財産目録とは?書式や作り方から記載内容まで解説!

遺言書作成時や遺産分割協議時などに用いられる財産目録についてお調べ中ですね。
財産目録を作ることになったものの、書式や作成方法がわからずにお困りになられる方はとても多いです。
財産目録は正しく作らなければ、大きなトラブルになることも考えられるので注意しなければなりません。
今回は財産目録とは何か、作成する理由、記載内容などについて解説します。
財産目録について正しい知識を整理して、適切な内容で作成しましょう。

 

1.財産目録は被相続人の財産を種類ごとに一覧にしたもの

まずは財産目録がどういうものなのかについて、正しく確認しておきましょう。
財産目録というのは、相続財産がどのようなものでどれくらいあるのかについて整理したものです。

財産目録は、たとえば以下のような形式となっています。

参考:東京地方裁判所 財産目録

このように、不動産や預貯金などの資産だけではなく、負債についても整理します。
相続では資産だけではなく負債も引き継がれるので、財産目録でしっかりまとめておけばトラブルの予防にもなるでしょう。

財産目録には「絶対にこうしなければならない」という特定の書式はありません。
この後にご説明しますが、総財産を明らかにすることや遺産分割協議を公平に行うことといった目的に合っていれば問題ないのです。
したがって、全ての財産を漏れなく具体的にリストアップできていれば良いでしょう。

ポイントは、簡単に財産を特定できるくらいまで具体的に記載しておくことです。
たとえば預貯金であれば、金融機関名や支店名、口座番号まで調べて示しておくと、後から特定の手間がかかりません。

また、相続のときには相続税の申告についても考えなければなりません。
相続税を申告するときには、評価額が重要となります。
相続人がそれぞれ別の時点での評価額をイメージしたまま遺産分割協議を始めるとトラブルの原因になるので、財産目録にはいつの評価額なのかまで書いておきましょう。

参考例を見ただけでは、活用シーンがあまりわからない方もいらっしゃるかもしれません。
相続財産をリストアップしてわかりやすくまとめることで、さまざまな場面で役に立ちます。
代表的な活用シーンは、遺言書を作成するときや、遺産分割協議で相続人が話し合うときです。
ただし、相続するにあたって財産目録を必ず作らなければならないと決まっているわけではありません。
しかし、遺産分割調停を行いたいなら、家庭裁判所に財産目録を出さなければなりません。
ほかにも遺言執行者がいるときには、遺言執行者は相続人に交付するために財産目録を作る必要が出てきます。

 

2.財産目録を作成する理由

財産目録を作成する主な理由は、2つあります。
どのような理由かというと、以下の通りです。

1.総財産を明らかにするため
2.分割協議を公平に行うため

どちらも相続の際にはとても重要なポイントとなります。
相続のときに相続人の負担が軽くなるので、可能であれば作るほうが良いでしょう。

 

2-1.総財産を明らかにするため

1つ目の総財産を明らかにするためというのは、相続をするにあたって全ての財産を把握することが必要だからです。
相続では被相続人の財産を全て引き継ぎます。
つまり、総財産が明らかになっていなければ、相続人が集まってもどう分配するのか話し合うことができません。
総財産を把握できていないと、話し合っている最中も「他にも財産があるのではないか?」「本当にこれだけしか財産がないのか?」などと揉めやすくなります。
相続人ができるだけトラブルなく円滑に相続を実行するためには、財産目録で被相続人の総財産を明らかにすることが重要なのです。

また、被相続人となる立場の人が存命の間に遺言書を作成する場合にも、財産目録で総財産を明らかにすることは大切だと考えられます。
遺言書は相続が起きたときに誰にどの財産をどれくらい相続させるのか、詳しく記載するものです。
したがって、財産目録によって総財産が整理されていれば、抜けなく全ての財産について考えることができます。

 

2-2.分割協議を公平に行うため

2つ目の分割協議を公平に行うためというのは、財産目録がない状態で遺産分割協議を行うと不公平になりかねないためです。
遺言書が残されていない場合の相続では、相続人が全員集まって遺産分割協議という話し合いを行います。
そのときに総財産を全員が理解した上で、話し合わなければなりません。
一部の人だけが存在を知っている財産がある状況で話し合うと、恣意的で不公平な相続になる可能性が出てしまいます。
もしも遺産分割協議がまとまった後に追加で財産が残っていたことがわかったら、遺産分割協議はやり直す必要があるので注意しておきましょう。

 

3.財産目録に記載するもの

「財産目録を作りたいけれど、何をどこまで書けば良いのかわからない」とお悩みの方も多いはずです。
ここからは、財産目録に記載するものをプラスの財産とマイナスの財産について解説していきます。
調べ方もあわせてお伝えしますので、参考にしてください。

 

3-1.プラスの財産

財産目録に記載するプラスの財産には、以下のようなものがあります。

  • 預貯金、現金
  • 不動産(土地や建物)
  • 有価証券
  • その他の財産(自動車や会員権、宝飾品について)

場合によっては、プラスの財産が多数あることも考えられます。
記載漏れが出ないように、順番に確認していきましょう。

 

3-1-1.預貯金・現金

1つ目は、預貯金・現金です。
財産と聞いて、真っ先にイメージする方が多い内容でしょう。
複数の銀行口座を持っている場合には本人も忘れている預貯金があることも珍しくありません。
財産目録を作るときには、念の為にしっかりと全ての銀行口座をリストアップできているのか確認することをおすすめします。
銀行口座の探し方としては、以下のような方法が主流です。

  • 通帳やキャッシュカードがないかを探す
  • 銀行名の入っている粗品がないかを探す
  • 銀行からの郵便物がないかを探す
  • 自宅と会社に近い銀行に一通り問い合わせる
  • 税理士に依頼したことがあるなら書類が残っていないか問い合わせる
  • スマートフォンやパソコンにメールが来ていないか確認する

少し大変ですが、金額が大きい可能性も高いので時間をかけて探すようにしましょう。

 

3-1-2.不動産(土地や建物)

2つ目は、不動産(土地や建物)です。
不動産の場合も全てを探し出してリストアップするのは、手間がかかります。
しかし、以下のような方法で探してみてください。

  • 固定資産税納税通知書がないかを探す
  • 権利証や登記書類がないかを探す
  • 市区町村役所で名寄帳を手に入れる

親族が誰も知らない不動産を持っていたことが遺産分割協議後にわかり、トラブルになるケースは少なくありません。
不動産も金額が大きくなりやすいので、慎重に調査して財産目録に記載していきましょう。

 

3-1-3.有価証券

3つ目は、有価証券です。
有価証券とは、株式や投資信託の受益証券のような証券市場で売買できる、財産の権利・義務が記載されている紙を指します。
電子化されており見つけにくい財産ですが、以下のような方法で探してみてください。

  • 証券会社や金融機関からの書類がないかを探す
  • 四半期ごとに届く報告書がないかを探す
  • 通帳に配当金の振り込み履歴がないかを探す
  • スマートフォンやパソコンのブックマークを確認する
  • スマートフォンやパソコンのメールを確認する

書類が見つからない場合でも、スマートフォンやパソコンをチェックすることで有価証券の存在を知れる可能性は高いです。
家のなかを探すだけではなく、電子機器の中身も確認しましょう。

 

3-1-4.その他の財産(自動車や会員権、宝飾品について)

最後は、その他の財産(自動車や会員権、宝飾品について)です。
これらについては、まずは家のなかを探したり、被相続人の今までの生活を思い返して財産がないかを考えます。
ゴルフ会員権やリゾートクラブ会員権といった会員権は、何か関連する書類や物が残っているかもしれません。
会報誌や会費支払の書類、記念品がないかを確認してみてください。

 

3-2.マイナスの財産

財産目録を作る際にはプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も記載しなければなりません。
財産目録に記載するマイナスの財産には、以下のようなものがあります。

  • 借金や債務
  • 葬式費用

マイナスの財産は記載するのを忘れやすいので注意してください。
それぞれの調べ方について、順番に確認していきましょう。

 

3-2-1.借金や債務

1つ目は、借金や債務です。
相続の際に揉めやすいのが、被相続人しか存在を知らなかった借金が発覚すること。
相続では借金のようなマイナスの財産も引き継ぐことになるので、財産目録に抜けなく記載して冷静に話し合うことが必要です。
借金には、たとえば以下のようなものが考えられます。

  • カードローンの負債
  • 消費者金融からの借り入れ
  • 事業用ローンや融資の残額
  • 個人からのプライベートな借金
  • 家賃や水道光熱費の滞納
  • 携帯代金の滞納

基本的には、家のなかに書類や借金を示す借用書などの証拠がないかを探すことになります。
過去の振り込み履歴から借金の存在が推測できるケースも多いので、見てみてください。
消費者向けのローンは、JICCやCIC、KSCといった信用情報機関に情報開示の請求をしましょう。
信用情報機関はローンやクレジットの利用状況を管理しているので、問い合わせることで詳細な借金の情報がわかります。

 

3-2-2.葬式費用

2つ目は、葬式費用です。
葬式の費用は被相続人の預貯金から支払うか、喪主が支払うか、といったケースが一般的となっています。
後から葬式費用の支払いについて揉めないように、財産目録を作成するときに葬式費用のことも考えておくと安心です。
どこの葬儀会社にいくら支払うのかを財産目録の負債欄に記載し、相続人で話し合いましょう。

 

4.注意点

財産目録についてここまで解説してきましたが、最後に作成時の注意点もお伝えします。
せっかく財産目録を作っても、注意点を押さえておかなければトラブル予防に役立たない可能性があるので気をつけてください。
財産目録を作成する際には、以下の2点を意識しましょう。

  • 記載漏れがないこと
  • 正確に記載すること

これら2つのポイントを意識しながら財産目録を作ることで、相続でのトラブルが防ぎやすくなります。

まず、記載漏れに関しては細心の注意を払わなければなりません。
財産目録は、総財産をリストアップしていることに意味があります。
「わかるものだけとりあえず書いておこう」という不完全な状態のまま、財産目録として相続人全員に共有してしまうと大きなトラブルになりかねません。

もしも抜けがあった場合には、遺産分割協議をやり直すなど相続人全員に負担が生じてしまうので要注意です。
プラスの財産もマイナスの財産も漏れがないように気をつけながら、慎重に財産目録を作っていきましょう。

そして、財産目録は正確に記載することも大切です。
できるだけ具体的に正しく記載していくことで、遺産分割協議や相続のときの手間を省くことにつながります。
たとえば車なら車種だけではなく現在の保管場所やナンバープレートも記載する、時計であればメーカーだけではなく品名や製造番号、保管場所も記載するといった具体性を意識してみてください。
財産目録を見た相続人全員が公平に内容を把握できるように、細かく正確に記載すればトラブル予防に大きく役立ちます。
詳細がご自身ではわからない財産については、専門家に相談することも必要になるでしょう。

 

5.まとめ

今回は財産目録について、基礎的な事柄から作成時のポイントまで解説しました。
財産目録を作成するのは多くの場合、義務ではありません。
しかし、財産目録を作成しておくことによって遺産分割協議や相続手続きが円滑に進みます。
相続で争うことにならないためにも、財産目録を作成するのが良いでしょう。
財産目録を作成する際には、プラスの財産もマイナスの財産も正しく具体的に記載してください。
もしも財産目録について不安が残るようであれば、早めに専門家に相談されることをおすすめします。
 

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