小規模宅地の特例と借地権

まず借地権とは、他人が所有している土地を借り、その土地に自分の建物や家を建てることができる権利です。では、借地権にも小規模宅地の特例を適用することは可能だろうか?
答えは可能です。理由は、小規模宅地とは措置法69条の4の1項より「土地又は土地の上に存する権利をいう」と記載されているためです。土地の上に存する権利であるためもちろん借地権は対象となります。

それでは、借りた土地の上に建つ住居を相続した場合で考えてみましょう。
例として、借りている土地の地積を500㎡として1㎡あたりの自用地評価額は300千円として考える。借地権の評価額を求めるときには、

借地権の評価額=自用地の価額×借地権割合 

で計算することができます。なお、借地権割合については、国税庁のWEBサイト「財産評価基準(路線価図・評価倍率表)」から確認できます。今回は、借地権割合を60%と記載してあったと考えます。


(ⅰ)まず、小規模宅地の特例を使用せずに借地権を考慮して評価額を求めてみます。

借地権評価額=300千円×500㎡×60%=90,000千円

 

(ⅱ)次に小規模宅地の特例を使用したものを考える。使用することで、特定居住用宅地の評価額を80%減額できるため

90,000千円×80%=72,000千円 
小規模宅地の特例を適用した借地権評価額=90,000千円―72,000千円=18,000千円 

となり(ⅰ)よりも(ⅱ)では大きく評価額を下げることができます。

 

Q.建物が借地権と所有権に跨っている土地はどうなるか?

(図1)


先に述べたものは建物がすべて第三者から借りている土地の上にあるとしたものです。では、(図1)のように建物の一部が自身の持っている土地の上に建っている場合はどうなるでしょうか?この場合、小規模宅地の特例を適用した評価額の減額は可能です。しかし、借地権によって評価減できるところとそうでないものや優先的に特例を適用できるものなど計算方法が複雑となります。

重要ポイント

  • 自己所有の土地と借りている土地はそれぞれ評価額を求め、合算したもので評価します。
  • 小規模宅地の特例を受ける場合、自己所有の土地を優先して減額できます。(自己所有の土地の評価額>借りている土地の評価額となるので納税者に有利となります)
  • 特例を受けることができる限度面積があります(※今回は特定居住宅地の場合で考えるため限度面積は330㎡です。

それでは、以上の点を踏まえて例を挙げて確認してみます。

自己所有の土地:300㎡
借りている土地:400㎡
1㎡あたりの自用地評価額:500千円
借地権割合:60%

とします。

まず、それぞれの土地評価額を求めます。

自己所有の土地の評価額=300㎡×500千円=150,000千円
借りている土地の評価額=400㎡×500千円×60%=120,000千円
合計 270,000千円

それでは、ここから小規模宅地の特例を適用していく。
まず、自己所有の土地は300㎡であり限度面積より少ないため全てに適用できます。

自己所有の土地でできる減額=300㎡×500千円×80%=120,000千円

 

次に、借りている土地の面積であるが、限度面積330㎡に対して300㎡使用したため残りの30㎡が使用できます。

借りている土地でできる減額=
30㎡×500千円×借地権割合60%×小規模宅地の特例による減額割合80%=
7,200千円 

よって
つまり評価額は

270,000千円-(120,000+7,200)=142,800千円
となり、270,000千円-142,800千円=127,200千円評価額が安くなります。 

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