「相続税の申告書にマイナンバー(個人番号)を記載しなければならないの?」と疑問に思っていませんか?
国税庁のサイトによると、相続税の申告書にマイナンバーの記載は必要とされています。
「マイナンバー制度に対する国民の理解の浸透には一定の時間を要する点などを考慮し、申告書等にマイナンバー・法人番号の記載がない場合でも受理することとしていますが、マイナンバー・法人番号の記載は法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出してください。
(国税庁「番号制度概要に関するFAQ」)
マイナンバー制度自体の浸透に時間がかかることを考慮しているようで、記載がなくても受理する場合もあるようです。ただし「マイナンバーの記載は義務です」と明記されている以上は正しく記載できるよう準備しておくに越したことはありません。
そこでこの記事では、相続税の申告書にマイナンバーを記載する必要性や具体的な記載の方法、注意点について網羅的に解説していきます。
本記事を参考に相続税申告書の作成をスムーズに進めていただければ幸いです。
1.相続税の申告書にはマイナンバーを記載する義務がある
相続税申告書には、マイナンバー(個人番号)を記載する必要があります。
なぜなら、国税庁が『マイナンバー・法人番号の記載は法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出してください。』と明記しているからです。
また、相続人が複数いるときはひとつの申告書に複数人のマイナンバーを記載することになります。1人の相続人の記入が終了したら、次の相続人へ申告書を回して全員が記載するよう動かなければいけません。
自分以外の相続人のマイナンバーがわからないまま月日が経過し、相続税申告の期限が近づいてしまった、といったことが無いように速やかに準備を進めていくことが大切です。
現状は、マイナンバーの記載が欠けたままでも税務署は相続税申告書を受理してくれます。ただしあくまでもマイナンバー制度の浸透まで時間がかかることを考慮した「特別」ともいえる対応ですから、漏れがないようスピーディに準備を進めていきましょう。
なお、相続税申告書の控えを作成する場合、その控えにマイナンバーを記載する必要はありません。また他人のマイナンバーが記載されている申告書はコピーも保管もできませんので注意しましょう。
2.マイナンバーを相続税申告書に記載する目的
マイナンバーを相続税申告書に記載しなければいけない理由(目的)は、税務調査の効率が格段に向上し、公平性が高まる(不正を見抜きやすくなる)からです。
たとえば、相続前に預貯金の引き出し額が多かったりすると、税務署側はそれを容易に把握でき、税務調査の対象となる可能性が高くなるのです。
そもそも、マイナンバー制度の目的は以下の3つです。
- 公平・公正な社会の実現(給付金などの不正受給の防止)
- 国民の利便性の向上(面倒な行政手続きが簡単に)
- 行政の効率化(手続きをムダなく正確に)
これらの目的を達成するために、相続税の申告書でもマイナンバーの記載が義務化されたということです。
平成30(2018)年から、預貯金口座がマイナンバーと紐付けされ、税務調査のときにマイナンバーを利用して照会できるようになりました。つまり、税務署が相続財産・贈与財産・給与など預貯金に関する情報を簡単に把握できるようになったということであり、マイナンバーの記載義務は世の中にとって非常に重要なことであると言えます。
3.相続税申告書にマイナンバーを記載する方法
それでは具体的な記載方法について解説していきます。
実は記載の方法は非常に簡単で、相続税の申告書(第1表の上部)にマイナンバー12桁を記載するだけです。記載箇所は下図の右側の赤枠内です。
相続人は右側赤枠の上部に「氏名」「フリガナ」を記入し「印」を押してください。その下(右側赤枠の箇所)にマイナンバーを記載する欄がありますので、12桁のマイナンバー右寄せで記入してください。左端の1マス分は空欄にしておきましょう。(※法人の場合は13桁のマイナンバーの記載が必要です)
なお、太枠内左側に被相続人(亡くなった方)の氏名を記入しますが、その方のマイナンバーは記載不要です。
※ すぐにマイナンバーを知る方法
「マイナンバーカードを紛失してしまった」「マイナンバー通知カードを失くしてしてまった」という場合は「マイナンバーが記載された住民票の写し」を取得することをおすすめします。
マイナンバーカードの再発行には3週間~1か月ほどかかりますが、マイナンバーが記載された住民票の写しを取得してもらうだけであれば最短即日で取得可能です。
4.マイナンバーが記載された申告書を提出する際には「本人確認」に気をつけよう
相続税の申告書を提出するときは、必ず税務署で本人確認されます。なりすましを防止するため、厳格な本人確認が義務付けられているのです。
マイナンバーを提供する際には2つの確認が必要とされています。
- 番号確認:正しいマイナンバー(個人番号)であることの確認
- 身元確認:手続を行っている方がマイナンバー(個人番号)の正しい持ち主であることの確認
これらの本人確認は以下の3パターンによってすべきことが異なります。
- マイナンバーカードを持っている場合
- マイナンバーカードを持っていない場合
- 代理人の税理士が提出する場合
それぞれ自身に照らし合わせて確認してみてください。
4-1.マイナンバーカードを持っている場合
マイナンバーカード(個人番号カード)をすでに持っている場合は、マイナンバーカードそのものを持参するだけで本人確認ができます。
もし本人確認書類として写しを添付する場合は、表面と裏面の写し(コピー)が必要です。
4-2.マイナンバーカードを持っていない場合
マイナンバーカードを持っていない場合は、「マイナンバー確認書類」と「身元確認書類」の2点が必要です。具体的にはそれぞれ以下の書類を持参することになります。
<マイナンバー確認書類>
- 通知カード
- 住民票の写し、または住民票記載事項証明書(いずれもマイナンバーの記載があるもの)
<身元確認書類>
- 運転免許証
- パスポート
- 在留カード
- 公的医療保険の被保険者証
- 身体障害者手帳
※令和元年10月1日以降は「e-TAX」で相続税の申告書を提出することができ、その場合は本人確認書類の提示や写しの提出は不要です。
4-3.税理士など代理人が提出する場合
税理士などの代理人が提出する場合は
「① 代理人の方が代理権を有していることの確認(代理権の確認)」
「②申告書等を提出する者が正しい代理人であることの確認(代理人の身元確認)」
「③申告書等に記載されたマイナンバー(個人番号)が正しい番号であることの確認(本人の番号確認)」
を行います。
具体的にはそれぞれ以下の書類が必要となります。
<① 代理権の確認>
- 法定代理人の場合は戸籍謄本
- 任意代理人の場合は委任状
<② 代理人の身元確認>
- 代理人の方のマイナンバーカード(個人番号カード)
- 代理人の方の運転免許証
<③ 本人の番号確認>
- 顧客のマイナンバーカード
- 顧客の通知カードの写し
※代理人が税理士である場合には以下の3つの書類が必要となります。
- 税務代理権限証書
- 税理士証票
- 顧客のマイナンバーカード(個人番号カード)や通知カードの写し
5.まとめ
相続税の申告書にマイナンバー・法人番号の記載をすることは法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務なので、正確に記載する必要があります。
マイナンバーを申告書に記載することで、税務署が相続財産・贈与財産・給与など預貯金に関する情報をマイナンバーによって簡単に把握できるようになり、不正行為を見抜きやすくなるからです。
本記事を参考にマイナンバーの記載を適切に進めることで、申告書の作成や提出がスムーズに進むことを願っています。