相続財産にはどのようなものがあるのか気になる方もいますよね?
相続税が課税される財産と、課税されない財産ではどのような違いがあるのでしょうか。
円満に相続を行うためには、課税される財産と課税されない財産を知っておくことが大切です。
とはいえ、専門的な知識がなければ分からないことも多いでしょう。
そこでこの記事では、相続財産について、課税対象となる財産やならない財産、相続財産の調査方法などを解説します。
1.相続財産とは
相続財産には、相続税がかかる財産と、かからない財産があります 。
課税対象となるかならないかは相続税法によって定められています。
全ての財産が課税対象となるわけではないので、生前対策をする場合は自身の財産の中で課税対象となるものはどれか把握しておいたほうがよいでしょう。
課税対象となる財産を把握することが、トラブルのない円満な相続へと繋がります。
2.相続財産になるもの、ならないもの、みなされるもの
相続財産には多くのものが含まれます。
その中にはプラスの財産もありますが、借金などのマイナスの財産もあります。
そこで、ここでは以下のことについて詳しく解説していきます。
- 相続財産になるもの
- 相続財産にならないもの
- 相続財産とみなされるもの
2-1.相続財産となるもの
相続財産となるものにはどのようなものがあるのでしょうか?
相続財産は以下の2種類に分けられます。
- プラスの財産
- マイナスの財産
2-1-1.プラスの財産
相続財産の中には預貯金や不動産、株式などのプラスの財産があります。
不動産の中には家や土地、山や農地なども含まれます。
このように多くの方が相続と聞いてイメージするものは、プラスの財産が多いです。
2-1-2.マイナスの財産
相続財産の中には借金や税金などのマイナスの財産もあります。
マイナスの財産として以下のようなものがあります。
- 借金
- 住宅ローン
- 買掛金
- 未払いの税金
- 未払いの家賃
- 未払の医療費など
相続と聞くと、多くの方が預貯金や不動産などプラスの財産をイメージするかと思いますが、上記のようなマイナスの財産も多いです。
2-2.相続財産とならないもの
相続財産とならないものにはどのようなものがあるのでしょうか。
以下のようなものは相続財産となりません。
- 被相続人の一身専属権
- 祭祀に関するもの
被相続人の一身専属権とは、性質上他の人に譲渡することができないその人のみに与えられている権利のことです。
特定の人だけが有する権利で、他の人は有することができないので相続財産となりません。
一身専属権は「帰属上の一身専属権」と「行使上の一身専属権」があります。
「帰属上の一身専属権」には以下のようなものがあります。
- 代理権
- 使用貸借権
- 扶養請求権
- 生活保護受給権
- 国家資格
- 身元保証人の地位
- 労働者の地位
- 親権
- 罰金など
「行使上の一身専属権」には以下のようなものがあります。
- 離婚請求権
- 慰謝料請求権など
祭祀に関するものには以下のようなものがあります。
- 仏壇や位牌などの祭具
- 墓地や墓石
- 弔慰金、香典など
これらは相続財産に含まれません。
しかし、弔慰金の場合は、その金額によって弔慰金となるのか、死亡退職金となるのか判断されるので注意が必要です。
死亡退職金の場合は次の見出しで説明する「相続財産とみなされるもの」に該当します。
2-3.相続財産とみなされるもの
相続財産にはみなし相続財産というものがあります。
民法上は相続財産に含まれませんが、相続税を計算する際に相続財産とみなして計算される財産のことです。
みなし相続財産は財産として確定しているわけではなく、被相続人が亡くなったことが原因で相続人等が取得する財産となります。
そのため、みなし相続財産と呼ばれます。
相続財産とみなされるものには以下のようなものがあります。
- 死亡退職金
- 死亡保険金など
死亡保険金や死亡退職金なども受取人固有の財産であると考えられます。
そのため、相続財産には含まれないという考え方が一般的です。
しかし、相続税法では、死亡保険金や死亡退職金などはみなし相続財産として課税対象になります。
ただし、死亡保険金や死亡退職金の受取人が相続人の場合には一定額までは非課税となっています。
非課税限度額は具体的には「500万円✕相続人の数」となっていますので、取得した死亡保険金等が非課税限度額以内であれば、結果として課税されませんので注意しておきましょう。
3.相続税の課税対象となる財産、相続税が非課税になる財産
では相続税の課税対象となる財産や相続税が非課税にならないためをどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、課税対象となる財産と、非課税になる財産について詳しく紹介していきます。
3-1.相続税の課税対象となる財産
相続税の課税対象となる財産は以下のようなものがあります。
- 戸建て
- マンション
- 農地
- 店
- 貸地
- 不動産上の権利
- 現金
- 預貯金
- 有価証券
- 小切手
- 貸付金
- 国債
- ゴルフ会員権
- 著作権
- 車
- 骨董品
- 宝石
- 名義預金
- 生前贈与した財産(被相続人が亡くなる前3年以内の贈与)
- 被相続人の方の口座から亡くなる直前に引き出した現金など
ゴルフ会員権や著作権も相続税の課税対象となります。
また、名義預金や生前贈与した財産、被相続人の方の口座から亡くなる直前に引き出した現金、借地権も相続税の課税対象です。
例えば子供のために口座を作ってお金を貯めていたとします。
子供の名義で口座を作っていても、実際に管理していたのが父親だった場合、その口座を父親が持っているものとされるので、名義預金も課税対象となる場合があります。
また、生前贈与財産も注意が必要です。
死亡する3年以内に行われた財産の贈与は、相続税の課税対象となります。
財産を受け渡す行為、すなわち相続と変わらないとされるためです。
被相続人の方の口座から亡くなる直前に引き出した現金も、課税対象となることがあるので注意しましょう。
こちらも相続とみなされる場合があります。
不動産の権利の中に「借地権」というものがあります。
例えば、一軒家は持ち家でも、建てている土地は他人から借りている場合があります。
相続の場合はこの土地の権利(借地権)も課税対象となるため注意が必要です。
このように多くの財産に対して相続税が発生します。
自身で、「相続税が課税されるのか」、「課税されないのか」を判断することは非常に難しいです。
そのため、相続が発生した際には専門家に相談するようにしましょう。
「自分は特に財産もないし、相続税はかからないだろう」と思っている場合でも、相続税申告をしなければならないこともあります。
生前対策をする際にも、自身で判断せず一度専門家に相談してみましょう。
3-2.相続税が非課税になる財産
相続税が非課税となる財産には以下のようなものがあります。
- 墓地
- 墓石
- 仏壇
- 仏具
- 神棚
- 弔慰金
- 損害賠償金
墓地や墓石、仏壇などは親から子供へ受け継ぐ場合もあるかと思います。
しかし、これらは相続税の課税対象とはなりません。
ただし、「骨董品としての価値がある」「投資の対象となる」「商品として所有している」という場合は課税対象となるので、注意しておきましょう。
亡くなった際に、会社から弔慰金をもらうこともあるかと思います。
一般的にこの弔慰金も相続税の課税対象ではありません。
しかし、金額によっては課税対象となる場合もあるので注意が必要です。
課税対象となる場合の金額は、業務中の死亡か、業務外の死亡かで変わります。
業務中の死亡の場合、「死亡当時の普通給与の三年分に相当する額」までは相続税の課税対象となりません。
業務外の死亡の場合「死亡当時の普通給与の半年分に相当する額」までは相続税の課税対象となりません。
この場合の給与は、手取りでなく月収で計算するので気をつけておきましょう。
また、損害賠償金も課税対象ではありません。
例えば事故で親が死亡した場合、事故を起こした相手から損害賠償金が遺族に支払われることもあります。
損害賠償金は、相続財産ではなく、遺族に対して精神的苦痛の代償として支払われるものです。
そのため、相続税の課税対象には含まれません。
4.遺産分割の対象にならない相続財産
相続財産の中には、遺産分割の際に遺産分割の対象とならない財産もあります。
遺産分割の対象とならない財産を知っておかなければ、「相続できると思っていた財産を、実際には受け取れなかったと」いうこともあります。
遺産分割の対象とならない財産として、主に以下の3つがあります。
- 受取人が決定している死亡退職金
- 受取人が決定している死亡保険金
- 生前贈与財産
これらの財産がある場合には、誰が受取人となるのか、金額はいくらなのかをしっかりと確認しましょう。
受取額が高額な場合や他の相続人との間に不平等が生じる場合などは、「特別受益」として扱う場合があります。
5.相続財産の調査方法
では、相続が発生した際に相続財産はどのように調査すれば良いのでしょうか?
相続財産を調査するということは非常に重要です。
相続税を正確に計算するためには、相続財産は正確に調査しなければなりません。
相続税の申告・納付期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月後となります。
この10ヶ月の間に相続財産を調査し、相続税の申告・納付を行わなければなりません。
相続財産には家や車、預貯金など、相続人が把握している財産もあります。
しかし、中には「被相続人が株式や投資信託を行っていることを知らなかった」という場合もあります。
また、相続人が知らされていなかった不動産や預貯金がある場合もあります。
そのため、相続財産の調査はしっかりと正確に行いましょう。
相続財産を調査する場合は以下の3つを調べる必要があります。
- 預貯金
- 不動産の登記簿や固定資産税
- 株式や投資信託などの金融商品
相続が発生した場合、まずは被相続人の預貯金を調べましょう。
預貯金は金融機関ごとに調べる必要があります。
通帳やキャッシュカードを手元に用意し、該当する金融機関を確認しましょう。
該当する金融機関のリストアップが出来たら、残高証明書と取引明細書をそれぞれの金融機関に請求しましょう。
残高証明書と取引明細書は開示まで2週間程度かかる場合があります。
そのため、相続が発生したら早めに請求しましょう。
不動産の登記簿や固定資産税も調べなければなりません。
登記簿を調べるには、法務局へ出向き登記簿謄本(登記事項証明書)を取得しなければなりません。
物件の所在地番が必要となるため、市町村役場で名寄帳を取得しておきましょう。
また、株式や投資信託などの金融商品を調べるためには、金融商品取引業者などに問い合わせなければなりません。
取引業者ごとに請求しなければならず、開示にも時間を要するので早めに準備しておきましょう。
また、相続財産を調査するために以下の書類の提出を求められることがあります。
- 相続人の戸籍
- 相続人の印鑑証明書
- 被相続人の戸籍
あらかじめ上記の書類を準備しておくと、スムーズに調査することが可能です。
まとめ
今回は相続財産に含まれる財産と、含まれない財産について解説しました。
相続財産には不動産や預貯金などのプラスの財産のほか、借金などのマイナスの財産も含まれます。
また、相続財産とみなされるものや、課税対象となる財産、課税対象とならない財産もあるので注意しておきましょう。
特に「死亡退職金」や「死亡保険金」などは一般的には相続財産に含まれませんが、相続税では「みなし相続財産」として課税対象になりますので気を付けなければなりません。
一般的には相続財産に含まれませんが、受取人が相続人であった場合相続税の課税対象となります。
相続財産には多くのものがあり、課税対象となるか、課税対象とならないのかは非常に複雑で知識を要します。
そのため、相続が発生した場合はもちろん、将来の相続へ向けて対策を行いたい方は一度専門家に相談しましょう。
専門家に相談することにより、財産を整理し、相続の状況を知ることができます。
「多くの不動産を持っている」「自身の知らない財産があるかもしれない」などの場合は、相続の状況を知り、トラブルのない円満な相続に向けて様々な対策を行っていきましょう。