生命共済による相続税の節税
※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。
将来私が死亡した場合、家族は相続税の申告をすることになると思われるのですが、生命共済をうまく活用すれば、相続税の節税効果があると聞きました。どう活用すれば、どんな効果が得られるのか、具体的に教えてください。
まず生命共済には非課税枠が用意されていて相続税を軽減することができます。また、贈与等と上手に組み合わせることにより節税効果を期待できます。さらに現金で支払われるため、たとえば財産が土地ばかりで現金がなくても、受け取った共済金を納税に充てることで不動産の売却や物納等を避けることができますし、相続人が複数いる場合は、不動産などと違い相続財産を分割しやすくなります。今回はこの生命共済とその節税効果について解説していきます。
1. 生命共済と税金
生命共済は、本来の相続財産(民法上の財産)ではないのですが、相続税法上、課税の公平を図るという観点から相続財産と擬制して相続税の課税財産を構成する「みなし相続財産」とされ、相続税が課税される場合があります。また、その内容によっては他の税金がかかることもあります。例えば被共済者、共済金受取人が同一であっても、掛金の負担者が誰であるかによって下の表のような税金が課されます。
2. 生命共済の非課税
相続人が受け取って受取共済金に、相続税がかかる場合があることはお分かりいただけたと思います。たしかに受取共済金は相続税法上相続財産とみなされることがあるのですが、非課税とされる部分があります。
3. 生命共済の具体的な活用方法とその効果
相続対策として共済を利用するならば、一生涯の保障が続く「終身共済」などを利用するのがよいと思います。この 「終身共済」を利用した場合の節税効果について具体例を用いてみていきましょう。
1) 父(被相続人)が被共済者のケース
(イ)【契約形態】
契約者(共済掛金負担者)‥父 被共済者‥父 受取人‥子(相続人)
かかる税金…相続税
法定相続人が多い場合に有効な掛け方です。その数が多ければ多いほど非課税の枠が広がるからです。父が契約者となり、共済掛金を負担して相続人を受取人とし、非課税枠を最大限利用します。節税対策としての生命共済の最大のメリットは、やはりこの非課税枠があることでしょう。この制度によって相続税評価額は、株や債券といった他の金融商品や、不動産だけで資産を所有しているよりもぐっと低くなります。
(ロ)【契約形態】
契約者(共済掛金負担者)‥子 被共済者‥父 受取人‥子
かかる税金…所得税
父が子に毎年共済掛金を贈与します。そして子が自らを受取人として契約者となり、共済掛金を払い込みます。こうすれば、毎年父が子に現金を贈与することで相続財産が減少しますし、受取共済金は子の一時所得となり、次に参照した算式によって求められる一時所得が、他の所得と合算して課税されるので、税金が軽減されます
{受取共済金額-払込共済掛金-50万円(特別控除)}÷2=一時所得※この形態をとる場合、次のようなことに気をつけてください。
- 贈与の事実が確認できるようにし、贈与額の問題(基礎控除110万円・連年贈与等)
- 共済掛金は子の口座から支払う
- 父の確定申告の際、生命保険料控除を適用しない。
2)母が被共済者のケース
一次相続の際
(イ)【契約形態】
契約者‥父 被共済者‥母 受取人(共済掛金負担者)‥父
かかる税金…相続税(父の「生命保険に関する権利」を相続することになるため)。
(ロ)【契約形態】
契約者(共済掛金負担者)‥母 被共済者‥母 受取人‥子
かかる税金‥相続税
父に持病があって、共済に入れないこともあるのでしょう。そうした場合、配偶者を被共済者とした契約形態でも、節税効果はあります。まず、(イ)の形態を利用して一次相続ではできる限り配偶者が相続し、相続税における配偶者の税額軽減を活かします。父が亡くなっても死亡共済金は支払われませんが、父のものであった「生命保険に関する権利」を相続人は相続することになります。その評価は次のⅠ・Ⅱの有利選択で、現金で残しておくよりも相続税評価額軽減が期待できます。
I.相続開始時に当該契約を解約した場合に支払われる解約返戻金の額
II.(払込掛金累計額×70%)-(死亡共済金額×2%)
(ただし、共済掛金が全額一時払いの場合は一時払掛金の額)
※Ⅱは2003年4月1日から2006年3月31日の間に相続、遺贈によって権利を取得した場合に利用可能。
その後契約を(ロ)の形態に変更すれば二次相続があった際には非課税枠の活用という効果が期待できます。
たとえ相続税がかからない方であっても、遺産をどう分けるかは多くの場合問題となります。お金がすべてとはいいませんが、遺産分割でもめた場合でも、生命保険や生命共済によって現金を確保することができれば、そうした問題をうまく解決することができるのではないでしょうか。
ただし、人によって状況は千差万別ですから、どういった共済プラン、節税対策が最も効果的かについてはJAの職員や専門家に一度相談してみることをおすすめします。
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