寄附金控除はどのように利用する?ふるさと納税との違いも解説

ふるさと納税について色々調べていると、どこかで「寄附金控除」という単語に出会うものです。 似たような制度があることで、適用条件などに複雑なイメージを抱いてしまい、結果両方とも利用せずじまいという方は少なくないでしょう。 そこで今回は、寄附金控除の適用条件や控除額計算などについて、ふるさと納税との違いを絡めながら解説していきます。

1.寄附金控除・寄附金特別控除とは

寄附金控除とは、国や地方公共団体などに特定寄附金を支出した場合に、寄附額の一部を同年度分の所得控除に回せる制度です。
寄附金控除の対象団体については後述しますが、特定寄附金と認められるには大まかに以下のような条件を満たす必要があります。

  • 学問の振興や文化・福祉への貢献など、公益の増進につながると認められること
  • 寄附によって、特別な利益や権限を得ないこと
  • 政治資金規正法など法律に抵触しないこと

対象団体のうち、政治団体・公益法人・認定NPO法人のいずれかに寄附をした場合は、所得控除の代わりに寄付金特別控除を受けることも可能です。
所得控除がその年の所得額のみを減らすのに対し、寄付金特別控除は最終的な税額から一定額を差し引けます。
それぞれの計算方法も後述しますので、特定寄附をした際はぜひ両方の控除額を求め、よりお得な方を確定申告に採用してみてください。

2.寄附金控除の仕組み

寄附金控除の条件に含まれる「学問の振興」や「文化・福祉への貢献」というのは、そもそも税金の主要な使い道の1つであり、特定寄附金は税金の前払いに近い意味合いを持ちます。
この特定寄附金に関して確定申告を行うことで、前払いした税金の一部を新たに納める分から差し引けるというのが、寄附金控除の基本的な考え方です。
寄附をした際にはぜひ活用を検討したい制度ですが、寄附額の一部しか控除できない以上、黒字には絶対にならないため、節税の手段としては使えません。

2-1.寄附金控除の対象団体とは

寄附金控除の対象団体として、最も条件の緩いカテゴリは国および地方公共団体です。この2団体に寄附を行う場合は、その寄附に特別な見返りがあると判断されない限り、寄附金控除の適用が認められます。
他には、公益社団法人や公益財団法人なども寄附金控除の対象です。
公益法人のうち財務大臣が指定した組織に関しては、当該寄附が広く一般に募集され、かつ緊急性のある用途と認められれば控除対象になります。
財務大臣未指定の公益法人、および独立法人その他の対象法人に関しては、当該寄附が公益の増進に「著しく」寄与すると認められなければいけません。
法人以外の控除対象としては、政党や政治団体、特定中小会社発行の新規株式(上限800万円)などが挙げられます。

2-2.寄附金控除とふるさと納税の違い

ふるさと納税とは、任意の自治体に寄附を行うことで所定の税額控除を受けられる制度です。まず所得控除に関して、寄附金控除とふるさと納税に違いはなく、ふるさと納税額は特定寄附金の一部と判断されます。
所得税の控除対象となる寄附額上限は、両者合わせて年間総所得の40%までです。
一方で、ふるさと納税は住民税控除の対象でもあり、さらには寄附のたびに寄附額30%以内の返礼品も受け取れるため、総合的にはふるさと納税の方が明確にお得です。
ふるさと納税が寄附金控除に劣る点としては、住民税控除が基本分と特例分に分かれるなど、控除額を求めづらい点が挙げられます。
しかし、ふるさと納税にはワンストップ特例という制度があり、寄附先の自治体に必要書類を送れば確定申告も免除されます(申告が本来不要な人のみ)。
つまりは、節税目的で制度を利用するなら、ふるさと納税の方が有利というわけです。
寄附金控除は純粋に、寄附自体が目的な人向けの制度と考えておきましょう。

3.寄附金控除はいくら控除される?

ここからは、寄附金控除によって実際どれだけ所得税額が差し引かれるのかについて、具体的な金額例を交えて解説します。

3-1.寄附金控除の計算

寄附金控除による所得控除額の計算式は以下の通りです。 所得控除額=特定寄附金としての年間支出額(年間総所得の40%が上限)-2,000
ちなみに、所得税は累進課税といって、年間総所得が一定のラインを超えるごとに510%ずつ上昇する仕組みになっています。
そのため、あと少し所得額を減らせば税率を落とせるという場合に、寄附金控除も節税の手段になるのではと考える人もいることでしょう。
実際のところはどうなのか、課税所得金額900万円の人を例に見ていきます。

従来の所得税=9,000,000円×33%-控除額(1,536,000円)=1,434,000
3,000円特定寄附した場合の所得税=8,999,000円×23%-控除額(636,000円)=1,433,770
控除額=230

以上の結果から分かるように、たとえ必要最小限の寄附で税率を下げようとも、減税額が寄附金を上回ることはありません。
なお、先ほどと同じ所得で、上限いっぱい寄附した際の控除額は以下の通りです。

3,600,200円特定寄附した場合の所得税=5,400,000円×20%-控除額(427,000円)=653,000
控除額=781,000

ここまで例を見れば、「寄附自体が目的な人向けの制度」の意味は十分お分かりいただけるでしょう。

3-2.寄附金特別控除の計算

寄附金特別控除に関しては、ふるさと納税と同様の税額控除方式であり、寄附金に予め所定の税率を掛けたものを当初の税額から差し引きます。
寄附金特別控除の控除額=(対象寄附の年間合計額-2,000円)×40%(政党等寄附は30%
上限額に関しては、政党等寄附が単独で年間総所得の25%、認定NPOと公益社団法人が合算で年間総所得の25%です。
ここで、寄附金特別控除を選択可能な場合において、通常の寄附金控除とどちらがお得なのかを見ていきましょう。
<例:課税所得金額600万円の人が認定NPO法人に年間30万円を寄付した場合>

寄附金控除を適用した所得税=5,700,000円×20%-控除額(427,500円)=712,500円
寄附金特別控除を適用した所得税=6,000,000円×20%-298,000円×40%-控除額(427,500円)=653,300円

以上より、寄附金特別控除を適用可能かつ寄附額が年間総所得25%を超えていない場合は、特別控除を選んだ方が税額を抑えやすくなります。

4.控除を受けるための手続き

寄附金控除を受けるにあたって、個別の申請手続きは不要です(後述する書類の添付は必要)。
通常の確定申告で用いる申告書において、所定の項目を埋めるだけで申請扱いになります。
具体的には、申告書第一表の左側下段「寄附金控除」に控除額を、申告書第二表の右側中段「寄附先の名称等」に寄附先の団体名と寄附金額を記載していきます。
また、給与所得者など例年確定申告を免除されている方は、申告書第二表「所得の内訳」にて源泉徴収税額を転記しておきましょう。
確定申告書は国税庁の専用サイトにて作成でき、マイナンバーカードと読み取り機器(対応スマホ等)があればe-tax経由での電子申告も可能です。
e-taxを利用できない場合は、作成した申告書を印刷し、所轄の税務署へ持参または郵送してください。

4-1.確定申告書提出までに手続きが間に合わない場合

確定申告は例年、216日~315日に申告期間が設定され、最終日までに申告を済ませないと延滞税などのペナルティが課されます。
しかし寄附金控除の場合、申請にあたっては指定の書類を添付する必要があり、その交付が間に合わないケースも少なくありません。
このような場合は、寄附金の受領証の写しを代わりに添付することで、ひとまず申告済みの扱いにしてもらいましょう。
もちろん、指定の書類が交付された際には速やかな提出が必要です。

4-2.寄附金控除に必要な書類

寄附金控除の申請時に提出を求められる書類としては、主に寄附先から交付された受領証や領収証が挙げられます。
政党等寄附の場合は受領証等に代えて、選挙管理委員会などの確認印を取得した「寄附金(税額)控除のための書類」を別途作成・提出する必要があります。
地方独立行政法人・学校法人・特定公益信託の3団体に関しては、対象団体であることを示す証明書や認定書の追加提出が必要です。
特定中小会社の新規株式に関しては、3種類の明細書を含む様々な書類が求められるので、詳しいことは税理士などに相談してください。

5.法人が寄附金を支出した場合

法人が特定寄附を行った場合には、寄附金の一部または全てを損益計算上の損金に算入させ、法人税を減らすことが可能です。
寄附金のうちどこまでを損金算入できるかは、寄附先によって異なります。
以下で簡単に見ていきましょう。

5-1.国等に対する寄附金及び指定寄附金の場合

国や地方公共団体に対する寄附金、および指定寄附金に該当する寄附金については、原則その全額を損金に算入可能です。
指定寄附金とは、財務大臣が指定した公益法人のうち、当該寄附が広く一般に募集され、かつ緊急性のある用途と認められたものを指します。
また、2023年の税制改正により、学校法人の設立に充てられる寄附金も、全額の損益算入が可能になりました。

5-2.特定公益増進法人等に対する寄附金の場合

特定公益増進法人とは、財務大臣に指定されていない法人のうち、公益の増進に著しく寄与すると認められた団体を指します。
特定公益増進法人への寄附金については、下式に定める限度額の範囲で損益算入が可能です。
特別損金算入限度額=(資本金×0.375%×当期の月数÷12+年間所得×6.25)×1/2
資本や出資のない法人に関しては、単純に年間所得×6.25のみで限度額が求められます。

5-3.上記以外の寄附金の場合

その他の寄附金のうち、特定公益信託および認定NPO法人に関しては、特別損益算入限度額を適用した上での損益算入が可能です。
上記にも当てはまらない一般法人、例えば宗教法人や営利法人に関しては、下式に定める通常の損益算入限度額が適用されます。
損金算入限度額=(資本金×0.25%×当期の月数÷12+年間所得×2.5)×1/4
資本や出資がない場合は、年間所得×1.25が限度額となります。

6.寄附金を損金算入するための手続き

法人から支出した寄附金を損益算入するには、別表十四「寄附金の損金算入に関する明細書」に必要事項を全て記載し、確定申告時に添付する必要があります。
法人の損益算入は、個人の所得控除よりも大分複雑ですので、実際に申請する際は税理士を担当につけるなどしておきましょう。

6-1.所得税と法人税の寄附金税制の比較(主なもの)

最後に、ここまで紹介した寄附金税制の概要を、所得税と法人税に分けて比較しておきます。

区分 所得税 法人税
国・地方公共団体 年間所得の40%を上限に、寄附金から2,000円を引いた全額を所得から控除 支出した全額を損金算入可能
財務大臣指定の公益法人
特定公益法人(信託) 特別損金算入限度額の範囲内で、支出した全額を算入可能
認定NPO法人
政党ほか政治系団体 損金算入限度額の範囲内で同上
その他 控除対象外

個人にしても法人にしても、区分欄の上2つを寄附先として選んでおけば、手続き上もっとも楽に寄附金控除を利用できます。

7.まとめ

以上、特定団体に寄附をした際に利用できる寄附金控除について、控除額の計算方法や申請の流れなどを解説しました。
税制はいつ改正されるか分かりませんので、実際に申請を検討する際は必ず最新情報をチェックしておきましょう。
控除額計算や申請手続きに行き詰まりを感じたら、ランドマーク税理士法人にご相談ください。

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