相続税の土地の評価方法が変わります
※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。
相続税の土地の評価で広大地の評価が変わったと聞いたのですが、内容を教えてください。
大きな土地の評価が従来よりも簡単になり、評価も安くなりました。ただし、注意すべき点もあります。
土地の評価については、一般的に路線価が決まっているのだからどの税理士が評価しても同じ、誰がやっても同じ、と思っている方が多いのではないでしょうか。しかしながら、相続時の土地の評価は100人の税理士が評価すると100通りの評価方法と評価額があると言われています。特に広大地や高低差のある宅地とするには開発行為が必要な土地のついては、公共公益的施設用地となる部分の地積の算定に当たり、開発想定図等を作成する必要があり、その作成には専門的な知識が要されることから、有効宅地化率の算定は難しいものとされてきました。事実、税理士により同じ土地について評価額も何千万円と違ってくる例も多くあります。
さらには、相続評価で通常使われる財産評価基本通達の広大地評価方法を使ったとしても実勢価額よりもだいぶ高い評価額になるケースも見られ、不動産鑑定士による評価に基づいて申告又は、更正の請求をする事例が目立つようになってきました。
そこで、今回の改正により広大地の評価が大幅に変わり、広大地の有効宅地を計算する方法が以下のようになりました。
広大地の評価の対象となるのは、その地域における標準的な宅地の地積に比べて、著しく地積が広い宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合には、公共的施設用地の負担が必要と認められるもので、大規模工業用地に該当するもの及び中高層の集合住宅の敷地の用地に適しているものを除きます。なお、広大地の評価方法は、原則として次に掲げる算式によって評価されます。
※1 通常の宅地の正面路線価は、路線価に奥行価格補正率を乗じた後の価額で判定するが、広大地の正面路線価は、面している路線のうち原則としてもっとも高い路線価で判定することに留意します。
※2 広大地補正率は次の算式により求めた率をいいます。
注)広大地補正率は0.35を下限とします。また、広大地補正率の概算早見表以下の通りです。
地積 | 広大地補正率 |
---|---|
1,000㎡ | 0.55 |
2,000㎡ | 0.50 |
3,000㎡ | 0.45 |
4,000㎡ | 0.40 |
5,000㎡ | 0.35 |
今回の改正により当事務所で取り扱っている相続税の評価額も次のように評価が下がりました。
【A地】JR横浜線沿線 (駅より徒歩7分、自宅・駐車場) 1121平方メートル | |
---|---|
通達改正前の評価額 | 1億7448万4231円 |
通達改正後の評価額 | 1億0065万3168円 |
【B地】 相鉄線沿線 (駅より徒歩10分、自宅・駐車場) 1254.34平方メートル | |
通達改正前の評価額 | 1億9928万4373円 |
通達改正後の評価額 | 1億3646万0143円 |
【C地】 東急田園都市線 (駅より徒歩20分、自宅) 946平方メートル | |
通達改正前の評価額 | 1億5295万8200円 |
通達改正後の評価額 | 8365万6672円 |
【D地】 JR横須賀線 (駅より徒歩30分、駐車場) 730平方メートル | |
通達改正前の評価額 | 7360万7360円 |
通達改正後の評価額 | 4524万9050円 |
今回の広大地評価の改正によるメリットは、(1)広大地の評価額が従来よりもだいぶ安くなる、(2)評価方法が簡単になり、広大地の評価があまり慣れていない人でも評価が出来るようになった、(3)不動産鑑定士を使って評価しなくていい土地が増えるので相続税の申告費用が従来よりも少なてよくなった、という3点が挙げられます。しかしながら、時価1億円の土地が6000万円で評価された場合、本来であれば1億円で売ることが出来る土地を6000万円で物納してしまう危険性があるというデメリットもあります。
これからの相続には、土地の評価について強く、土地を適正な実勢価格で販売できるようなチャンネルを持っている、専門家のチームに相談することが必要です。
相続時において納税資金・分割資金を捻出するために、土地を売却する必要のある組合員は多くいると思います。地元の農協では不動産の売買も取り扱っています。先祖伝来の土地を売っているのは大変な抵抗があると思いますが、農協のネットワークを生かして組合員にとって有利な相続税額・土地の売却価額を出してもらうことが重要です。
【広大地評価のフローチャート】
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