青色申告とは?メリットや申告するための手続きを解説

青色申告とは、確定申告の1つです。
「白色申告より控除額が多い」「申告が難しい」といった断片的なイメージを持っている方もいるでしょう。
本記事では、青色申告の概要や白色申告との違い、青色申告を行うメリット等を解説します。
青色申告を行うために必要な手続きの流れも解説するので、青色申告の利用を検討している方は、参考にしてください。

1. 青色申告とは

青色申告とは、確定申告方法の1つです。青色申告には法人税と所得税がありますが、個人事業主ならば所得税に青色申告を利用します。
青色申告は、帳簿を定められた形式に沿って作成し、その記録に基づき申告・納税を行います。

なお、所得のうち青色申告ができるのは、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」の3つです。不動産所得とは、不動産を賃貸に出した際の所得です。事業所得とは、農業や小売業、サービス業等の事業によって得た所得が該当します。自営業によって得られる所得と覚えておくとよいでしょう。
山林所得とは、文字通り山林を売買して得た所得が該当します。

一方、「給与所得」「退職所得」「譲渡所得」「利子所得」「配当所得」「一時所得」「雑所得」は青色申告の利用はできません。例えば、投資で配当にかかる所得税を申告したい場合は金額にかかわらず白色申告です。

青色申告での所得税申告を検討している方は、まず申告する所得の種類を確認してください。所得が何に該当するかわからない場合は、税務署の相談窓口や自治体が行っている税に関する相談会等を利用して確認しましょう。

2. 青色申告と白色申告の違い

青色申告を利用すると、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。控除額は65万円・55万円・10万円の3種類があり、山林所得のみ控除額が10万円までです。一方、白色申告では事業専従者控除はしかありません。つまり、青色申告には節税効果が大きいといえます。

また、青色申告は家族への給与を全額必要経費にできる、「青色事業専従者給与」が使えます。白色申告でも「事業専従者控除」は利用できますが上限があるため、家族を従業員として雇用していて一定の売上がある場合は青色申告のほうが高い節税効果があるでしょう。

さらに、赤字を3年間繰り越せるのも青色申告独自の特徴です。起業した年や大きな設備を入れた年は赤字になる可能性があります。青色申告を利用すれば、3年間赤字を繰り越せるので翌年以降が黒字でも、一定の節税効果があるでしょう。

このほか、10万円以上30万円未満の資産を「少額減価償却資産」として全額損金に計上できます。白色申告は10万円未満の少額資産のみなので、仕事に必要な高価な資材を購入した場合は節税効果が高くなるケースもあります。

その一方で、青色申告で55万円以上の控除を受けたければ複式簿記での帳簿の記帳が必要です。複式簿記は会計の知識がないと記帳が難しいので、会計ソフトの利用や税理士に記帳代行をしてもらうといいでしょう。その分、費用が余計にかかります。ただし、10万円の控除ならば単式簿記で可能なので、会計ソフトを利用すれば簡単に記帳できます。

3. 青色申告を行うために

ここでは、青色申告を行うために必要な書類や手続き方法を紹介します。
青色申告を行うには税務署に申請が必要です。

3-1. 青色申告の対象者

青色申告を行えるのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」の3種類で所得を得ている方です。
職業で説明すると、自営業や大家さんが該当します。自営業は農業や漁業といった一次産業の方から、コンビニをはじめとした小売業、フリーランスのクリエーターなど幅広い職業が該当します。
ただし、林業だけは「山林所得」という区分があるため、青色申告で控除が受けられる額は10万円までです。
林業を始めた方や、山林を売却した方は確定申告の際に早めに税理士に相談したり確定申告の相談会を利用したりしましょう。

なお、副業でも青色申告は可能です。近年は働き方改革で副業を許可する会社も増えました。例えば、仕事をしながらwebライターや動画配信等で収入があった場合、青色申告が可能です。ただし、投資の配当金は青色申告ができません。また、副業の場合、雑所得とみなされると青色申告の適用ができないので注意しましょう。

このほか、不動産を売却した際にかかる税金は「譲渡所得」に該当するため、青色申告はできません。親から受け継いだ不動産を売却して確定申告が必要な場合は、白色申告で行います。このほか、講演等で一時的に収入があった場合は「雑所得」に分類されるため、やはり青色申告はできません。

3-2. 青色申告承認申請書の提出する

「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。
新たに青色申告の先生をする場合は、青色申告をしようとする都市の315日までに提出すると翌年の確定申告から青色申告が可能です。

新規に事業を始める方は開業時期にも注意しましょう。新規開業(1/16以後開業)の場合は、2ヶ月以内に申請すれば開業した年から青色となれます。
今まで白色申告だった方が青色申告を始めたい場合は、315日までに提出してください。

なお、青色申告承認申請書を提出しても、書類の不備がない限り税務署から特別な連絡はきません。税務署から何の連絡もなければ受理されたと考えてください。

青色申告承認申請書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。提出はe-Taxでの電子申請のほか、郵送や窓口に直接提出がすることが可能です。

3-3. 青色申告の必要書類

青色申告をする際に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 確定申告書
  • 青色申告決算書
  • その他の添付書類

確定申告書とは、収入・所得・控除・税金の額などを記す書類です。ふるさと納税、生命保険、国民健康保険など控除に利用できる金額も忘れず記載しましょう。なお、「還付される税金」に0以上の数字が入った場合は、税金が還付されます。事業の種類によっては源泉徴収が行われているため、還付金が返ってくる場合もあります。

青色申告決算書は、年間の収入・経費等をまとめた書類です。損益計算書と貸借対照表を元に作成するので、帳簿付けが必要です。前述した複式簿記、単式簿記というのは決算書を作成するうえで必要な帳簿のつけ方です。

青色申告決算書は、「一般用様式」「不動産所得様式」「農業所得様式」「現金主義様式」の4種類があるので、所得の種類によって使い分けましょう。

青色申告決算書は4枚にわたっていますが、帳簿が完成していれば数字を入力していくだけです。

その他の添付書類とは、生命保険やふるさと納税の書類など、控除を受けるために必要な書類です。毎年12月~1月にかけて各所から送られてくるので、確定申告まで保管しておきましょう。

3-4. 青色申告の提出書類

青色申告の提出書類は、必要書類と同様です。帳簿や各種領収書は提出の必要はありません。
提出方法は、郵送、税務署の窓口に提出、e-TAXによる電子申告の3種類です。税務署の窓口に提出すると、簡易的ではありますが書類に不備がないか確認してくれます。
確定申告の提出期限は315日です。締め切り付近になると税務署の窓口が混み合います。可能ならば、時間に余裕をもって提出しましょう。

なお、青色申告で55万円以上の控除を受けたい場合は締め切りが厳守です。帳簿さえつけておけば申告書の作成は1日あれば可能です。青色申告で確定申告を行う場合は、会計ソフト等を利用して毎月帳簿をつけておきましょう。また、事業が忙しい場合は早めに税理士に記帳代行を依頼しておくと申告がスムーズです。

4. 青色申告のメリット

ここでは、青色申告のメリットをもう少し詳しく紹介します。事業や農業、家賃で収入が多い方以外でも、青色申告をするメリットがたくさんあります。

4-1. 最大65万円!青色申告特別控除が受けられる

青色申告を行う最大のメリットは、最大65万円の青色申告特別控除を受けられることです。控除額は65万円・55万円・10万円の3種類がありますが、55万円、65万円を利用できる所得には条件があります。

所得から最大で65万円控除されれば、所得税・住民税などが節税できます。税金の種類によっては税率も下がるので、一層の節税効果があるでしょう。また、10万円でも特別控除が受けられれば一定の節税効果があります。

4-1-1. 青色申告特別控除の65万円控除を適用できる人

65万円控除を適用できるのは、以下のとおりです。

  • 事業所得がある方
  • アパートは10室以上・貸家5棟以上から不動産所得がある方

なお、山林所得の場合は65万円の控除は利用できません。事業所得がある方に所得制限はないので、所得が低くても65万円の控除を受けられます。

4-1-2. 青色申告特別控除の65万円控除の適用要件

青色申告特別控除の65万円控除の適用を受けるためには、複式簿記による帳簿付けが必要です。
また、e-Taxによる電子申請が必須となります。前述したように、55万円、65万円控除を受けるには、複式簿記による帳簿付けが条件です。

近年は、帳簿ソフトを使えば簿記の知識がなくても複式簿記による帳簿付けが可能です。しかし、事業を拡大して売り上げが向上した場合、従業員が増え場合などは帳簿付けも複雑になります。毎月帳簿付けが大変な場合は、早めに税理士に帳簿付けや確定申告の書類作成代行を依頼しましょう。

4-1-3.e-Taxによる電子申告

e-Tax(国税電子申告・納税システム)は、マイナンバーカードと、マイナンバーカードを読み取る機能がついたスマホがあればオンラインで確定申告ができるシステムです。スマホでもパソコンでも確定申告が可能で、令和7年1月より、所得税の入力画面がスマホでも操作しやすいようにリニューアルされました。
65万の控除を受けたい場合は、e-Taxによる電子申告が必要です。事業を開業する際は、マイナンバーカードを取得し、電子申告できるように手続きしておきましょう。

4-1-4.電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿と国税関係書類を電子データで保存する際の条件や決まりを定めた法律です。
電子帳簿保存法に則って帳簿を保存している場合は、優良な電子帳簿となる要件を満たすことで65万円の控除が可能です。
電子帳簿保存システムを利用するのは専用のソフトウェアが必要になります。一定の費用はかかりますが、事業が大きくなった場合は導入するメリットも増えます。帳簿をつける際も便利です。
将来的に必要性が高くなると思ったら、優良な電子帳簿となる要件を満たすために、ソフトウェアの利用を検討してみてもいいでしょう。

4-2. 家族に対する給与を費用にできる

青色申告を利用すると、家族へ支払う給与を「青色事業専従者給与」として経費に上限なく計上できます。小売業や農業など一部の職業は、家族経営の割合が多い傾向があります。白色申告の控除は最大で86万円なので、家族で事業を行っている場合は青色申告にしたほうが高い節税効果があるでしょう。

ただし、「青色事業専従者給与」は事業に従事していることが条件です。事業に従事していない場合は、後日税務署から調査が入り可能性もあります。

4-3. 最大3年間赤字を繰り越せる

青色申告で確定申告を行うと、「純損失の繰越し」によって赤字を最大3年間繰り越せます。事業を開業したばかりだったり、大きな設備投資をしたりした場合、所得が赤字になる場合は珍しくありません。赤字の一定額を繰り越せれば、翌年黒字になった場合でも節税になります。

例えば、1年目で赤字が100万あり翌年に繰り越したとします。翌年、所得がプラス150万になったとき、100万円の赤字を繰り越せば、所得は50万となり、節税が可能です。
赤字は損失ですが、事業を始めたばかりの申告は赤字になる可能性が高いため、繰り越せば2年目以降の節税になります。

白色申告は赤字を繰り越すことはできません。そのため、事業の開業に合わせて青色申告ができるように準備を整えておきましょう。

4-4. 貸倒引当金を必要経費にできる

貸倒引当金とは、売上金を回収できなくなる損失を見込んで計上する引当金です。青色申告を行うと、貸倒引当金を経費として計上できます。貸倒引当金は、必ずしも計上する必要はありませんが、青色申告をする場合は節税効果があり、いざというときの備えにもなります。

ただし、事業年度ごとに計算する項目なので、貸倒損失が発生しなかった場合は戻しいれるのを忘れないようにしましょう。

4-5. 少額減価償却資産の特例の対象となる

「少額減価償却資産の特例」とは、減価償却資産のうち、取得金額が30万円未満の物品は購入した年の経費に全額計上できる特例制度です。資本金および出資金が、1億円以下の法人や常時使用する従業員の数が 1,000 人以下の個人事業主が利用できます。
この制度は、200641日からはじまり、2026331日まで継続予定です。

5. まとめ

今回は、青色申告の概要や利用できる所得の種類、利用するメリットなどを紹介しました。青色申告は、帳簿のつけ方こそ簿記の知識がいりますが、特別控除が最大65万円と節税効果の高い申告制度です。
現在は、オンラインで利用できる帳簿がいろいろ販売されており、年間1~2万円台で利用できます。購入すれば必要経費として計上できるうえ、税理士に依頼するより安価です。
なお、10万円の場合は帳簿のつけ方も簡単なので、まずは10万円の控除を目的に青色申告してみてもいいでしょう。
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