グリーンライフ知って得する税金の知識バックナンバー

所得税の税務調査とは何か

※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。

私は個人事業(不動産賃貸業と農業)を営んでおり、毎年確定申告を行っているのですが、税務調査が心配です。所得税の税務調査とはどういったもので、何を調査されるのか、また、税務調査に入られないようにするために、どんな事に気をつければよいのか教えて下さい。

わが国では納税者自らが税法を理解し、自主的に正しい申告・納税を行うことを目的とする「申告納税制度」が採られています。この制度の下では納税者は、所得税、法人税、相続税等の税法に則った正しい申告を行い、適正な税金を納めるという義務を負っています。ですから税務行政はこの制度を円滑・公正に運用していくため、各種の広報や相談窓口を設ける他に、申告を行わなかったり、正しい申告がされなかった納税者に対して税務調査を行い、正しい税金の金額を把握して申告額の是正をするのです。今回は、所得税の税務調査について解説を行っていきます。

1. 税務調査の流れ

 税務調査には任意調査と強制調査とがあり、任意調査に法的な拘束力はなく、現状調査や帳簿の調査が行われます。一方、強制調査には法的な拘束力があり、臨検、捜査、差し押さえ等がなされます。税務調査のほとんどは、前者の任意調査です。
調査の手順としては、最初に税務署から納税者(または税理士) に電話がきますので、調査の対象となる年度や、当日必要な書類について事前に確認しておくと良いでしょう。ただし、業種によっては抜き打ち調査もあり得ます。捜査官は、雑談から入り、業務内容、販売方法、業種の特殊性等について質問し、帳簿・証憑(しょうひょう)書類等(元帳や得意先元帳、会計伝票等)の提示を要求してきます。また反面調査といって、予め税務署が取引先や銀行の調査を行い、関係資料を持参してくる場合があります。税務調査時にその内容と不一致がある場合は、厳しく問い詰められます。税務調査の結果特に問題がない場合には、税務署から納税者または調査に立ち会った税理士に対し、調査終了の通知がきます。問題箇所が見つかった場合には修正申告を行うことになりますが、その場合には延滞税や過少申告加算税や重加算税がかかります。

2. 税務調査に際して気をつけなければならないこと

 所得税の税務調査では、収入が全て計上されているかということが問題になります。今回の質問では不動産賃貸業と農業を営まれているようですが、農業所得では売り上げが通帳に入金されている場合にはその金額を確認し、市場売り上げでは仕切りが、庭先売りではノート等にその金額が計上されているか確認します。不動産所得では駐車場の賃貸料が漏れていないかの確認が行われます。費用については支払った手数料、修繕費の領収書・明細の確認。租税公課では固定資産税が適正かを名寄せと実際の利用の突き合わせが行われます。建物の取得価額(建設費)のもととなった領収書・契約書の確認もされます。特にアパート入居者退去時の敷金の精算には入念なチェックが行われます。家主側で収入として計上していないのに、退去者が敷金から負担した修繕費を家主側で費用としている場合には修正申告の対象になります。

 

【参考】 その他の会計処理上の注意点

1. 減価償却資産の届出関係

 減価償却の方法については、原則、個人は定額法と決められています。これ以外の方法を採用する場合には、税務署へ届出をおこないます。以後は、選択した償却方法を継続して適用することになります。ですから届出を出していないのに個人事業者が事業用資産の減価償却費を定率法で処理し、所得を計算してしまいますと、それは償却超過となり税務上認められません。

2. 個人事業の個人的支出・接待交際費

 税務調査時に接待交際費の領収書について「これはどこの誰を接待した時の領収書ですか」とその内容を聞かれて回答が出来ない場合、事業者の個人的な支出ではないかと疑われ、経費否認の対象とされる危険があります。1枚2枚の領収書だったらまだしも、何十枚もの領収書の内容をいつまでも覚えているというのは無理な話です。したがって、接待した人の所属、氏名等をその都度領収書のすみにでも書き入れておくとよいでしょう。

3. 青色専従者給与

 青色申告者の場合、青色専従者の給与が必要経費として認められていますが、この専従者給与の金額の妥当性がしばしば問題となります。不動産賃貸業ではその事業の規模にもよると思いますが、共有部分等の掃除を毎日やっている場合や、入退去の管理も自分でやっている、すべて不動産管理会社に委託している等その実態はさまざまです。そのため不動産賃貸業の専従者の、従事の程度から見て「専ら事業に従事しているかどうか」について見解が異なる場合が生じてきます。ですから普段から専従者がどういった業務を行っているのか説明できるように記録をしておくとよいでしょう。

4. 自家消費

 農業をされている方は自分の作った米や野菜を自ら消費するということがあるでしょう。また小売業・飲食店業の方の場合にも店の商品を自分で食べたり使用したりということが当然でてきます。これを自家消費といいます。この自家消費分は所得計算売り上げに計上しなければなりません。しかし、自家消費分をどうやって見積もって売り上げにするかが問題になります。当然、家族の人数や販売している商品によって、計上金額は異なってきます。ですから自家消費のある個人事業者の方は、税務調査においてその計算根拠を聞かれたときは回答ができるよう、普段から何をいくら消費したか、ある程度明確にしておき計算根拠を作っておきましょう。

5. 共済の取り扱い

 個人の方が、建更共済等に加入して満期を迎えると満期共済金がもらえます。そもそも建物更生共済の掛金は、必要経費への算入が認められている部分と積立掛金部分とに分かれており、事業用の建物更生共済が満期を迎えた場合には、満期共済金相当額から積立掛金を控除した金額がその事業年度の所得(一時所得)または損失になります。
一時所得(満期共済金を受け取った場合)は次のような算式によって求められます。
(収入金額-積立部分の金額-50万円)×1/2=一時所得の課税対象
となります。ですから満期共済金を受け取ったら申告漏れのないように注意しましょう。

今回は所得税の税務調査と、申告時の注意点について解説を行ってきました。(2)で述べた以外にも会計処理上気をつけなければならないことはたくさんあります。分からないことは農協の方や税理士等の専門家に相談するのもよいでしょう。いずれにせよ、万が一税務調査に入られたときに備えて、普段から領収書などの証憑書類をもとにきちんと貴重をおこない、適法に会計処理をして証憑書類等もきちんと整理しておくことが大切です。

 

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