「知人が亡くなり、自分が特別縁故者として遺産相続できそうだが、その場合の相続税はどうなるのだろう?」
「特別縁故者でも普通の相続人と同じように相続税を申告すればいいの?」
など、特別縁故者として遺産相続する場合の相続税について、疑問を抱いてはいませんか?
実は特別縁故者の相続税は、法定相続人の場合とはいろいろと異なります。
例えば、
- 相続税が2割増しになる
- 基礎控除が3,000万円→財産がそれ以下なら相続税は不要
- 適用できない特例や控除がある
といった違いがあります。
これを知らずに申告してしまうと、税額を間違えてしまったり、損をしてしまったりする危険性があるのです。
そこでこの記事では、
- 特別縁故者の相続税について知っておくべき基礎知識
- 税務署への申告方法
- 申告の際の注意点
について詳しく解説していきます。
申告を税理士に依頼する場合の報酬などについても説明していますので、「自分で申告するのは難しそう」という人にも参考になるはずです。
最後まで読めば、あなたも特別縁故者として正しく相続税を計算できるようになるでしょう。
ぜひこの記事の内容を役立ててください!
1.特別縁故者の相続税について知っておくべきこと3つ
亡くなった人に法定相続人がいない場合、血縁者でなくとも故人と深い関わりがあった人が「特別縁故者」として認められれば、財産を取得することができます。
特別縁故者は法定相続人ではありませんが、受け取った財産には相続税が課されます。
この場合、法定相続人の相続税とは異なる点や、注意すべき点が3つあるので、まずはその説明をしましょう。
1-1.特別縁故者の相続税は2割増し
まず、特別縁故者の場合、相続税は法定相続人の場合の2割増しになります。
相続税法では、被相続人の配偶者と1親等の血族以外が遺産を受け取る場合、相続税は2割加算と定められています。
特別縁故者もこれに当てはまるのです。
実際の計算方法は「2-2.申告書を作成する」に詳しく解説しますので、今すぐ知りたい!という人はそちらを読んでください。
1-2.財産が3,000万円以下なら相続税はかからない
実は、特別縁故者の場合、受け取る財産の総額が3,000万円以下であれば、相続税はかからず、相続税の申告も必要ありません。
というのも、相続税には基礎控除額があるからです。
取得財産の総額が基礎控除額以内であれば相続税は発生せず、申告も不要なのです。
この基礎控除額の計算式は、以下の通りです。
特別縁故者が財産分与を受ける場合は、法定相続人はいないので、
3,000万円+(600万円×0人)=3,000万円
となります。
したがって、特別縁故者が受け取る財産の総額が3,000万円以下なら、相続税ゼロ・相続税の申告も不要となるのです。
1-3.申告期限は財産分与があった日から10ヶ月
相続税の申告には期限があり、特別縁故者の場合は「財産分与があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」と定められています。
その日までに、申告だけでなく納税も済ませなければいけません。
間に合わなければ、税務署から追徴課税を求められることになります。
ちなみに、法定相続人の場合の期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」です。
特別縁故者の場合は起算日が違うことを覚えておいてください。
2.特別縁故者の相続税の申告方法
相続税の申告は、税理士などの専門家に依頼することもできますが、自分でもできます。
申告書類が非常に多いので、それらを集めたり記入したりする手間と時間はかかりますが、自分で申告すれば、税理士に依頼する報酬分を節約できますので、挑戦してみてもよいでしょう。
ではその申告方法を、手順にしたがって3ステップで説明しましょう。
2-1.必要な書類を集める
まず、相続税の申告に必要な書類を集めます。
必要な書類は以下です。
1)申告書の書式
第1表から第15表に分かれています。
税務署の窓口でもらうか、以下リンクの国税庁ホームページでPDFをダウンロードし、プリントアウトすることができます。
2)添付書類
申告の内容によって必要な添付書類は違ってきますが、主なものは以下です。
<身分関係の書類>
- 被相続人の戸籍謄本
- 特別縁故者の戸籍謄本
- 特別縁故者の印鑑証明書
- 遺言書の写し(あれば)
- 遺言書の検認証明書(遺言書があれば) など
<財産に関する書類>
- 土地、建物の登記簿謄本
- 預貯金の残高証明書
- 借入金の残高証明書 など
<評価明細書>
所定の書式があるので、税務署の窓口でもらうか、国税庁のホームページからダウンロードして作成します。
- 土地及び土地の上に存する権利の評価明細書
- 上場株式の評価明細書
- 山林、立木の評価明細書
- 一般動産及び船舶の評価明細書
- 書画骨とう品の評価明細書 など
2-2.申告書を作成する
必要な書類が揃ったら、相続税を計算して申告書の書式に記入していきましょう。
ただし、特別縁故者の場合、相続税の税率が法定相続人の2割増しになりますので、計算に注意してください。
以下に詳しい計算方法をまとめましたので、これにしたがって計算しましょう。
相続税額は、取得した財産の総額に相続税率をかけ、控除額を引いて算出します。
基本の計算式は以下です。
【 相続額 × 税率 − 控除額 = 相続税額 】
特別縁故者の場合は、その算出額にさらに2割が加算されます。
基礎控除額の3,000万円も考慮すると、計算式は以下のようになります。
相続税の税率と控除額は、取得した財産の金額によって異なり、以下の表のようになっています。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
例えば、総額5,000万円の財産を受け取った場合、相続税の対象となる金額は、
5,000万円 − 基礎控除3,000万円 = 2,000万円
です。
2,000万円に対する相続税率は15%、控除額は50万円ですから、
{( 5,000万円 − 3,000万円 )× 0.15 − 50万円}× 1.2= 相続税額300万円
となります。
これで、相続税額が算出できました。
これらの数字や計算結果を申告書の書式に記入して、申告書を作成しましょう
2-3.申告する
申告書ができたら、作成した申告書と必要な添付書類を揃えて税務署に提出して申告します。
提出は、直接税務署に持っていく以外に、郵送でも受け付けてもらえます。
ただし注意が必要なのは、提出先は最寄りの税務署ではなく、「被相続人が最後に住んでいた場所を管轄する税務署」であることです。
被相続人が遠く離れた場所に住んでいれば、そこに届けに行く、または郵送で到着する日が、申告期限に間に合わなければいけません。
期限に間に合わずに追徴課税されることのないよう、できる限り早めに申告手続きをしてください。
3.相続税申告の注意点
特別縁故者の相続は、法定相続人の相続とはいろいろな点で違いがあります。
中でも相続税を申告する際に、特に気をつけなければいけない点を3つ挙げますので、以下に留意して相続税申告をしてください。
3-1.適用されない控除・特例がある
相続税にはさまざまな控除や特例があり、法定相続人がそれを利用すれば、相続税額を大幅に減らすことができます。
が、その中には特別縁故者の場合には利用できないものがいくつかあるのです。
以下のものは、適用条件に当てはまっていても利用できませんので注意してください。
1)未成年者控除
未成年の法定相続人が相続する場合の控除ですが、特別縁故者は法定相続人ではないので適用されません
2)障害者控除
法定相続人が障害者である場合に適用される控除ですが、同上の理由で適用されません。
3)小規模宅地等の特例
亡くなった被相続人の自宅、店舗、事業所などの敷地として使用していた宅地を相続する場合、不動産の評価額を最大80%まで減額して相続税を算出できる特例ですが、特別縁故者には適用されません。
4)相次相続控除
亡くなった被相続人が、過去10年以内に別の相続をして相続税を納めたことがある場合、今回の相続人が納める相続税が一部控除される制度ですが、特別縁故者には適用されません。
3-2.相続税以外にも納める税金が発生する
もし受け取った財産の中に不動産がある場合、法定相続人であれば取得税は非課税になりますが、特別縁故者の場合には、不動産取得税が課せられてしまいます。
また、将来その不動産を譲渡した場合、その利益に対して譲渡所得税がかかります。
土地や家をもらう場合は、たとえ相続税はゼロだったとしても、これらの税金を支払う用意が必要なのです。
3-3.専門家に依頼する場合は相続財産の約0.5〜1.0%の報酬が必要
相続税の申告は自分ですることもできますが、
「時間がとれない」
「必要な書類を集める手間が大変」
などの理由で、税理士や弁護士などの専門家に依頼する人も多いものです。
専門家に依頼した場合は、当然報酬が発生します。
報酬に法的な規定はないため、どの税理士に依頼するかでかわってきますが、だいたいの相場を知っておくといいでしょう。
相続税の申告に対する税理士報酬の相場は、受け取る財産の総額の約0.5〜1.0%程度です。
手続きが煩雑で手間がかかる場合は、これより高額になることも多いですが、ひとつの基準として覚えておいてください。
4.難しければ税理士に相談する
もし実際に申告書を書き始めてみて、
「難しくて自分にはお手上げかも……」
「遺産を調べたり、書類を集めたりするのに時間がかかりすぎる」
などと行き詰まってしまったら、思い切って税理士に相談してみるのもひとつの手です。
税理士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
- 申告書を作成する手間、特に複雑な土地の評価などを任せられる。
- ミスや計算間違いを避けられる。
- 特例や控除の制度を漏らさず適用して納税額を最低限に抑えられる。
- 申告書に税理士の名前が記載されていることで、税務署の信用度が上がり税務調査の可能性が低くなる。
- もし税務調査が入ったとしても、税理士が対応してくれる。
自力で申告するのは難しい、と感じたら、税理士への依頼も検討してみてください。
5.まとめ
いかがでしたか?
ではもう一度、記事の内容を振り返ってみましょう。
◎特別縁故者の相続税について知っておくべきことは3つ
1)特別縁故者の相続税は、法定相続人に比べて2割増し
2)基礎控除があるので、相続財産が3,000万円以下なら相続税はかからない
3)申告期限は10ヶ月
◎特別縁故者の相続税の申告方法は以下の手順
1)必要な書類を集める
- 申告書の書式
- 添付書類:戸籍謄本など
2)申告書を作成する
{( 取得財産の総額 − 基礎控除3,000万円 )× 税率 − 控除額}× 1.2 = 相続税額
3)申告する
◎相続税申告の注意点
- 適用されない控除・特例がある:未成年者控除、障害者控除、小規模宅地等の特例、相次相続控除
- 相続税以外にも納める税金が発生する:不動産取得税など
- 専門家に依頼する場合は相続財産の約0.5〜1.0%の報酬が必要
これを参考に、あなたが正しく相続税を納めることができるよう願っています。