農地等の納税猶予制度とは? 適用条件や手続きの流れを解説

農家に生まれれば、いつかは親から農地を相続する時が来ます。
本記事をご覧の方の多くは、農地の相続を控えるも、相続税の支払いが生活に支障をきたすのでは、と不安に感じていることでしょう。
そこで今回は、事業承継の意志がある相続人向けに、国税庁が設ける農地の納税猶予制度について解説します。
相続する農地を手放したくない方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

1. 農地の納税猶予とは?

農地の納税猶予とは、農地の相続によって生じる相続税の大部分の課税を猶予する制度です。
納税猶予が適用された後、相続人の死亡など一定の条件を満たせば、猶予分は全額免除されます。
対象となる農地や相続人の要件、および具体的にどのくらいの相続税が猶予されるのかについて、以下で見ていきましょう。

1-1 対象となる農地

納税猶予の対象となるのは、被相続人の死亡日まで、継続して農業に用いられていた農地です。
被相続人自身が作業に携わっていた農地はもちろん、所定の条件下で貸付けた「特定貸付け農地」も納税猶予の対象となります。(詳細は後述)
畜産用の土地に関しても、採草もしくは放牧を目的としたエリアは「採草放牧地」として、農地と同様の納税猶予を受けられます。
一方で作物生産に直接使用しない土地、例えば農作業場の敷地や灌漑用の溜め池などについては、納税猶予の対象農地に含まれません。

1-2 猶予を受けるには

農地の納税猶予を受けるための大前提として、相続税の申告書は必ず期間内に提出しなければいけません。
相続税の申告期間は、相続の開始を知った日(原則、被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内です。
特定貸付け農地で納税猶予を受ける場合は、貸付けに関する届出書を相続税の申告書と併せて提出する必要があります。
納税猶予は一度申し込んだら終わりではなく、猶予を続けるには定期的な継続届出書の提出が必須です。各回の提出期限は、相続税の申告期限の翌日から丸3年ごとに設けられ、一度提出を忘れた時点で納税猶予は打ち切られます。

1-3 猶予される税額

農地の納税猶予制度で猶予されるのは、通常の相続税評価額で算出された相続税額から、農業投資価格に基づく相続税評価額で算出された相続税額を引いた値です。
農業投資価格とは、恒久的に農業に用いられる農地に対し、国税局長が設定した取引価格の目安です。
国税庁ホームページの路線価図・評価倍率表にて、各都道府県ページにある「土地関係以外」の欄に掲載されています。
農業投資価格は10アール(1,000㎡)で数十万円、1㎡あたり数百円という破格の数字ですから、従来の算出方法よりも相続税評価額が激減するのは想像に難くないでしょう。
「従来の算出方法がそもそも分からない」という場合は、今から自力で学ぶよりも、税理士事務所などに相談した方が確実です。

 

2. 納税猶予の適用条件

農地の納税猶予を適用するには、被相続人・相続人・農地の全てにおいて、所定の条件を満たしている必要があります。

2-1 被相続人

農地の納税猶予を受けるために、被相続人が満たすべき要件は以下のいずれか1つです。

  • 死亡日まで農業を継続
  • 農地を後継者に生前一括贈与
  • 死亡日まで特定貸付けを継続

農地の生前一括贈与とは、農地の全面積を特定の相続人に贈与することで、その農地にかかる贈与税が納税猶予される制度です。
被相続人が死亡したタイミングで猶予分の贈与税は免除されますが、代わりに相続税の課税対象となるため、これを避けるには改めて納税猶予申請を行う必要があります。

2-2 相続人

相続人が満たすべき要件は、以下のいずれか1つです。

  • 相続税の申告期限までに農業経営を開始し、以後継続すること
  • 生前一括贈与の受贈者
  • 相続税の申告期限までに特定貸付けを実施

納税猶予の開始については「相続税の納税猶予に関する適格者証明書」、継続については「引き続き農業経営を行っている旨の証明書」を農業委員会からの発行で認められます。 審査にあたっては必ず農業委員会による現地調査が実施されるため、実際の就農を先延ばしにするのはおすすめしません。

2-3 農地

納税猶予の対象となる農地は以下の通りです。

  • 農地および準農地
  • 採草放牧地
  • 生産緑地
  • 相続税の申告期限時点で特定貸付け中の農地

準農地とは、10年以内に農地や採草放牧地に開発・利用が可能と市町村長に認められた土地です。
生産緑地とは、農地区分上の市街化区域において都市計画で指定される地区であり、30年間の管理義務に代わって固定資産税などが減免されます。
特定貸付けとは、市街化区域外の農地を、農地中間管理事業または農用地利用集積計画に基づいて貸し出す制度です。
また、市街化区域内の生産緑地において、認定都市農地貸付けまたは農園用地貸付けを行うのも特定貸付けに含まれます。

 

3. 納税猶予の手続き

ここからは、農地の納税猶予制度を利用するための具体的な手続きを確認していきましょう。

3-1 相続税の申告手続き

相続税の申告手続きは、大まかに以下の手順で進められます。

  1. ①戸籍調査や遺言書の確認による相続人の確定(複数人いる場合は遺産分割協議で農地の処遇を確定)
  2. ② 財産や負債を調査し、相続財産を評価(負債は信用情報機関に開示請求することで確認可能)
  3. ③ 相続税申告書を作成し、農地の納税猶予申請に必要な書類と併せて税務署に提出

相続税の申告および農地の納税猶予申請は、相続の開始を知った日(一般的に被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内に済ませなければいけません。
期限を超過すると、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されるほか、農地の納税猶予も受けられなくなります。
また、農業をはじめとした自営業においては、故人の死亡日までの所得税を相続人が申告・納税する準確定申告も必要です(相続発生日の翌日から4か月以内)。

農地の納税猶予申請には、先述の適格者証明書を提出するほか、猶予税額および利子税に相当する担保を設定する必要があります。
例えば、猶予を受ける農地そのものを担保とする場合、追加で以下のような書類が求められます。

  • 登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 抵当権設定登記承諾書
  • 特例適用の農地等該当証明書(生産緑地の場合)

適格者証明書については、証明願の提出後に農業委員会の審査が挟まる関係上、交付までに1か月前後は待たなければいけません。
一連の手続きをスムーズに終わらせるには、相続税の計算等を最初から税理士などに一任し、自らは猶予申請の準備に集中するのがおすすめです。

3-2 納税猶予期間中の継続届出

納税猶予期間中は、相続税の申告期限の翌日から丸3年ごとに、継続届出書の提出期限が設けられます。
継続届出の際は農業委員会より、農業を引き続き行っている旨の証明書を取得し、継続届出書に添付して提出する必要があります。
また、農業委員会に証明願を提出する段階では、税務署からの通知など土地の所在が分かる書類の添付が必要です。
継続届出書の提出期限を過ぎると、その翌日から2か月が経過する日をもって、納税猶予が終了してしまいます。

 

4. 納税猶予を受ける際の注意点

納税猶予を受ける際は、継続届出書の提出忘れ以外にも猶予打ち切りのパターンがあること、および打ち切りの際に利子税というペナルティが課される点に注意が必要です。
以下で詳しく見ていきましょう。

4-1 担保の提供

農地の納税猶予に適用する担保は、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 担保として提供できる財産の種類であること
  • 担保として不適格な財産に当てはまらないこと
  • 必要担保額に達していること

担保として提供できる財産のうち、個人で現実的に用意可能なものは、土地や建物といった不動産に限られるでしょう。
不適格な財産に関しては、違法性を含むものや所有権が不明瞭なもの、存続期間の短いものなどが当てはまります。
必要担保額に関しては、以下の式で求められる数値を上回っている必要があります。
猶予税額+初回分納期間にかかる利子税×3

4-2 農業を辞めると打ち切りになる

農地の納税猶予は、相続人が農業を継続している限り認められるものであり、相続人が死亡するまで納税義務そのものはなくなりません。
宅地への転用や第三者への譲渡などで農業を辞めると、納税猶予が打ち切られてしまうので注意してください。

4-2-1 全額打ち切りになる場合

継続届出書の提出忘れを除くと、納税猶予が全額打ち切られる主なケースは以下の通りです。

  • 農業経営を辞めた場合
  • 譲渡や贈与、宅地転用などにより、所有する農地面積が20%を超えて削減された場合
  • 担保価値が必要な水準を下回った後、増担保や担保変更に応じなかった場合

農業経営そのものを辞めずとも、農地の一部を放棄したり、他の用途に転用したりするだけで、納税猶予は打ち切られてしまいます。
つまり、納税猶予適用後は農業経営者として、所有する農地を100%保全しなければいけないわけです。
ただし貸付けに関しては、納税猶予の適用条件における特定貸付けである限り、削減割合にはカウントされません。

4-2-2 一部打ち切りになる場合

納税猶予が一部打ち切り、もとい売却部分のみの相続税納付を求められる主なケースは以下の通りです。

  • 所有する農地面積の20%以下が削減・耕作放棄された場合
  • 収用や特例事業に基づいて譲渡した場合
  • 生産緑地内の農地を買い取る場合

収用や特例事業に基づく譲渡、および生産緑地の買取とは、一括りにいえば自治体や地方公共団体へ農地を売却する行為を指します。
2024年現在、収用によって農地を譲渡した場合には、「収用交換等により譲渡した場合の利子税の特例」によって利子税額が0円になります。

4-3 納税猶予が打ち切りになると利子税が加算される

納税猶予が打ち切られると、相続税の申告期限翌日から起算した利子税が加算されます。

 

5. まとめ

以上、農地等の納税猶予制度について、適用条件や申請の流れなどを解説しました。
相続税の計算や申告作業は非常に複雑ですから、独力で何とかしようとせず、ぜひランドマーク税理士法人にご相談ください。

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