遺贈とは?相続との違いや遺言書作成の方法について解説

 

1.遺贈とは

まずは、遺贈とはどのようなものなのか基礎的な事柄から確認していきましょう。
遺贈というのは、被相続人の遺言によって、遺産を無償で譲ることです。遺贈の場合は、法定相続人以外にも譲ることができ、遺産は全てでも一部でもかまいません。
遺贈を行うことによって、法定相続人以外にも遺産を譲ることができます。生前にお世話になっている人や団体がある場合には、遺贈によって遺産を譲るケースも珍しくありません。
遺贈をする人を「遺贈者」、遺贈をされる人もしくは法人を「受贈者」と呼びます。

また、NPO法人や公益法人、学校法人などの団体に寄付として遺贈するケースもあります。そのような遺贈は、遺贈寄付と呼ばれます。地域や医療、教育などのために自分の遺産を役に立ててもらいたいなら、遺贈寄付を検討すると良いでしょう。
もしも遺言がない状態で相続が発生すると、遺産は法定相続人が引き継ぐことになります。もしも相続人がいないなら、国庫に入ります。「せっかくなら自分の望むことに使ってもらいたい」という場合には遺贈がおすすめです。

 

2.遺贈の種類は「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類

遺贈の種類には2つあります。具体的には、「特定遺贈」と「包括遺贈」です。
それぞれがどのような特徴を持つのか、順番に見ていきましょう。

2-1.特定遺贈とは

1つ目の遺贈が、特定遺贈です。
特定遺贈というのは、遺言書によって遺産を引き継ぐ際に、どの財産を遺贈するかまで示す方法です。具体的な財産を特定して記載することによって、引き継がせたい遺産だけを引き継いでもらえます。
たとえば、「遺産のうちの現金1,000万円をAさんに遺贈する」「東京都港区の〜〜にある土地をBさんに遺贈する」というように、特定できる内容を遺言書には記載します。
ちなみに、遺言書によって遺贈されることになった人も、嫌なら受け取る必要はありません。遺贈を受ける権利を放棄することを遺言執行者や他の相続人に意思表示することによって、特定遺贈は回避できます。
特定遺贈を放棄する際の意思表示には、期限が決まっていません。しかし、他の相続人にどうするかを問われたときに答えずに時間が経過していくと、遺贈を受け入れたと判断されるケースもあるので、早めに答えを出すようにしましょう。

2-2.包括遺贈とは

2つ目の遺贈が、包括遺贈です。
包括遺贈というのは、遺言書の中に遺産の全部又は一定割合を記載して行う方法を指します。割合を示しておくことによって、相続と似ているイメージで遺産を引き継いでもらえます。
たとえば、「財産の3分の1をAさんに遺贈する」「全財産をBに遺贈する」というように遺言書には記載します。
ただし注意が必要なのが、マイナスの財産もある場合です。包括遺贈は遺贈する割合を示すものなので、マイナスの財産も含めて引き継がせることになります。借金や債務のようなマイナスの財産がある場合には慎重に行うべきでしょう。連帯保証債務や損害賠償義務のようなすぐにはわからないようなマイナスの財産もありますので、注意してください。
包括遺贈はマイナスの財産も引き継ぐリスクがあるので、遺産の引き継ぎそのものを拒否される場合もゼロではありません。財産を送る側としては、特定遺贈とどちらにするのかを慎重に考えたほうが良いでしょう。

以上のように、遺贈には2つの種類があります。どちらにもメリットやデメリット、使うのが良い場面などがありますので、ご自身の状況に合わせて判断してください。

 

3.遺贈と相続の違い

「遺贈と相続は、結局どう違うのだろう?」と混乱されている方もいらっしゃるでしょう。ここで、遺贈と相続の違いについて見ていきます。
解説する主なポイントは以下のとおりです。

  • 遺贈の対象者が異なる
  • 課税される税金・税率が異なる
  • 遺贈の相続税の計算方法が異なる
   

それぞれのポイントについて、順番に確認していきます。

3-1.遺贈の対象者が異なる

1つ目のポイントは、遺贈の対象者が異なるということです。
具体的には、相続は「法定相続人」が対象者、遺贈は「法定相続人」以外も対象者となります。それぞれについて、順番に解説します。

3-1-1.相続は「法定相続人」が対象者

相続は遺産を引き継ぐ人が法定相続人のみとなっています。
たとえば、配偶者や子どものような法律で決まっている一定の対象者だけが相続の対象です。

3-1-2.遺贈は「法定相続人」以外も対象者

遺贈は遺言書によって指定された人であれば、法定相続人でなくとも遺産引き継ぎの対象となれます。つまり、法定相続人ではない第三者にでも遺贈することは可能です。
幅広い対象に遺産を渡すことができる一方で、税金のような金銭的負担が重くなりやすいので注意しなければなりません。

3-2.課税される税金・税率が異なる

2つ目のポイントは、課税される税金・税率が異なるが異なるということです。
具体的には、相続登記の際「登録免許税」が高くなることと、特定遺贈だと「不動産取得税」が課税されることです。それぞれの税金や税率について、順番に解説します。

3-2-1.相続登記の際「登録免許税」が高くなる

遺贈の場合は登録免許税が高くなるので要注意です。不動産の所有者が変わるときには、新しく所有することになった人に登録免許税の納税が発生します。
登録免許税がいくらになるのかは「固定資産税評価額×税率」で算出できますが、この税率部分が相続なら0.4%なのに対して、遺贈なら2%となってしまうのです。
5倍の税率となる上に登録免許税は一括での現金納付が一般的ですので、場合によっては遺贈で不動産を受け取った際に納税資金が足りないことも起こり得ます。

3-2-2.特定遺贈だと「不動産取得税」が課税

相続で不動産を引き継いだ場合には不動産取得税は発生しませんが、相続人以外が特定遺贈で引き継いだ場合には不動産取得税がかかります。
不動産取得税がいくらになるのかは「固定資産税評価額×税率」算出できます。税率は標準税率であれば4%となり、場合によっては高額になるおそれがある点に注意が必要です。
ちなみに、包括遺贈の場合には不動産取得税は発生しないので、遺贈で不動産を譲ろうと思っている場合にはどの方法を採るべきかいろいろな観点から考えるのが良いでしょう。

3-3.遺贈の相続税の計算方法が異なる

3つ目のポイントは、遺贈の相続税の計算方法が異なるということです。
具体的には、基礎控除額の計算式が異なることと、遺贈に係る相続税額は2割加算されることです。それぞれの計算方法についてや注意点について、順番に解説します。

3-3-1.基礎控除額の計算式が異なる

遺贈の場合、遺贈を受ける受遺者は相続税の基礎控除額の計算には影響しない点にも注意しましょう。基礎控除額の算出の際には「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式を用いるので、法定相続人の人数が多ければ控除の金額も多くなります。
一方で、受遺者が多くても基礎控除額には関わらないので気をつけなければなりません。

3-3-2.遺贈に係る相続税額は2割加算

遺贈で相続税が発生するケースの場合、受遺者には相続税の2割加算が発生します。法定相続人以外への遺贈の場合に2割加算になるので、孫のような身近に感じる人に遺贈しても2割加算になる点に注意が必要です。

 

4.遺贈に関する注意点

遺贈には知っておくべき注意点もあります。注意点を知らないままだと、予想外のトラブルが発生してしまうかもしれません。
特に重要な注意点は、以下の2つです。

  • 遺言書の作成は公正証書遺言を選ぶ
  • 遺留分を忘れないことで争いを避ける
   

どちらも事前に知っておくと安心です。どのようなことに注意すれば良いのか、確認しておきましょう。

4-1.遺言書の作成は公正証書遺言を選ぶ

1つ目の注意点は、遺言書の作成は公正証書遺言を選ぶことです。
遺言は財産を譲る法的な行為なので、紙に思いを書けばなんでも良いというわけにはいきません。法律で定められた条件をすべて揃えておくことが必要です。
公正証書遺言は公証人が作成するので条件面で問題がないかを見てもらえ、公正証書遺言そのものの原本も公証役場に保管してもらえます。
遺言書の作成自体はご自身で書くことも可能ですが、条件面で問題があるおそれもありますし、自宅で保管していたら偽造のおそれも出てきます。少しでも不安があるようなら、公正証書遺言を選ぶのが良いでしょう。

4-2.遺留分を忘れないことで争いを避ける

2つ目の注意点は、遺留分を忘れないことで争いを避けるというものです。
遺留分というのは、相続人が最低限の遺産を受け取れる権利を指します。被相続人の意思とは無関係に、一定の割合の金額は相続人が取得できるので、遺族の生活が保証される制度です。
遺留分を持っているのは、基本的には被相続人の配偶者や両親、子どもです。遺言書を作るときに遺留分のことを忘れていると思わぬトラブルになってしまいますので、事前に遺留分については考えた上で遺言書を作成するのが良いでしょう。

 

5.死因贈与との違い

ここで、死因贈与との違いも確認しておきます。
死因贈与とは、贈与者が亡くなったときに効力が発生する贈与のことです。
死因贈与は遺贈と似ていますが、遺贈は遺言書による一方的な意思表示であり、死因贈与は双方の合意に基づく契約が必要となります。一般的には死因贈与は、契約書を使って書面で契約を結びます。

 

6.遺贈は放棄することができる

最後に、遺贈は放棄することができる旨についてもお伝えしておきます。
すでに少し述べましたが、遺贈をする相手に選ばれたとしても、必ず遺贈で遺産を受け取らなければならないわけではありません。相続の際には相続放棄という手段で相続を避けることができますが、遺贈の場合も放棄が可能です。
ただし、2種類の遺贈「特定遺贈」「包括遺贈」のどちらの状況なのかによって行わなければならない手続きが変わってくるので、気をつけてください。
ちなみに、相続放棄の場合には家庭裁判所で申述の手続きを行います。相続人の場合には遺贈を放棄しても相続人という地位は代わりませんが、相続放棄を行うと相続人の地位ははじめからなかったことになるので、扱いの違いにも注意しておきましょう。

6-1.特定遺贈の放棄方法

遺贈の放棄についてですが、まずは簡単な特定遺贈の方法からお伝えします。特定遺贈は先ほど意思表示によって放棄できるとお伝えしましたが、意思表示は口頭でも認められています。しかし、予想外のトラブルを防止するためにも、内容証明郵便のような安心できる方法を選ぶことをおすすめします。特定遺贈の放棄が成立すると、遺言者の死亡時に遡って効力が発生します。特定遺贈では遺贈対象の遺産が分けられるのであれば一部だけを選んで放棄することも可能です。
また、特定遺贈の場合にはいつでも放棄できますが、遺贈を受け入れたと判断されるケースもあるとお伝えしました。具体的に説明すると、遺贈を実行する義務を負っている人や利害関係者であれば、特定遺贈を受けた人に対して遺贈を放棄するか受け入れるかを明確に示すように催告ができます。催告されても意思表示がしない状態が続くと、遺贈を受け入れることにしたと判断されるのです。そうなると、放棄はできなくなります。

6-2.包括遺贈の放棄方法

次に包括遺贈の場合の遺贈の放棄方法ですが、こちらは相続放棄と同じ手続きが必要です。遺言を残した人の最後の住所地を管轄している家庭裁判所で、放棄の申述を行いましょう。放棄の申述を行うには、申述書や遺言書の写し、遺言者の戸籍謄本などさまざまな書類が必要となります。事前に問い合わせ、準備しておいてください。
また、包括遺贈の放棄には明確に期限が定められています。期限は、包括遺贈があった事実を知った日から3ヶ月以内です。後回しにしていると期限が過ぎてしまうことも珍しくありません。遺贈を断りたい場合には、早めに申述手続きを進めていくことをおすすめします。

 

7.まとめ

遺贈というのは、被相続人の遺言書の内容をもとにして、遺産を譲ることです。相続と違って、遺贈の場合は法定相続人以外にも財産を譲ることができます。遺産の譲り方によって包括遺贈と特定遺贈の2種類に分けられて幅広く活用できますが、遺産を受け取る側のことも考えた上で適切な方法で譲るようにしましょう。また、遺贈を受けるか悩む場合には放棄もできますので、慎重に検討してください。

財産を譲る場合も、譲り受ける場合も、知識が不足することによって思っているような展開にならないことも多いです。少しでも不安があるようでしたら、お気軽にランドマーク税理士法人へご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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