相続税と傾斜地の土地評価
様々な相続でいろいろな土地を見て歩きますが、一つとして同じ土地は無く、非常に難解な論点を含んでいるような土地にも、多くぶつかることになります。
今回は相続税評価と傾斜地について説明させていただきます。
傾斜地の土地評価
相続税における土地評価において、傾斜地の評価は重要です。
平らな土地と傾斜地とでは、売買価額つまり時価が同じはずはありません。
なぜなら、傾斜地を有効利用しようとする場合、そのまま家を建てることは困難です。整地費、土盛費、土止費などの宅地造成費をかけて、はじめて建物を建て、宅地として利用することができます。
ただ、この宅地造成費を、いちいちそれぞれの土地で割り出して、土地評価額を出すことは、非常に煩雑で、実務上困難です。
そのため、財産評価基本通達では、傾斜地の宅地造成費を、毎年、都道府県ごとに、一律に決めています。
例えば平成29年の神奈川県の場合、傾斜地が
- 3度超5度以下の場合、1㎡あたり11,400円
- 5度超10度以下の場合、1㎡あたり19,600円
- 10度超15度以下の場合、1㎡あたり27,000円
- 15度超20度以下の場合、1㎡あたり41,800円
と決まっています。
仮に路線価区域内に100㎡の土地があり、180,000円の道路に一方のみ接しているとします。他に評価減が無い整形地の場合、平坦な土地であれば、180,000×100=18,000,000円の評価額が付きます。
一方、その土地が20度の傾斜地の場合、41,800×100=4,180,000円が宅地造成費となり、18,000,000-4,180,000=13,820,000円という評価額になります。
税理士が土地評価を依頼された場合、実際に現地に行って評価を行う、ということをきちんとやっているのであれば、小さな傾斜にもきちんと気づき、斜度を現地で測って、この造成費を引くことができます。
傾斜20度以上の傾斜地
国税庁で発表される造成費の表を見ると、20度以上の場合はどうすればいいのだろう、という疑問がわいてくるかと思います。
急傾斜地で宅地化が見込めず、開発行為そのものが物理的に不可能な場合、つまり宅地への転用が見込めない場合、山林であれば、近隣の純山林の価額に比準して評価することになります。
純山林の評価ですが、具体的に当事務所の事例で言えば、平成28年発生の横浜市の相続で、㎡単価231円で評価を行い、申告したことがあります。ほぼ0に近い評価額になるので、この判断一つで税額が大きく変わることになります。広大地と並んで、評価差額、税額差額の非常に大きな論点かつ、判断が難しい論点でもあります。
この、宅地化が見込めない市街地山林の判定ですが、経済合理性から判断する場合と、形状、物理的な観点から判断する場合の二つに分けられます。
- 経済合理性から判断する場合
該当地の売却収入を計算し、造成費の査定を行います。こうして、収入から費用を引いてマイナスになる場合、純山林評価を行うことになります。
このあたりの金額を出すことは税理士の業務の範囲外ですので、不動産鑑定士や土地家屋調査士、不動産仲介業者などの協力をもらわないといけません。報酬が発生することもあります。よく確認しながら進めることが必要です。
- 形状、物理的な観点から判断する場合
傾斜が30度を超える場合は一番近い道路から、評価対象地のもっとも高い頂点に線を伸ばし、その角度を測ることになります。
この方法で30度を超えなくとも、実際に宅地として利用するのはまず不可能、という土地も多くあります。その時、経済合理性から判断する方法で、純山林として評価する理論立てをしていくことになるのですが、これは非常に難しいため、専門家に依頼することをお勧め致します。
傾斜地、というくくりでいろいろと説明をさせていただきましたが、実際、ご自分の土地はどうだろう、とお考えの方もいらっしゃると思います。
また、この文章を読んでいてもいまいちよくわからないという方も多いかと思います。専門家の間でも判断が分かれてしまうような事案も多々あります。相続のことを考え始めた日が吉日です。
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