税制改正大綱

平成25年度 税制改正情報

「平成25年度税制改正」について、その主要な部分について解説します。
平成25年度の税制改正は、国内の危機に立ち向かうべく「成長と富の創出の好循環」による経済の活性化を目的としたものとなっています。

 

相続税の改正

基礎控除の引き下げ、最高税率が55%に引き上げられるほか、小規模宅地の特例対象面積の拡大等が行われます。今後、課税対象者は拡大し、納税者は首都圏を中心に大幅に増加すると言われています。

【1】基礎控除の引き下げ

相続税の基礎控除額が現行の60%相当額まで引き下げられます。

平成27年1月1日以後の相続および遺贈から適用。

 

【2】最高税率の引き上げ

相続税の最高税率が法定相続人の取得価額が6億円を超える部分の相続財産について55%に引き上げられます。
平成27年1月1日以後の相続および遺贈から適用。

 

【3】未成年者控除、障害者控除

相続財産を取得した法定相続人が、未成年者である場合には20歳に達するまでの年数1年につき6万円を、障害者である場合には85歳に達するまでの年数1年につき6万円(特別障害者は12万円)をその人の相続税額から控除する制度がありますが、この控除額が1年につき10万円(特別障害者は20万円)に引き上げられます。
平成27年1月1日以後の相続および遺贈から適用。

 

【4】小規模宅地等の減額特例

①特定居住用宅地等の対象面積拡大等
相続税の課税価格が80%減額される特定居住用宅地等の適用対象面積が330㎡(現行240㎡)に拡大されます。特定事業用宅地等は400㎡で現行どおりとされます。 また、相続財産のなかに特定居住用宅地等と特定事業用宅地等があり、双方について減額特例の適用を受けようとする場合には、適用対象面積について調整計算が行われていますが、それぞれについて適用対象面積の上限まで減額が受けられるようになります。 ただし、貸付事業用宅地等については、従来どおり適用面積の調整計算が行われます。

②特定居住用宅地等の適用要件の緩和
被相続人が老人ホーム等に入居していた場合であっても、以下の要件を満たせば特定居住用宅地等に該当するものとして適用が認められることになります。

  • 被相続人に介護が必要なため入所したものであること
  • 空家となった家屋は貸付け等の用に供されていないこと

また、いわゆる二世帯住宅の敷地の適用要件にも改正がありました。これまで、建物の内部で二世帯の居住スペースがつながっていない場合には建物全体を被相続人の居住用とすることはできず、敷地を面積按分して特例が適用されていました。改正後では、つながっていなくても一定の要件を満たせば、建物全体を被相続人の居住用として特例の適用ができることとされます。

①の改正は、平成27年1月1日以後の相続および遺贈から適用
②の改正は、平成26年1月1日以後の相続および遺贈から適用

 

贈与税の改正

最高税率が55%に引き上げられるとともに、直系尊属からの教育資金の贈与を1,500万円まで非課税とする制度の創設などが行われます。

【1】税率の見直し

贈与税の最高税率が55%に引き上げられるとともに、贈与の年の1月1日において20歳以上の者が直系尊属から受けた贈与については、一般の税率よりも低い税率で贈与税が課税されることになります。改正案による贈与税の速算表は次のようになります。

<改正案①~直系尊属からの暦年贈与>

基礎控除後の課税価格  税率(%)  控除額(万円)
200万円以下 10
200万円超  400万円以下 15 10
400万円超  600万円以下 20 30
600万円超 1,000万円以下 30 90
1,000万円超 1,500万円以下 40 190
1,500万円超 3,000万円以下 45 265
3,000万円超 4,500万円以下 50 415
4,500万円超 55 640

<改正案②~通常の暦年贈与>

基礎控除後の課税価格  税率(%)  控除額(万円)
200万円以下 10
200万円超  300万円以下 15 10
300万円超  400万円以下 20 25
400万円超  600万円以下 30 65
600万円超 1,000万円以下 40 125
1,000万円超 1,500万円以下 45 175
1,500万円超 3,000万円以下 50 250
3,000万円超 55 400

平成27年1月1日以後の贈与から適用。

 

【2】相続時精算課税の対象拡大

相続時精算課税制度は、受贈者が贈与を受ける年の1月1日現在で20歳以上であり、贈与の日において贈与者の推定相続人であることが適用要件の一つとされています。改正案では、贈与者の孫で20歳以上の者が適用対象に加えられることになっています。
また、贈与者は贈与をする年の1月1日現在で65歳以上であることとされていますが、これが60歳以上に引き下げられます。
平成27年1月1日以後の贈与から適用。

 

【3】教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の創設

祖父母や父母などの直系尊属から教育資金を贈与された場合、受贈者一人当たり1,500万円まで贈与税を非課税とする特例が創設されます。
贈与者である直系尊属が、子あるいは孫等(30歳未満の者に限られます。)の教育資金に充てるために金銭等を拠出し、それを信託銀行、銀行等に信託等した場合に、その信託の受益権者である子あるいは孫一人につき1,500万円まで贈与税が非課税とされます。
教育資金には、学校等の入学金や授業料のように学校等に支払われる費用のほか、習い事や塾など学校以外に支払われる費用も含まれることになっており、今後文部科学大臣がその範囲を告示することとされています。
なお、学校等に支払われるもの以外の教育資金は500万円が非課税の上限とされます。
平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間の贈与について適用。

 

所得税の改正

最高税率が引き上げられるほか、消費税率の引き上げに合わせて、住宅取得に係る税額控除制度が大幅に拡充されます。

【1】最高税率の引き上げ

所得税の最高税率が45%に引き上げられ、平成27年分の所得税から適用されます。

 

【2】住宅税制の拡充

次の①~④の住宅関連の特例について、平成29年12月31日まで適用期限が延長された上、平成26年4月からの消費税率の5%から8%への引き上げに合わせて、平成26年4月1日から平成29年12月31日までの間については最大控除額が引き上げられます。いずれも平成29年12月31日までの間に対象となる住宅を居住の用に供した場合に適用されます。

 

①住宅ローン控除
住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除、いわゆる住宅ローン控除について、控除の対象とすることができる借入金残高の上限額が以下のように改正されます。控除率および控除期間は現行(10年)のままです。

居住年 対象 借入限度額 控除率 各年の控除
限度額
最大控除額
平成26年1月~3月 一般の住宅 2,000万円 1.0% 20万円 200万円
認定住宅 3,000万円 1.0% 30万円 300万円
東日本大震災の被災者 3,000万円 1.2% 36万円 360万円
平成26年4月
~平成29年12月
一般の住宅 4,000万円 1.0% 40万円 400万円
認定住宅 5,000万円 1.0% 50万円 500万円
東日本大震災の被災者 5,000万円 1.2% 60万円 600万円

また、控除額をその年の所得税額から控除しきれない場合には、翌年度分の個人住民税から控除不足分を控除できる限度額が以下のように引き上げられます。

居住年 控除限度額
平成26年1月~3月 所得税の課税総所得金額等×5%(最高 97,500円)
平成26年4月~平成29年12月 所得税の課税総所得金額等×7%(最高136,500円)

 

②特定の増改築等に係るローン控除

住宅の増改築等のための借入金を有している場合には、ローン控除が適用されていますが、その上限金額が以下のように改正されます。 控除率(特定の増改築等2.0%、その他1.0%)および控除期間(5年間)は現行どおりです。

居住年 特定増改築等限度額 控除率 各年の控除限度額 最大控除額
その他の借入限度額 控除率
平成26年1月~3月 200万円 2.0% 4万円 60万円
800万円 1.0% 8万円
平成26年4月
~平成29年12月
250万円 2.0% 5万円 62.5万円
750万円 1.0% 7.5万円

 

③認定長期優良住宅等に係る特別税額控除
借入れをせずに一定の認定長期優良住宅を取得した場合には、標準的な費用(上限500万円)を対象に、居住を開始した年分の所得税額について、その10%相当額の特別税額控除が適用されますが、この対象に平成26年4月1日以後認定低炭素住宅が追加され、適用対象となる上限金額が650万円に引き上げられます。控除率(10%)は現行どおりです。

 

④省エネ改修工事等に係る特別税額控除
借入れをせずに住宅の一定の省エネ改修工事およびバリアフリー改修工事を行った場合には、その工事費用のうちの一定金額を上限として、居住を開始した年分の所得税額について、工事費用の10%相当額の特別税額控除が適用されます。限度額および控除率は以下のとおりです。 なお、省エネ改修工事とバリアフリー改修工事を同一年中に行って居住の用に供した場合に、税額控除額の合計額を上限20万円(太陽光発電設備の同時設置の場合には30万円)に制限する規定が廃止されます。

居住年  対象工事  改修工事限度額 控除率 控除限度額
平成25年1月
~平成26年3月
省エネ改修工事 200万円(300万円) 10% 20万円(30万円)
バリアフリー改修工事 150万円 10% 15万円
平成26年4月
~平成29年12月
省エネ改修工事 250万円(350万円) 10% 25万円(35万円)
バリアフリー改修工事 200万円 10% 20万円

( )内の金額は、省エネ改修工事と併せて太陽光発電装置を設置する場合の限度額

 

【3】財産債務明細書の記載事項の整備

財産債務明細書に記載すべき公社債、株式並びに貸付信託、投資信託および特定受益証券発行信託の受益権の価額が、その年12月31日における時価(時価の算定が困難な場合には、取得価額)とされます。

 

金融・証券税制の改正

金融所得課税の一体化のための改正のほか、いわゆる日本版ISAの拡充などが図られ、現行の軽減税率は平成25年で廃止されます。

【1】日本版ISAの拡充

非課税口座内少額上場株式等の非課税制度、いわゆる日本版ISAが、次のように大幅に拡充されます。

①非課税口座開設期間
非課税口座を開設できる期間は平成26年1月1日から平成28年12月31日までの3年間とされていましたが、平成35年12月31日までの10年間に拡大されます。非課税口座では、毎年非課税管理勘定を設定して、年間で合計100万円以下の上場株式等を受け入れることができます。

②非課税期間
非課税管理勘定に受け入れられた株式については、勘定設定日の属する年の1月1日から5年以内に支払いを受ける配当等、5年以内にその株式等を譲渡した場合の譲渡益がそれぞれ非課税とされます。

 

【2】軽減税率の廃止

現行の上場株式等の配当等および譲渡所得等に係る10%の軽減税率は、平成25年12月31日で廃止されます。

 

法人課税の改正

国内設備投資促進税制の創設、中小法人の交際費課税の特例の拡充等が予定されています。

 

【1】中小法人の交際費課税の特例の拡充

交際費等の損金不算入制度における中小法人に係る損金算入の特例について、定額控除限度額が現行の600万円から800万円に引き上げられるとともに、定額控除限度額の10%の損金不算入措置は廃止され、800万円までの全額が損金算入されます。 平成25年4月1日以後に開始する事業年度から適用。

 

【2】商業・サービス業および農林水産業を営む中小企業等の設備投資促進税制の創設

青色申告書を提出する中小企業等が、商工会議所等による経営改善に関する指導や助言を受けて行う店舗の改修等に伴い、器具備品(1台または1基の取得価額が30万円以上)、建物附属設備(一の取得価額が60万円以上)の取得等をして指定事業の用に供した場合には、その取得価額の30%の特別償却とその取得価額の7%の税額控除(法人税額の20%を限度)を選択で適用できる制度が創設されます。 平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に取得等をし、指定事業(卸売業、小売業、サービス業、農林水産業)の用に供したものに適用。

 

納税環境整備に係わる改正

延滞税等の見直し、国外財産調書制度の見直し等が予定されています。

【1】延滞税等の見直しについて

税の延滞等に課される延滞税、延納等に課される利子税等が、14年ぶりに引き下げられます。国内銀行の貸出約定平均金利(新規・短期)の前々年10月~前年9月における月平均に、1%を加算した割合(特例基準割合)が税率を決める基準となります。

              特例の見直し後
(14.6%については、特例の創設)
【参考】貸出約定平均金利の年平均が1%の場合
延滞税 (特例基準割合)
 貸出約定平均金利 +1%   +  7.3%
(早期納付を促す)
9.3%
  2ヶ月
以内等
(特例基準割合)
 貸出約定平均金利 +1%   +  1%
(早期納付を促す)
3.0%
納税の
猶予等
(特例基準割合)
 貸出約定平均金利 +1%  
2.0%
利子税
(主なもの)
(特例基準割合)
 貸出約定平均金利 +1% 
(注)相続税・贈与税の7.3%以外の利子税については、次の計算式で算定
2.0%
還付加算金 (特例基準割合)
 貸出約定平均金利 +1%  
2.0%

平成26年1月1日以後の期間に対応する延滞税等について適用。

 

【2】国外財産調書制度の見直し

対象となる国外財産に、国外にある金融機関の営業所等に設けられた口座において管理されている国内有価証券が加えられ、対象となる国外財産から国内にある金融機関の営業所等に設けられた口座において管理されている外国有価証券が除外されます。 平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用。

 

その他の改正

車体課税・登録免許税・印紙税・固定資産税等の改正が予定されています。

【1】自動車取得税

自動車取得税は、二段階で引き下げられ、消費税10%の時点で廃止されます。

 

【2】登録免許税

不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(仮称)により創設される特例事業者(仮称)が、同法の施行の日から平成27年3月31日までの間に一定の不動産の取得をする場合における当該不動産に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率を、次のとおり軽減する措置が講じられます。

イ 所有権の保存登記1,000分の3(本則1,000分の4)
ロ 所有権の移転登記 1,000分の13(本則1,000分の20)

 

【3】印紙税

  1. 1)金銭または有価証券の受取書のうち記載された受取金額が5万円未満(現行3万円未満)のものには、印紙税が課されないこととなります。
    平成26年4月1日以後に作成される受取書について適用。
  2. 2)不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置について適用期限が5年延長され、平成26年4月1日以後に作成される文書に係る税率が引き下げられます。 
契 約 金 額   現 行    改正案 
不動産の譲渡に関する契約書 建設工事の請負に関する契約書
10万円超  50万円以下 100万円超  200万円以下 400円 200円
50万円超  100万円以下 200万円超  300万円以下 1,000円 500円
100万円超  500万円以下 300万円超  500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超  1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超  5,000万円以下 1万5千円 1万円
5,000万円超   1億円以下    4万5千円 3万円
1億円超   5億円以下    8万円 6万円
5億円超  10億円以下    18万円 16万円
10億円超  50億円以下   36万円 32万円
50億円超 54万円 48万円

 

【4】固定資産税

耐震改修等を行った住宅に係る固定資産税の減額措置について以下のとおり見直されます。

  1. 1)耐震改修を行った住宅に係る固定資産税の減額措置について、建築物の耐震改修の促進に関する法律の改正に伴い、対象となる住宅のうち同法に規定する要安全確認沿道建築物(仮称)に該当するものに係る減額が1年度分から2年度分に拡充されます。
  2. 2)対象となる耐震改修、バリアフリー改修または省エネ改修に係る工事費要件が、30万円以上から50万円超に改められます。

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