相続財産から指し引ける葬式費用は?申告方法も解説!

1.葬式費用は相続財産から差し引ける?

相続が発生したときに考えなければならないのが、相続税の問題です。相続税は亡くなった人である被相続人から財産を引き継いだときに、その引き継いだ財産に対してかかる税金を意味します。場合によっては高額になることもあるので、注意しておかなければなりません。

ただし、相続税は相続が発生したからといってすべての場合に生じるものではありません。現金や不動産などの引き継いだプラスの財産の総額から、借入金のようなマイナスの財産を差し引いた金額が基礎控除額を超えるケースで相続税は発生します。

財産が基礎控除額を超えるかどうか考えるときに、マイナスの財産以外にも差し引けるものがあり、それが葬式にかかる費用です。葬式費用は高額になることもあり、差し引くことで相続税がかからなくなったり、かかったとしても税負担が減ったりします。

しかし、葬式費用のなかでも、差し引くことができる費用には一定の制限があります。この記事ではどのような項目が相続財産から差し引くことができるのか、詳しく見ていきますのでぜひ参考にしてください。

2.相続財産から差し引ける葬式費用

葬式費用といっても、葬式にかかった費用のすべてが相続財産から差し引けるわけではありません。したがって、どのような費用が対象となるのかを知っておくことが重要です。以下の費用は、一般的に相続財産から差し引ける葬式費用とされています。

  • お通夜、告別式にかかった費用
  • 葬儀に関連する料理代
  • 火葬料、埋葬料、納骨料
  • 遺体の搬送費用
  • 葬儀場までの交通費
  • お布施、読経料、戒名料
  • お手伝いさんへのお礼
  • 運転手さん等への心付け
  • その他通常葬儀に伴う費用

これらの葬式費用は相続財産から差し引くことができますが、葬式費用の内訳が明確にされ、かつ合理的な範囲内であることが求められます。上記に該当するからといって、過剰な費用は認められない可能性があるので気をつけておきましょう。もしも不安であれば、早めに専門家に相談しておくと安心です。

ここで、それぞれの葬式費用についてどのようなものなのか順番に見ていきます。

2−1.お通夜、告別式にかかった費用

1つ目の相続財産から差し引ける葬式費用は、お通夜、告別式にかかった費用です。

たとえば、祭壇の設営費用や葬祭場の使用料、棺・骨壺などの費用がこれに該当します。他にも、霊柩車やマイクロバスの費用も相続財産から差し引くことが可能です。

2−2.葬儀に関連する料理代

2つ目の相続財産から差し引ける葬式費用は、葬儀に関連する料理代です。

通夜、告別式では、通夜振る舞いや精進落としなどの料理代が発生することもあるでしょう。そのような料理や飲料を出してもてなすための費用も相続財産から差し引くことができます。

2−3.火葬料、埋葬料、納骨料

3つ目の相続財産から差し引ける葬式費用は、火葬料、埋葬料、納骨料です。

ただし、納骨料については、注意が必要です。納骨の際に生じた費用も相続財産から差し引くことができますが、墓石の開閉など納骨そのものにかかった費用だけが対象となります。それ以外の墓石への彫刻料や、納骨式を執り行うときのお布施や食事代などは相続財産から差し引くことができません。

2−4.遺体の搬送費用

4つ目の相続財産から差し引ける葬式費用は、遺体の搬送費用です。

遺体の搬送自体は葬式の費用だとは言い難いですが、葬式を行うためには必要なことなので相続財産から差し引くことが認められています。

2−5.葬儀場までの交通費

5つ目の相続財産から差し引ける葬式費用は、葬儀場までの交通費です。

葬式が行われるとき、葬儀場まで移動する必要があります。その際の交通費も、相続財産から差し引くことが可能です。

2−6.お布施、読経料、戒名料

6つ目の相続財産から差し引ける葬式費用は、お布施、読経料、戒名料です。

葬式を行う際には、お寺や神社、教会などへお布施、戒名料、読経料などを支払います。そういった費用も、葬式費用に該当するので、相続財産から差し引くことができます。

また、僧侶のような宗教者に渡す交通費や、食事を辞退されたときに渡す御膳料も相続財産から差し引ける葬式費用に含まれます。

2−7.お手伝いさんへのお礼

7つ目の相続財産から差し引ける葬式費用は、お手伝いさんへのお礼の費用です。

極端に高額でなければ、葬式のお手伝いさんへのお礼の費用も相続財産から差し引くことができます。

2−8.運転手さん等への心付け

8つ目の相続財産から差し引ける葬式費用は、運転手さん等への心付けです。

心付けについては決まった金額があるわけではありませんが、お手伝いさんへのお礼のように極端に高額でなければ認められます。心付けとして認められる一般的な相場は、おおむね2,000円〜6,000円程度だといえるでしょう。

1万円以上となると、高額だと判断されるおそれがあります。

2−9.その他通常葬儀に伴う費用

9つ目の相続財産から差し引ける葬式費用は、その他通常葬儀に伴う費用です。

たとえば、参列者にお礼として品物を渡す場合の購入費用(会葬御礼費用)は、相続財産から差し引くことができます。しかし、香典返しの代わりとしてお礼の品物を渡す場合には、お礼の品物が香典返しだと判断されて対象外となります。あくまでも会葬御礼費用を相続財産から差し引くことができるのは、香典返しも渡す場合のみだと覚えておきましょう。

また、葬式の前には故人の死亡診断書の発行も行われます。死亡診断書の発行費用についても、相続財産から差し引くことが可能です。死亡診断書は葬式の前に発行するものなので葬式費用かどうかお悩みになられるかもしれませんが、火葬の許可を取るために必要なものなので認められています。

3.相続財産から差し引くことが出来ない葬式費用

葬式費用として支払ったもののなかでも、相続財産から差し引けない費用も存在します。一部の費用は相続財産から差し引くことができないので、相続税の計算において注意が必要です。

以下の費用は、通常、相続財産から差し引くことはできません。

  • 香典返し
  • 生花、盛籠等(なお、喪主・施主負担分のみ葬式費用として差し引けます)
  • 位牌、仏壇、墓石の購入費用
  • 法事(初七日、四十九日)に関する費用
  • その他通常葬儀に伴わない費用

また、特定の宗教や文化的な儀式に関連する費用は、認められない可能性があります。不安であれば早めに税理士などの専門家に相談しておくのが良いでしょう。それぞれの費用について、順番に見ていきます。

3−1.香典返し

1つ目の相続財産から差し引くことが出来ない葬式費用は、香典返しです。

参列者から受け取る香典には税金がかからないことから、相続財産からも控除できないとされています。

ただし、喪主・施主負担分は葬儀費用としての控除対象になります。それ以外の分については相続財産から差し引くことができないので、注意してください。

3−2.生花、盛籠等

2つ目の相続財産から差し引くことが出来ない葬式費用は、生花、盛籠等です。

葬式の際に生花、盛籠等を購入する場合、相続財産から差し引くことはできないので注意しておきましょう。

3−3.位牌、仏壇、墓石の購入費用

3つ目の相続財産から差し引くことが出来ない葬式費用は、位牌、仏壇、墓石の購入費用です。

墓碑、墓地、位牌、仏壇などは葬式に必要なものではなく、故人を供養するためのものだと考えられています。また、これらの費用は相続税がそもそも非課税です。したがって、相続財産から差し引くことはできません。

3−4.法事(初七日、四十九日)に関する費用

4つ目の相続財産から差し引くことが出来ない葬式費用は、法事(初七日、四十九日)に関する費用です。

法事は葬式とは別の、故人を供養するためのものです。したがって、法事の費用は相続財産から差し引くことはできません。

一方で、繰上げ初七日のように法事を告別式と同日に行う場合に、葬儀会社からの請求書で内訳が分けられていないケースでは相続財産から差し引ける場合があります。気になる方は、専門家に相談してみてください。

3−5.その他通常葬儀に伴わない費用

5つ目の相続財産から差し引くことが出来ない葬式費用は、その他通常葬儀に伴わない費用です。

葬式に際して支払った費用があるとしても、通常は必要のない費用だとみなされた場合には相続財産から差し引くことはできないので気をつけてください。

4.葬式費用を相続財産から差し引くために領収書を保管する

葬式費用を相続財産から差し引くためには、領収書を保管しておくことが大切です。領収書の保管は、税務調査の際に支出を証明する重要な証拠となります。

しかし、どうしても領収書が準備できない場合もあるでしょう。そのような領収書がない場合でも、帳簿や支払いのメモ書き、銀行の出金記録などを保管し、支出を証明する材料として準備しておくことが推奨されます。

また、領収書の他にも、葬儀業者からの明細書や契約書も保管し、必要に応じて提出できるように準備しておくことが重要です。葬式に関する書類や領収書はまとめてわかりやすく保管しておくことで、後悔しにくくなります。

5.葬式費用を相続財産から差し引いて申告する方法

どのような費用が相続財産から差し引くことができるのかがわかったところで、葬式費用を相続財産から差し引いて申告する方法についても見ておきましょう。申告書についてや、添付書類について解説します。

5−1.葬儀費用は申告書第13表「債務及び葬式費用の明細」に記載

葬式費用を相続財産から差し引くには、相続税申告書の第13表「債務及び葬式費用の明細書」の「2 葬式費用の明細」のところに、以下のような事項を記入することが必要です。

  • 支払先の名称・所在地
  • 支払年月日
  • 葬式費用の金額
  • 費用を負担する人の氏名
  • 負担する金額

そして、「3 債務及び葬式費用の合計額」のところに、葬式費用の合計金額と、負担した人ごとの金額を書いてください。金額を間違えないように、身長に書いてください。

5−2.領収書を添付

葬式費用を控除する場合には、相続税申告書に領収書を添付しなければなりません。領収書を添付することにより、費用の正確さを証明することができます。

ただし、費用によっては領収書がないものもあるでしょう。領収書がない場合は、帳簿やメモ書きでも問題ありませんので、添付するようにしてください。

もしも相続税の申告について不安があるようでしたら、専門家にチェックしてもらうこともおすすめです。

6.番外編:受け取った香典は非課税?

高額の香典が贈与税の対象となる可能性があるため、相続人や受贈人は香典の額とその税務処理について注意が必要です。

6−1.相続税

そもそも香典は、相続税の対象となる故人の相続財産にはあたりません。なぜなら、香典を受け取るには遺族だからです。

したがって、相続税は発生しません。

6−2.贈与税(個人から香典を受け取った場合)

故人から香典を受け取った場合の相続税は、通常の範囲であれば非課税財産の扱いです。

贈与税には、財産の性質や贈与の目的などを考慮して、贈与税の対象とならない非課税財産があります。香典については社会通念上相当と認められる範囲であれば、贈与税が発生しない非課税財産となります。

6−3.所得税(法人から香典を受け取った場合)

法人から香典を受け取った場合の所得税についても、通常の範囲であれば非課税所得の扱いとなります。

法人から個人への贈与は一般的には課税対象ですが、香典については非課税となるので覚えておきましょう。

通常、法人から個人への贈与があった場合は、一時所得の課税対象となります。故人もしくは喪主・親族の関係で法人から喪主の方へお香典が出されるのは一般的なことですが、社会通念上相当と認められる金額であれば、所得税法上非課税の扱いになります。

6−4.社会通念上の常識を超える高額の香典を受け取った場合

社会通念上の常識を超える高額の香典を受け取った場合には、課税の対象となる場合があるので注意が必要です。

香典に関連する税務処理は複雑で、専門家でなければ判断が難しいケースもあります。贈与税や所得税などの対象となるかどうかは、具体的な状況によって異なる場合があります。相続税に関連する法律や規定の解釈については、税務専門家に相談することが勧められます。

7.葬式費用で迷ったら専門家に相談を

葬式費用について迷うことがあれば、早めの段階で税理士のような専門家に相談することが大切です。

専門家に相談することで、相続税法の適切な理解と正確な申告を行うサポートを受けることができます。ご自身でいろいろ調べることもできるでしょうが、プロに相談することで安心して手続きを進められるのは大きなメリットです。また、専門家のアドバイスにより、税務リスクを減らし、法令遵守を確実にすることができます。

葬式が発生すると、税金以外にも考えることはいろいろあります。一方で期限のある手続きも少なくないので、不安なことやわからないことは専門家に相談してください。

まとめ

葬式費用は相続財産から差し引けるかどうかについて、解説しました。

葬式費用によっては相続財産から差し引くことができるので、覚えておきましょう。

ただし、差し引くには相続税申告書の既定の場所に記載が必要なので、正しく書くようにしてください。

少しでも不安がある場合には、早めに専門家に相談しましょう。

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