贈与による相続税対策になるか
※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。
私の家では代々受け継いできた土地を利用し、農業や不動産賃貸業を営んでおります。わたしに何かあった場合、妻と子供たちが土地やその他の財産を相続することになりますが、相続税が心配です。何かよい相続税対策はないでしょうか?
アパート等の経営をする場合、建物をきれいにしておかないと、入居者が決まらないことが多いので、修理は必要になってきます。その支出した修理代は修繕費として全額経費とすることができる場合と、減価償却資産としなければならない場合があります。この区分は、その修理代が支払われた目的とその金額によって区分をします。以下で詳しく説明します。
贈与を行っておくと、その分相続財産が減るため、相続税額を減らすことができます。また、居住用の不動産を配偶者に贈与する場合には、「贈与税の配偶者控除」という特別な制度があります。以下、具体的に説明していきます。
多くの土地を所有されている農家の方にとっては、相続税は深刻な問題です。相続財産が大きければ、相続税は多額になり、納税資金を準備するのは困難になっています。
時間を掛けて相続税対策を行えるような場合は、「生前贈与」が有効的な対策方法となります。
贈与税は累進課税率となっているため、贈与財産の価格が大きければ大きいほど、税率も高くなります。たとえば、妻と子供3人に対してそれぞれ10年間150万円ずつ贈与すると、合計6,000万円贈与でき、贈与税額は年間16万円、10年間で160万円、実効税率は2.6%となります。
一方、相続税の税率が40%の人であれば、2,400万円の相続税を軽減することができ、2,400万円-160万円=2,240万円も節税できることになります。
ただし、相続開始前3年以内の相続人に対する贈与財産は相続財産に持ち戻されてしまいます(申告をした贈与税は相続税から控除されます)。相続開始前3年以内の贈与であっても、法定相続人でないお孫さんなどに贈与した場合には相続財産に持ち戻されることはありません。
さらに、贈与を使った有効な相続税対策として「贈与税の配偶者控除」もあります。この制度は結婚して20年以上経過する夫婦が、配偶者から自宅やその敷地などの財産(居住用不動産といいます)の贈与を受けた場合には、基礎控除の110万円をあわせて2,110万円分まで贈与税がかからないというものです。
たとえば、この制度を利用した場合、評価額3,500万円の土地に住んでいる人は2,110万円分を配偶者に贈与しておけば、実際に相続が発生したときにその土地は1,390万円の評価額になるということになり、税率が40%の人は相続税が556万円減ることになります。
この制度を利用するための要件は以下のとおりです。
- 1)結婚して20年以上の夫婦であること。これは、婚姻の届出の日から20年ということになりますので、入籍されていない期間は含まれないことになります。また、1年未満の端数は切り捨てますので19年11ヶ月では、婚姻期間20年という要件は満たしていないことになります。
- 2)贈与されるものが居住用財産そのもの(または居住用不動産を取得するための金銭で翌年の3月15日までにその不動産を取得しているもの)であること。つまり、自宅以外の家屋もしくは自宅の敷地以外の土地である場合には、この制度の適用は受けられないことになります。
- 3)同一の配偶者からの贈与で過去にこの制度の適用を受けたことがないこと。つまり、たとえ控除不足があっても、同一の配偶者から一生に一度しかこの制度の適用を受けることができないということになります。
- 4)この贈与を受けた配偶者はその居住用不動産に翌年の3月15日までに居住し、かつ、その後も引き続いてそこに居住する見込みであること。この贈与を受けた居住用不動産について贈与を受けた後にその不動産について売却の予定などがある場合には、この制度を適用することができないということになります。
これらの要件を満たしている場合、必要書類を添付し、税務署長に贈与税の申告書を提出することにより適用を受けることができます。
【贈与税の配偶者控除に必要な書類】
- 戸籍謄本、居住用不動産の登記簿謄本
- 戸籍の附票の写し
- 住民票の写し
- 贈与を受けた土地・家屋の固定資産税評価明細書(路線価方式により評価する場合は必要ありません)
本来であれば相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産は、相続財産に持ち戻され相続税の対象となってしまいます。しかし、この制度の適用を受けた場合には、たとえ3年以内に相続が発生した場合でも2,000万円の特別控除は生前贈与加算の心配がありません。
ただし、贈与税の配偶者控除を利用する場合には不動産の登録免許税、不動産取得税、税理士報酬、司法書士報酬等の経費がかかります。贈与税がかからない場合でも費用はかかってしまいます。
以上のように、生前贈与は長い時間をかけるとより有効であり、配偶者控除は多少の経費はかかりますが効果的です。自分の家にはどの方法が一番合うのか、実際に相続税の試算をして相続対策として有効かどうかを検討してみる必要があるでしょう。
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