別の申告作業が必要です。
そこで今回は、相続税の評価方式や各方式における計算方法、および株式の売却に関する注意点を解説していきます。
将来的ないし近日中に株式を相続する予定の方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

1.株式は相続税の対象に

相続した株式は、預貯金や不動産などと同じく、相続税の対象です。
所定の計算方法によって、その株式の価値を現金換算してから、その金額を相続税評価額として申告する必要があります。
ただし、株式の分を単体で申告・納税するわけではありません。
相続税の申告・納税は、相続した全遺産の合計評価額をもとに一括で行れるものです。
この合計評価額が、被相続人の借金+法に定める基礎控除額を下回る場合、株式を含めた全ての遺産の相続税が免除されます。
基礎控除額に関しては、相続人が一人の場合で3,600万円、以降は1人増えるたびに600万円ずつ増えていく仕組みです。
例えば相続人が3人で、被相続人に200万円の借金が残っていた場合、5,000万円までは相続税の対象になりません。
相続税に関しては基礎控除以外にも、配偶者控除や小規模宅地等の特例といった様々な控除がありますから、少しでも節税したい方は一度税理士に相談してみましょう。

 

2.上場株式の相続税評価

株式は上場と非上場の2種類に大別され、相続税評価額の求め方はそれぞれ異なります。
まずは上場株式について、非上場株式との違いや、具体的な評価方法を解説します。

2-1.上場株式と非上場株の違い

上場とは、ある株式が証券取引所のラインナップに追加されることを指す単語です。
証券取引所で扱われる上場株式は、誰でも手軽に売買できます。
一方で非上場株式、通称「未公開株」は、個人での取引を簡単には行えません。
以下で詳しく見ていきましょう。

2-1-1.上場株式

上場株式とは、全国4か所の証券取引所を通じて、誰でも手軽に売買可能な有価証券です。
株式を購入できる人が増えれば、それだけ企業に多くの資金が集まり、設備投資や人材育成などを進めやすくなります。
また、株主には人事等に関与する権利もあるため、上場株式が流通すればするほど、単純に経営規模が大きくなっていきます。
よって基本的には、上場株式=資産価値が高いという認識で問題ありません。
さらに、上場株式には、相続税の評価額計算が非常に楽というメリットもありますが、これについては後述します。

2-1-2.非上場株式

非上場株式(未公開株)とは、証券取引所に公開されていない有価証券です。
非上場株式=資産価値が低いというわけではなく、実際にサントリーやアイリスオーヤマなど、未上場の大企業も多く存在します。
また、最近では株主コミュニティや投資型クラウドファンディングなど、証券取引所以外のプラットフォームも増えてきています。
ただし、非上場株式は株価をはじめとした公表データが少ないため、相続税評価額を求めるには多少煩雑な手順が必要です。

2-2.上場株式の評価方法

上場株式の相続税評価額は、「株価×保有株数」という単純な式で計算可能です。
ここでいう株価とは、基本的には「相続開始日の終値」を指します。
しかし、相続開始日にたまたま株価が高騰した場合、本来の資産価値を大きく超えた評価額がつき、過剰な相続税を払わされる事態になりかねません。
そのため、上場株式の株価に当てはめる数字は、以下の4つのパターンから選べることになっています。

  • 相続開始日の終値(相続開始日が土日祝の場合、その日から最も近い平日の終値)
  • 相続開始月の平均終値
  • 相続開始前月の平均終値
  • 相続開始前々月の平均終値

以上のうち、評価額が一番低くなるパターンを採用しておきましょう。
ただし、ここでいう月の平均終値とは、単純な1か月分の平均ではありません。
厳密には、相続開始日と権利落ち日(※)の前後関係によって、対象期間が以下のように変わります。

  • 相続開始日が権利落ち前の場合:1日~権利落ち前日までの平均終値
  • 相続開始日が権利落ち後の場合:権利落ち当日~月末までの平均終値

また、権利落ち日から決算日までの間に相続が発生した場合、「相続開始日の終値」は「権利落ち前日の終値」に変わります。

(※)各企業が定める最終売買日の翌日。権利落ちとは、直近の決算日に優待等の株主権利を得られなくなること

2-3.上場株式の節税対策には生前贈与が有効?

相続税を抑えるための対策として、生前贈与が有効というのは広く知られた話です。
生前贈与において主に利用される「暦年課税制度」では、60歳以上の親から贈与を受ける際、年間110万円までは非課税となります。
この仕組みは、贈与するモノが上場株式であっても同じです。
株式は不動産とちがって小分けにしやすいため、最終的に多額の株式を移動する場合でも、贈与税を回避するのはそう難しくありません。
また、株式を生前贈与するメリットとして、配当金による相続税の増加を防げる点も挙げられます。
あらかじめ子が配当金を受け取れるようにしておけば、その配当金は子自身のものです。
毎年申告する必要はあるものの、数十年間の配当金が相続財産として一括でカウントされるのに比べれば、ほぼ確実に納税額を抑えられるはずです。
本記事をご覧の時点で被相続人がご存命であれば、ぜひ上場株式の生前贈与について、一度話し合ってみてはいかがでしょうか。

また、2024年までの生前贈与については相続開始日の3年前から相続財産扱いになるので注意してください。
なお、令和5年の税制の改正によって、暦年贈与において持ち戻し期間が7年に延長されました。
延長した4年間に受けた贈与のうち、総額100万円までは相続財産に加算しないこととなっている点にも注意が必要です。

3.非上場株式の相続税評価

上場株式がインターネットで株価をすぐにチェックできるのに対し、非上場株式は公開されているデータが非常に限られています。
そのため、非上場株式においては、会社の規模や直近の配当などから評価額を算出する必要があります。
以下で詳しく見ていきましょう。

3-1.純資産価額方式

企業が清算されると、売却金額から債務や法人税が差し引かれ、残った利益分のお金は株主に分配されるというのが一般的です。
純資産価額方式では、上記の利益分を時価総額に見立て、これを発行株数で割ることにより株価を推算していきます。
その計算式は以下の通りです。

  1. 1. 相続税評価額による純資産価額-帳簿価額の純資産価額=純資産評価差額
  2. 2. 純資産評価差額×37%=法人税等相当額
  3. 3. 純資産価額-法人税等相当額=控除後の純資産価額
  4. 4. 控除後の純資産価額÷発行済株式数=1株当たりの純資産価額

 

3-2.類似業種比準方式

類似業種比準方式とは、非上場企業の株価を推算するうえで、業種がよく似た上場企業の株価を参照する手法です。
もちろん、その上場企業の株価をそのまま代入するわけではありません。
業種が似ているというだけで、営業利益や純資産といった経営面の数字は軒並み異なります。
そのため、配当・営業利益・純資産の平均比率、および会社規模の差を示す調整率などを考慮した計算が必要です。

(類似業種比準方式における推算株価)=(参照する上場企業の株価)× {(配当比率+利益比率+純資産比率)÷3} ×(調整率)× {(1株当たりの資本金等の額)÷50}

まず、各比率は非上場企業の数字を、参照する上場企業の数字で割ることで求められます。
次に、調整率に関しては大会社が0.7、中会社が0.6、小会社が0.5という規定です。
会社規模の判定基準としては、従業員が70人以上なら無条件で大会社、未満の場合は売上高と総資産のいずれか大きい方で判定されます。
売上高での判定基準は、30億円以上で大会社、2億円未満で小会社、その間が中会社です。
総資産での判定基準は、15億円以上で大会社、5千万円未満で小会社、その間が中会社です。(一部異なる業種あり)
最後の「1株当たりの資本金等の額」は、文字通り資本金を発行株数で割って求めます。
以上から分かる通り、類似業種比準方式は、純資産価額方式よりもはるかに計算が面倒です。
その一方、算出される株価自体は類似業種比準方式の方が低い傾向にあります。

3-3.配当還元方式

配当還元方式は、保有株数が少なく、配当以外の資産価値が薄い場合に用いられます。
この方式を採用できる条件は原則二通りで、まず議決権割合が15%未満のグループに属していること。
もしくは、グループ内に議決権割合10%以上の株主が存在し、かつ自身が何の役職にも就いていないことです。
グループとは、特定の株主と親族、および特殊な関係にある第三者から構成される集団です。
まず親族に関しては、株主の6親等以内の血族、および配偶者の3親等以内の姻族を指します。
次に、特殊な関係にある株主とは、特定の株主もしくはその親族が他の企業を支配(※)している場合の当該企業を指します。
配当還元方式を利用できる場合は、以下の計算式で配当還元価額を求めましょう。

(配当還元価額)={(1株当たりの配当年額)÷2} × {(1株当たりの資本金等の額)÷50}

なお、1株当たりの配当年額には、直近2年分の平均値が代入されます。

(※)保有株数もしくは特定議決権の割合が、全体の50%を超えている状態

 

4.株式を相続したときの注意点

最後に、相続前後に株式を現金化する際の注意点を4つ紹介します。

4-1.相続前に売却益がある場合等は「準確定申告」を

被相続人があらかじめ株を売却し、同じ年に亡くなった場合、その売却益(所得)は相続人が代わりに申告しなければいけません。
これを準確定申告と呼びます。
通常の確定申告が一定の時期(2月16日~3月15日)に行うのに対し、準確定申告の期限は相続開始日の翌日から4か月以内です。
また、通常の確定申告が申告者本人の住所地で行うのに対し、準確定申告は「亡くなった人の生前の住所地」で行う必要があります。

4-2.相続後に売却益が出ると「譲渡所得税」が発生

株式の売却によって得た利益は、株式譲渡所得として翌年に申告しなければいけません。
株式譲渡所得では、売却益に対して15%の所得税、および5%の住民税が課されます。
ただし、相続した株式を相続開始日から3年10か月以内に売却した場合は、以下の計算式で求めた金額を売却益から差し引けます。

(相続税の総額)×(売却した株式の相続税評価額)÷(債務控除分を除いた相続税評価額の総額)

差し引いた結果、売却益が0円以下になった場合は、当然ながら申告不要です。

4-3.株を現金化したい場合は名義変更が必要

株式を相続した際は、名義を相続人に変更する必要があり、その手続きを終えるまで売却等は一切行えません。
上場株式の場合は被相続人が利用していた証券会社、非上場株式の場合はその株式を発行している企業に連絡し、指定の書類を作成・提出していきましょう。
また、複数の相続人で株式を分け合う場合は、遺産分割協議書の提出も必要です。

4-4.非上場株で使える「みなし配当課税の特例」

非上場企業が自社の株式を買い戻した場合、それによって株主が得た利益は「みなし配当課税」の対象です。(法人税法第24条) みなし配当の課税評価額は、以下の計算式で求められます。

(みなし配当の課税評価額)=(買い戻しによる株主の利益)- {(1株当たりの資本金等の額)×(買い戻し株数)}

みなし配当は、給与など他の所得と合算して申告しなければいけません。
その結果、所得の申告額が上がりすぎると、最大で55%もの税金を払うことになります。(所得税45%+住民税10%)
そこで活用したいのが、相続した株式に限り利用可能な「みなし配当課税の特例」です。
本特例では、相続した株式を相続開始日から3年10か月以内に売却した場合に、税率が最大20%まで下がります。(4-2と同様)

 

5.まとめ

以上、株式を相続した際の価額計算について、上場株式と非上場株式に分けて解説しました。
相続税の計算や手続きに少しでも行き詰まりを感じた際は、お気軽にランドマーク税理士法人へご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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