畑が道路拡張の対象になった場合
※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。
- 収用による課税の特例は -
今年になり、10年前に父が亡くなったときの相続で取得した畑が、道路拡張に伴い市に収用されました。収用による資産の譲渡には特例があると聞いたのですが、その特例について教えてください。
収用による課税の特例には「補償金で代替資産を取得する課税の繰り延べの特例」、「譲渡益から5,000万円を控除する特別控除」の2つがあります。納税者は、この2つの特例から有利な方を選択することができます。ただし、制約もあるので適用する場合には注意が必要です。
1. 補償金で代替資産を取得する課税の繰り延べの特例?
まず、収用の補償金には、「対価補償金」、「収益補償金」、「経費補償金」、「移転補償金」などがあります。土地などで課税の繰り延べや特別控除の特例の適用を受けられる補償金は、「対価補償金」に該当する部分になります。「収益補償金」については、事業を休止するにあたっての補償金であることから、不動産所得、事業所得等の収入に加えます。「経費補償金」についても事業の廃止、休業などに伴って発生する損失の補てんであり、不動産所得、事業所得等の収入金額に含めます。「移転補償金」については、移転するためにかかった費用の補てんなので、余った部分については、一時所得の対象となります。
この特例の対象となる対価補償金の全部で代替資産を取得したときは、その土地の譲渡はなかったものとされるため譲渡所得は課税されません。ただし、代替資産の取得価額は収用された資産の取得価額を引継ぐので、代替資産を将来売却するする場合には、収用された元の土地の取得原価が取得費となります。例えば、6,000万円で購入した土地が1億円で収用され、その1億円で代替資産となる土地を購入した場合、収用された年度に譲渡所得税は課税されません。しかし、数年後に代替資産として取得した土地を、売却することになった場合のその土地の取得費は1億円ではなく、収用された元の土地の取得価額6,000万円となります。つまり、収用された時のように1億円で売却すると譲渡所得税が課税されることになります。
また、代替資産の対象となる資産は「個別法」、「一組法」、「事業継続法」の3種類に限定されています。
(1)個別法
個別法とは、収用された資産と同じ種類の資産を代替資産として取得することです。この際には用途は問いません。
例えば、(1)土地の補償金9,000万円の入金があり、その代替資産として7,000万円の土地を取得した場合、9,000万円の補償金に対して7,000万円の土地を取得したので9,000万円-7,000万円=2,000万円については譲渡所得税が課税されます。(2)建物の補償金3,000万円の入金があり、その代替資産として5,000万円の建物を取得した場合については、3,000万円の補償金で5,000万円の建物を取得したので3,000万円-5,000万円<0となるため譲渡所得税は課税されません。
(2)一組法
一組法とは、収用された2以上の資産を組み合わせてと、以下の一の用である資産を代替資産とすることができます。
- 居住の用
- 店舗または事務所の用
- 工場、発電所または変電所の用
- 倉庫の用
- その他
(3)事業継続法
事業継続法とは、収用された土地・建物等が事業用である場合には上記の個別法、一組法の適用に関係なく代替資産の対象となるものです。例えば、農地が2億円で収用され賃貸用マンション2億円をその補償金で建設した場合には代替資産の対象となり譲渡がなかったものとして取り扱われます。
2.特別控除の特例
資産を収用により譲渡した場合において、課税の特例を選択しない場合には、次の要件を満たせば収用により生じた譲渡益に対して、5,000万円の特別控除を受けることができます。
【要点】
- その年中に収用された資産の全部について課税の繰り延べの特例を受けないこと
- 収用された資産について、公共事業施工者より最初に買取の申し出を受けた日から6ヶ月以内に譲渡したこと
- 一つの事業につき、資産の譲渡が2年以上の年に分けて行われた場合には最初の年に譲渡した資産に限られること
- 公共事業施工者より買取の申し出を最初に受けた者が譲渡したものであること
なお、2004年度税制改正により、04年1月1日以後に行う土地・建物等の譲渡について課税の繰り延べの特例・特別控除を受けたときには、優良住宅地の造成費のために土地等を譲渡した場合の軽減税率は適用できなくなりました。
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